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『ターミネーター4』 マーカス・ライトは仮面ライダーである。70年代アプローチに救いはあるのか?

評価 ☆☆



あらすじ
2003年、死刑囚であるマーカス・ライトはサイバーダイン社に自分の遺体の献体に協力するサインをして処刑される。2018年、サイバーダイン
社の開発したスカイネットによって世界は核戦争の状態になる。この審判の日から世界は荒廃が続いていた。



『ターミネーター』シリーズをどのように考えるかはさまざまな意見があるだろう。でも『ターミネーター3』が最も酷い出来だという共通認識は一致すると思う(意外にもそうではないという意見もある)。



さらなる続編が公開されると聞いて、正直「まだやるの?」という感じだだった。いまさらターミネーターシリーズに求めるものなど何もない。



ところが『ターミネーター4』は興味深かった。映画は2009年に公開された。監督はマック・G。出演はクリスチャン・ベイル、サム・ワーシントンなど。



ひとつは脚本力。よくもまぁ、あれだけシリーズをズタズタにした『ターミネーター3』の要素をうまく取り入れ、しかもシリーズの疑問だった要素、例えばジョンの顔の傷などをうまく取り入れてまとめたものだ。昔からハリウッドの脚本家ってそういうのがうまい。職人芸です。



もうひとつ。この映画の幹となっているマーカス・ライトという存在はまさに仮面ライダーである。以下はネタバレになるかもしれないので未見のひとは読まないように。



機械と人間の融合という状況下での人間性の確立とは何か? という問題。この脚本家は日本のアニメなどの影響を強く受けているらしい。フィリップ・K・ディックチャイルドと言ってもいいかもしれないし、ブレードランナー的問いでもある。アンドロイドあるいは機械と人間が融合した組織の中で「人間とは何か?」というような。



これらの要素を持ちつつ、物語は『ターミネーター』をなぞるかたちで展開する。ただし、過去のシリーズがターミネーターではなく、サラ・コナーの物語であり、ジェイムズ・キャメロンの女性コンプレックスが大きく表現されているのとは異なっている。そのせいでこれまでとテイストが違う作品となった。



『ターミネーター4』を新しいタイプの映画と定義づけている評もあるが、自分の無能さを露出させることになるので要注意したい。仮面ライダーシリーズを筆頭に、1970年代の日本の作品にはこの問題を扱ったものが多くあるし、平成ライダーシリーズはそれらのテーマをさらに昇華している。



かつての日本の映像文化のレベルは高かったし、今回の『ターミネーター4』はそのリメイクに過ぎない。



でも、それなりに面白かった『ターミネーター4』。興行的にはいま一歩だったらしい。わからなくはない。『ターミネーター』そのものの時代の役割は終わっている。ただマック・Gは『ターミネーター5』『ターミネ-タ-6』まで企画していたらしい。



それにしても色のない映画だ。アメリカの衰退ぶりがよくわかる。これだけは言える。アメリカあるいはハリウッドは極彩色の未来を提示してくれる国ではない。すでに。



初出 「西参道シネマブログ」 2010-06-27



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