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『アメリ』 フランス映画としては久しぶりのヒット作。色彩感覚が独特で、ブラックだけどかわいい。

評価 ☆



あらすじ
アメリは少し変わった若い女性だった。クレーム・ブリュレをスプーンで割ったり、豆袋に手を突っ込んだりするのが好き。でも、誰かとコミュニケーションをするのが苦手なので空想ばかりしていた。幼少期に、学校へ行かず、母から教育を受けて育ったことが原因かもしれなかった。



『アメリ』。2001年のフランス映画。原題は、Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain. 「アメリ・プーランの素晴らしい運命」である。出演はオドレイ・トトゥ。



ずっーと「面白いよ」といわれていて観ることのできなかった。観終わった感想としては「観る必要なかったかも」というのが正直なところだ。こういうのが面白いなんて、本当にわからない。



ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』の引用のようなカットも多い。ジャン=ピエール・ジュネ監督はこんなものなんでしょうか。おこちゃまが出てくるシーンはわりと好きなんだけど。小さな子供の冒険としては、ルイ・マル監督の『地下鉄のザジ』の方が数段よくできていた。



ブリュノ・デルボネルという撮影監督のセンスは非常に面白い。色にこだわりのある撮影監督みたいだ。あの色のトーンの出し方は素晴らしい。もちろん、ジャン=ピエール・ジュネ監督のテイストもあるのだろうが、別の監督でぜひ観たいものだ。



わりと鈴木清順的な色彩に関するこだわりと映像センスを求めているのがジャン=ピエール・ジュネ監督らしい。でも本作は、あまりそのことが前面に出ていない分だけ面白いものに仕上がっている。



結構下ネタが多いというか、セックスネタが多いのも、好きになれない理由である。フランス映画としては久しぶりのヒット作だったらしいけど。セックスネタってどうもダメなんだよね。



主演のオドレイ・トトゥは、どこにでもいるような若い女性をうまく演じていて気持ちよかった。美人すぎないように撮影しているところもいいですね。




年を取ることは人生の新鮮味が減るということでもある。『アメリ』を観てると、つくづくそう思う。例えば、ふう~と感じて水みたいに溶けちゃうシーンなんて、鈴木清順監督が『春婦伝』という映画で40年以上も前に行った手法である。これも、いまさらという感じ。



雛鳥が最初に見たものを母親と思うように、この映画を観て「面白い」と思った人が映画を好きになるのは悪いことではない。でも、もっともっと面白い映画が世界にはいっぱいあります。



追記



この映画には面白いエピソードがある。この作品の前まで、ジャン=ピエール・ジェネ監督というと『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』など、一部の映画ファンが知られていたがほぼ無名。しかも、その内容はグロくてホラーに近いブラックなものが多かった。だから、日本では一般受けしないし、大手の配給会社も手を引こうとしていた。



日本の配給会社であるアルバトロス・フィルムは、そんな状況の中で、彼の次回作をブラックユーモア満載のグロい映画だと思い込み、企画段階で買い付けた。



ところで仕上がってきた映画を観てびっくり。「やばい。面白い」。しかも「これ女性向けだけど、うちはそういうの扱ったことがない」と困惑したという。でも、結果的に日本で大ヒット。アルバトロス・フィルムとしてはまさに大ラッキーとしかいいようのなかったという。わかんないものですね。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-09-05



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