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『十三人の刺客』(1963年版) ラスト近くの30分を超える集団抗争はすごい。『七人の侍』と双璧をなす時代劇の傑作。

評価 ☆☆☆☆



あらすじ
弘化元年(1844年)、筆頭老中である土井大炊頭宅の門前で、明石藩の江戸家老の間宮図書が切腹。遺体のそばに明石藩主・松平斉韶の暴君ぶりを記した直訴状があった。斉韶は気が向けば女なら誰でも犯し、刀を振り回して忠臣を次々と殺す暴君だった。



最近、日本映画でもリメイクが多い。リメイクにはさまざまな意味があるだろう。しかし、オリジナルには基本的に勝てない。例外はいくつかあるにしても、基本的にはそう思う。



だから『十三人の刺客』がリメイクされると聞いて耳を疑った。1963年に製作された工藤栄一監督の『十三人の刺客』は傑作と言って良い出来だからだ。出演は、片岡千恵蔵、里見浩太郎など。モノクロながら、カラーには及ばない迫力である。



地味ではあるが、この映画のラスト30分は本当に迫力がある。光と影の魔術師と呼ばれた工藤栄一監督らしい演出とアクション(というよりも集団抗争)が冴え渡っている作品だ。



これを再び撮影するとは? 理解に苦しむ。『十三人の刺客』の緊迫感は本当に凄まじい。ある意味では『七人の侍』のダイナミズムをも凌駕する緊迫感である。片岡知恵蔵の存在感は凄いし、西村晃の殺陣は鬼気迫るものがあった。戦いのシーンのすさまじさはサム・ペキンパーをも超えてしまうほどである。集団抗争時代劇の傑作だろう。



僕は時代劇を好んで観ているわけではないが、この映画は気に入っている。特に工藤栄一の極端なまでの陰影が、モノクロ画面に非常にマッチしている。物語そのもの、会話のひとつひとつに影と光が醸し出している雰囲気がいい。工藤監督といえば水谷豊主演の『逃れの街』も好きだけど、この映画も本当に良い。



リメイク版はよくわからないけど、これを機に工藤栄一監督の『十三人の刺客』を観るひとが増えればいい。後世に必ず世界で再評価される隠れた日本映画の傑作なのだ。



初出 「西参道シネマブログ」 2010-10-04



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