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『バットマンビギンズ』 『ダークナイト』トリロジー第一作。限られた時間で、複雑な感情を論理的に描くのは至難の業。

評価 ☆☆



あらすじ
大富豪の御曹司であるブルース・ウェインが少年時代の頃、使用人の娘であり、幼馴染みの少女であるレイチェルと遊んでいた。その時、誤って枯れ井戸に落ちてしまう。レイチェルは急いで執事のアルフレッド・ペニーワースを呼びに行く。助けを待つブルースは井戸の中の大量のコウモリに遭遇する。



『ダークナイト』トリロジーの第一作として知られている映画『バットマンビギンズ』。2005年制作。監督はクリストファー・ノーラン。出演はクリスチャン・ベール、ケイティ・ホームズなど。抑制の利いた演出、ミニマル・ミュージックを想起させる音楽、論理性を求めた脚本である。



監督クリストファー・ノーランが作り上げる映像世界は刺激的だ。ハードボイルドでありながらストイック。こういうスタイルを保ちながら、しかも緩急のある作品を作り続けることはかなり難しい。



もちろんクリストファー・ノーラン監督は稀有な才能を持っているが、彼の映画すべてがパーフェクトとは言い難い。個人的に『メメント』が好きではない。忘れるからってカラダに刺青しちゃうんだ。そんな人間メモみたいな発想は好きじゃないです。しかも『バットマンビギンズ』もこれだけ大げさにする必要はないのでは? というところも多い。



それでも個人的にはクリストファー・ノーラン監督は支持している。『ダークナイト』『インセプション』も素晴らしい出来だった。この『バットマンビギンズ』も全体としては悪くない。後半、中途半端な事件展開があるので、そこは気になるけど、しっかりした構成の脚本。少なくとも矛盾を作らないようにしようという姿勢が伝わってくる。



映画に対してどれだけ論理性を求めるか? これは大きな問題。「まぁ、映画だからさ」というひとことは両刃の剣でもある。映画は虚構に遊ぼうとするために論理性を持ち込み、リアリティを追求しないといけないとノーランは考えるし、80年代の日本映画の監督たち論理性をいくつか犠牲にしてまで映像表現を大事にしようとしていた。



人間の複雑な感情を、論理的に限られた時間で描こうとするのは非常に難しい。しかもスタイリッシュに映像化するのは神業に近い。しっかりと作り上げるノーランの手腕は流石としかいいようがない。



それにしてもね。出演している俳優が同じひとが多い。マイケル・ケインとか、渡辺謙とか。まるで『インセプション』を観てるのかと思ってしまったわ。



初出 「西参道シネマブログ」 2012-04-23



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