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『アビエイター』 タイトルの意味は操縦士。マーティン・スコセッシ監督による『市民ケーン』。仕上がりは微妙。

評価 ☆☆



あらすじ
20世紀はじめに、ひとりの少年が生まれる。ハワード・ヒューズ。母親は息子に「感染予防のための隔離」と教える。1920年代に入り、ヒューズは父から受けた莫大な遺産で映画製作を始める。映画『地獄の天使』はトラブル続きで思うような撮影ができなかった。




『アビエイター』。2004年公開。監督はマーティン・スコセッシ、出演はレオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェットなど。世界の富の半分を持つと噂された大富豪ハワード・ヒューズの半生を描いている。



もちろん、スコセッシ監督だからひと筋縄ではいかない。ヒューズは晩年、精神的な障害を患い、孤独な晩年を送ったことでも知られている。なぜ彼が孤独な最後を送るようになったのかの経緯をじっくりと描いている。表面上は「夢に挑戦し続ける男」を出しているけれど、光が眩しいと影も濃いんですね。タイトルの意味も「飛行機の操縦士」のこと。明るいイメージだが、死と隣り合わせという意味にも取れる。



潔癖症だったヒューズのエピソードが克明に描かれているため、映画はダークな部分が強調されることになった。観客の中には「いや~な」気持ちになったひとも多いはず。僕も、あまりの潔癖症描写に「いや~な」気持ちになりました。映画のルックも素晴らしいし、カメラマンも才能を感じさせるのだが、後味が本当に良くない。



全編に流れる音楽は良かった。1900~30年代くらいのスイングジャズ(?)かな。おしゃれで面白い。キャサリン・ヘップバーンや他の女性とのロマンスもあるけれど、こっちのほうは興味を湧かせるものではなかった。男はみんなおっぱいが好き、というのは笑っちゃったんだけどね。



ハワード・ヒューズという人間の破綻性は興味深かった。お金をあれだけ持っていても、結局幸せになれない。どういうことなんだ? お金さえあれば幸せになれるわけではないという、非常に当たり前のことを再度確認させられた。とはいっても、やっぱりお金は大切だけどね。ハワード・ヒューズはお金を役立てることはできなかったのだろうか。



大富豪が求める果てが幼年期の楽しい思い出、という構成はオーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』そっくりだ。スコセッシはこの映画で彼なりの『市民ケーン』を撮りたかったんだろう。でも、その目論見は成功しているとは言えない。残念ながらオーソン・ウェルズの方が数段上手いのだ。



『市民ケーン』と『アビエイター』を比較して観てみる、というような酔狂なことも老後にやってみようかな。



追記



『アビエイター』のプロデューサーにマイケル・マンの名前を発見。製作総指揮には悪名高いハーヴェイ・ワインスタインの名前もある。なんだか奇妙な映画ですね。



初出 「西参道シネマブログ」 2010-01-10



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