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『ピースメーカー』 次々と起こる緊迫の画面の中で、ショパンのピアノ曲が清涼剤。ハードでスリリングなミミ・レダー。

評価 ☆☆



あらすじ
ロシアのチェリャビンスクにあるカルタリミサイル基地で核兵器が解体されることになった。核弾頭は列車に乗せられて移送。その列車が何者かに襲撃された。同乗の兵士達が次々と殺される。兵士の中に裏切り者がいたのだった。



1997年公開の『ピースメーカー』は、スピルバーグ、カッツェンバーグ(『ライオンキング』などのプロデューサー)、ゲフィン(音楽プロデューサー)という3人が設立した新メジャー映画スタジオ「ドリームワークス」の記念すべき第1作である。3人ともディズニー関連の作品を手がけているからファンタジックな作品だろうと思っていた。



ところが『ピースメーカー』はハードで、スリリングで、ヘビィな作品。核を扱うテロリストという題材に加え、ストーリーには笑いの要素などカケラもない。



主演はニコール・キッドマン、ジョージ・クルーニー。映画の中でニコリともせずに、眉間にシワを寄せ、困難な局面を打開するために知恵を絞る。刻一刻と悪くなる状況に対処しつつ、核弾頭を奪ったテロリストたちを追い詰めようとする。



タイトル『ピースメーカー』とは平和の使者を意味している。安穏としている平和の使者ではない。アメリカの平和のためならば、内政干渉や武力介入も辞さず、多数の人命を救助するためには多少の犠牲も止むを得ない、という現実的な決断もする人々のこと。使命達成のためには国際問題にまで発展する違法行為の数々が秘密裡に行われていて、まったく「ヤワな奴じゃ平和は守れないぜ」といった感じである。



こういう原稿を昔に書いたことがある。



監督はミミ・レダー。いまやハードな映画を撮らせたらハリウッドのベスト5入る女性監督になってしまった。ミミ・レダーもキャサリン・ビグローも女性ながら硬質である。日本でも高村薫というハードな小説家がいるが、彼女も、こういうテイストの話が得意である。



ハード路線の映画、ドラマは多くなってちょっと嬉しい。誰かを好き、嫌いだのばっかりの映画だった。理詰めのストーリーで行動的な主人公たちが走り回り、グイグイと観客を引っ張っていくタイプがトレンドらしい。ノンストップであればいいってもんじゃないけど。



ただし、一服の清涼剤としてピアノ曲を少女が弾くというシーンがある。少女が弾いている曲はショパンの「夜想曲(ノクターン) 第20番 嬰ハ短調」。物哀しいメロディが緊迫した画面が続く中で印象的でもある。



それにしても緊迫感のある映画だった。気軽に観ようと思うとずーっと画面に引き込まれてしまう。不思議なものである。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-05-14



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