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『2046』 『欲望の翼』と『花様年華』の続編。木村拓哉が好演している。

評価 ☆



あらすじ
“2046”では壮大なネットワークで地球を覆っている・・・。時々、怪しげな列車が“2046”を目指して出発していた。乗客の目的は、無くした自分の記憶をみつけるため。2046では“何も変わらず”残っているからだ。しかし、それが本当かどうかはわからない。



木村拓哉つまりキムタクが出演しているという理由で話題になった『2046』。ウォン・カーウァイ監督の久々の新作ということで期待していました。5年間も撮影し続けていたらしい。すごい粘りである。



『2046』はニーゼロヨンロクと読む。2004年公開の映画で、監督はウォン・カーウァイ。出演は トニー・レオン、木村拓哉、チャン・ツィイー、フェイ・ウォン、コン・リーなどそうそうたるメンバーだ。



ウォン・カーウァイ監督は、この映画を『欲望の翼』『花様年華』の続編的存在に位置づけている。スタイルは1960年代のアジアンテイストで、内容は男女の関係を中心にすすめている。タイトルの『2046』は『花様年華』で登場したホテルのルームナンバーである。



観てみると話にまとまりがないし、商業的要素も感じられない。そのせいで評判は良くない。しかし、個人的に嫌いじゃない。お気に入りの『欲望の翼』と似ているところがいくつかあるし、ルックも悪くない。



SFシーンは感心しないが全体的には60年代風デザインが散りばめられていて、話全体もセクシーだった。『花様年華』の続編という位置づけもよくわかる。



木村拓哉が予想以上に良かった。存在感があった。彼は日本の監督じゃなくてオリヴェイラ監督とかゴダールと組むと面白いのかもしれない。女優陣も美しい。チャン・ツィイーやコン・リーをあんなふうに使えるなんて、本当に贅沢この上ない。



カーウァイ監督は古き良き時代の映画が好きなのだ。美しい女性と影のある男そして屈曲した愛があれば映画は成立すると信じている。そういう考え方は嫌いではない。でも、もうひとつ「何か」がないと映画にならない。



この物語にはカタルシスがない。テーマ性を求めるようなタイプの映画はないけれど、映画が映画になる時には突出しているものがないとね。鈴木清順の映画と比較するとよくわかる。清順の映画には常に「何か」がある。



『ブエノスアイレス』ではジョン・カサヴェデス監督のような即興性が感じられたが、『2046』にはそこまで面白い演出は感じられなかった。そこも良くなかった点なのかもしれない。



『2046』は、カーウァイ監督自身が次のステップに進むために必要な映画だったのでは? 一番この映画を求めていたのは監督であって観客ではなかったのだろう。



フランソワ・トリュフォー監督の言葉にこういうのがある。「観客に見てもらえない映画は映画ではない」と。究極的には『2046』はある意味、映画ではなかったのかもしれない。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-06-24



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