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『アルファヴィル』 管理社会を描いたSF映画。さまざまな作品の元ネタとなっている。

評価 ☆



あらすじ
1984年。探偵のレミー・コーションは星雲都市アルファヴィルに潜入する。住民のすべてが記号化、管理され、個人の自由など剥奪されている未来都市。そこでレミーはブラウン教授を救う。



ジャン=リュック・ゴダール監督の映画は、何度も観たいという気が起きない。面白いのはわかっているけれど。評価が低いのも、そのせいです。



『カルメンという名の女』も面白かったし、『プレノンアッシュへの手紙』という短編も好きだ。『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』なんかはやはり強い印象を残す。『女と男のいる舗道』や『軽蔑』も素晴らしい。



『アルファヴィル』は特に僕の心に深く刻まれてる。なぜでしょう。SF作品なのにSFっぽくないからか。車のチェイスシーンなのに、車がずっとバックしているから? アンナ・カリーナがヒロインとしてきれいだから? ナレーションが変だから?わからないけど、記憶にはしっかりと刻まれる。




レオス・カラックス監督の『汚れた血』という映画を観ていても『アルファヴィル』を思い出した。ふたつの映画は「変なSF」「フランス出身の監督」そして「天才を感じさせる映像」だから? いや違う。



『アルファヴィル』は「愛」という概念のない都市におけるSFで、『汚れた血』は愛のないセックスによって感染するという病原菌とワクチンのお話という共通点があるからだろう。モチーフが似ている。テーマになっているのは「ひとは失ってからはじめてそのものの大切さを知る」ってこと。なんかカツラのCMみたいだが。



そのような「失ってしまったことで、初めて気づかされた愛」ってなかな寂しいものだ。愛は深い。深くて全然説明できない。説明できないからゴダールやカラックスは映画を作るのかもしれない。結構、ゴダールってセンチメンタルなひとなのだろう。



この映画で描かれている都市は、まさにAIに管理された管理社会である。その意味では全体主義的で、『1984』に通じるものもある。成長するコンピュータと人間という意味では『2001年宇宙の旅』のHALの元ネタとしても知られている。つまりいろんな映画の元ネタになっているということだ。



余談だけど、『アルファヴィル』は村上春樹の小説「アフターダーク」でラブホテルの名前として出ている。アルファヴィルってラブホとして悪くないネーミング。ちなみに村上春樹が他の本で紹介していたラブホテルの名前で「紫陽花」というのがあった。これ、あじさいと読まない。しようか、って読むのだそうだ。なんだそりゃ。



初出 「西参道シネマブログ」 2004-12-21



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