見出し画像

『ゾディアック』 タイトルの意味は12宮図。ネットなき時代だからこそ大量連続殺人は成立したのか?

評価 ☆



あらすじ
1969年カリフォルア州で殺人事件が発生した。1ヶ月後、新聞社に犯人からと思われる手紙が届く。手紙には暗号文が記載されていた。この暗号を解けなければ、さらなる殺人を起こすという内容も添えられている。新聞社は暗号を読み解くために、大々的に新聞に掲載して読者に協力を求めた。ひとりの高校の歴史教師がこの暗号解読に成功する。



『ゾディアック』は2006年に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督作品。出演はジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロなど。僕はこの監督が撮った『セブン』『ファイトクラブ』『ゲーム』は比較的好きだが、『パニックルーム』と『エイリアン3』はさほど好きじゃない。



今回は、実際にあった事件をベースにした連続殺人犯の物語。フィンチャーらしく「連続殺人犯がいかに殺人を犯すか」というよりも、別のアプローチをして映画を作り上げようとしている。ちなみにゾディアックとは12宮図という意味。いわゆる黄道12星座のこと。実際の事件の中で犯人の犯行声明に「俺はゾディアックだ」と書かれていたことに由来するらしい。



映画は、ある連続殺人事件に魅せられた人々を描こうとしている。事件をずっと追っている人たちは、事件が終結しても、執拗以上に追い続ける。この執拗さは『大統領の陰謀』に似ていなくもない。



問題は別のアプローチをしたことで面白くなったかという点。斬新な切り口があれば映画になるというわけでもない。「わかるんだけど。それって面白い? 」という突っ込みを入れたくなる。



なんでそんなに連続殺人事件に思い込みがあるの? という観客の素朴な疑問に対して映画は答えを持っていない。論理的でなくても、なんでもいいから答えが欲しかった(何を言っているかわからないひとは観てください。すぐわかるから)。



いろんな人のネットでの評価をみていると意外と良いので驚いた。「そんなに面白くない」というのが僕の正直な感想である。理解はするけど、感動できない。ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr、アンソニー・エドワーズなどはさすがである。どのキャラも興味深い。でも自分だったらこうなるんじゃないかな、というタイプもいなかった。



興味深かったのは時代を感じさせるやり取りかもしれない。ネットも、携帯電話もない。ファックスすら危うい時代である。連続殺人はそんな頃だからこそできたのかもしれない。そんなことを思ったりもした。だってさ、最近だと10人殺したとか、20人殺害なんてすぐ騒がれるでしょう。その人数で人が死ぬのは暴動か自然災害か戦争以外では考えられない。



殺人が続けて起こればすぐネットで騒ぐし、犯人探しが始まるだろう。犯人だってやりづらくてしょうがない。



今後、フィンチャー監督はどうなってしまうんだろうか。ここ数作が正念場と言ったところなんだろう。多分だけど。



初出 「西参道シネマブログ」 2008-03-10



ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?