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『忍ぶ川』 三浦哲郎原作の映画化。女優が裸になることにもう価値はないかも。

評価 ☆



あらすじ
1960年代、上野界隈。卒業後も研究のために大学に残る貧乏学生の哲郎は、小料理屋「忍ぶ川」で働くいつも元気な、美人女中の志乃と恋に落ちる。兄弟の不幸を背負う哲郎、病気の父などの苦しい家庭環境の志乃だったが、ふたりは結婚に向けて自分たちの心に正直に進もうとする。



加藤剛と栗原小巻の映画『忍ぶ川』を観た。僕は三浦哲郎の小説が好きだったので期待していたんですが、映画は思っている以上に重かった。熊井啓監督の重々しさは『海と毒薬』で十分だったので、監督の名前を見た時に嫌な予感はしたんだけどね。予感的中。映画は1972年公開。出演は栗原小巻、加藤剛など。



小説の方はさらりとしている。主人公たちを取り巻く暗い状況が、乾いたサバサバしているタッチで描かれていた。そこが好きだった。興味ある人は読んでください。映画でさらっとしているのは栗原小巻演じる志乃とモノクロの東京の風景くらい。



加藤剛の大学生はきついかな。当時すでに30歳を超えていたようで、本人も「自分じゃ、つらいよなぁ」って言いながら演じていたらしい。笑っちゃうけど。



ラスト近く、長い長い栗原小巻のヌードシーンが出てくるが僕は面白くなかった。自分でも年を取ったと思うけど、女性の裸って映画に必要あるんでしょうか? 特にいまはアダルト系の情報、ヌードやそれ以上の動画が、ネットに山のようにある。女優のヌードで売る時代じゃない。女優が脱いだとか、濃厚なエロいシーンなんて、どうでもいいじゃないですか。



公開当初は栗原小巻のヌードが話題になったらしい。そのことを否定しているわけではない。でも、せっかくの面白い話がチープに見えてしまう気がした。もっと抑制を利かせたお話にして欲しかったですね。



ほら、DVDのジャケットもきれいでしょう? でもね、だまされないようにして下さい。かなり内容が重いので。



追記



村上春樹著のベストセラー『ノルウェイの森』は、この三浦哲郎の『忍ぶ川』を参考にしているという。参考といっても内容に関する引用はなくて、「あんな感じのカラッとした小説」という感じだったようだ。確かにね。むしろ『ノルウェイの森』の方がまだ暗い気がするくらいだ。



初出 「西参道シネマブログ」 2007-02-14



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