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『ガタカ』 『エデンの東』がモチーフか? カインとアベルの未来の物語。

評価 ☆☆☆



あらすじ
近未来、遺伝子の操作で優秀な人間「適正者」を産むことができるようになった。結果、遺伝子操作を受けていない「神の子」は、遺伝子操作を受けた「適正者」より差別的な扱いをされる世界となった。「神の子」であるヴィンセントには「適正者」である弟がいた。



「遺伝子操作によって優良種だけが優遇される社会を舞台にしたSF作品」。1997年公開の『ガタカ』はそんなふうに宣伝されている。監督はアンドリュー・ニコル。出演はイーサン・ホーク、ユマ・サーマンなど。この作品を紹介しているサイトでも同じような説明文が並んでいた。



間違いではないが的確な表現ではない。この映画はSFの範疇に入るのか? むしろ『エデンの東』や『リバー・ランズ・スルー・イット』のような兄弟をモチーフにしたドラマ、『太陽がいっぱい』のようなサスペンスに近い。良質で、好感が持てる作品である。



この作品に描かれているのは劣等感。劣等感をどう扱うかはこれまで映画で多く扱われてきたテーマでもある。「遺伝子の優劣」という設定はそれをデフォルメするためのツールに過ぎない。だからこそSFという枠を超えて多くの観客の心をつかんでいる。



登場する俳優たちも良い演技をしている。特にジュード・ロウが素晴らしい。まるで『太陽がいっぱい』のモーリス・ロネのようだ。イーサン・ホークもユマ・サーマンも良いし、ちょっとした脇役たちも輝いている。



宇宙への憧れの描き方はレイ・ブラッドベリ的である。「ウは宇宙船のウ」という短編に非常によく似ている。情緒的ではあるが、全然メカニカルではない。



かなり前の映画だし、みんなのおすすめ映画になっている。蓮實重彦的に分析すればいっぱいアラがあるんだろうけど、私は比較的好感がもてた。



こういうのを観て「映画ってやっぱり面白いよね」と思ってもらえるといい。ついでにジェームズ・ディーン主演の『エデンの東』も観てください。こっちも涙腺を刺激します。



初出 「西参道シネマブログ」 2015-12-10



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