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『ミツバチのささやき』 アナ・トレントの存在感が印象的。静かで、残酷で、美しい傑作。

評価 ☆☆☆☆



あらすじ
1940年頃、スペインのオユエロス村。幼い少女アナと姉のイザベルは養蜂場を営む父フェルナンドと母テレサと暮らしている。今日は村の公民館に巡回映画がやってくる日。大人も子供も椅子を持参して集まる。上映されるのは『フランケンシュタイン』。アナとイザベルもスクリーンを見つめる。



最近テレビがうるさくて仕方ないように思えてきた。年を取ったからなのかもしれない。テレビドラマもうるさいものが多い。テレビを多く手がけている人たちが製作する映画も同じ。本当にうるさい。くどすぎるカット、大きすぎる音と声はうんざりである。



1973年公開の『ミツバチのささやき』は100分ながら濃厚さを感じることのできる静かな映画である。こういう作品を観ていると、自分たちの世界の騒々しさ、異様さがさらに際立つように思える。この映画のクオリティは素晴らしく高く、脚本もよく出来ている。



監督はビクトル・エリセ。主演はアナ・トレント。可愛いですよね。この映画は少女が巡回映画で観た「フランケンシュタイン」がモチーフになっている。フランケンシュタインに憧れる少女という題材もいい。



この作品の面白さをここで説明しなくてもいいでしょう。知り合いの教師がいってたように「最近の子供は『勉強の仕方がわからない』っていうけれど、勉強なんてやりゃいいんだ。本読んで書いて覚えて、問題を解いてればいいんだ」。まったく同じである。とにかく観よう。



ところで、蜂蜜は美味しくて環境にやさしいと思いませんか? 「年取ったら養蜂したいんだけど」とうちの奥さんに相談したら「絶対やだ」と言われた。理由は「刺されたらやだから」だそうだ。まぁね。わからないでもない。『ミツバチのささやき』にも養蜂の話が出てきます。



静かで、残酷で、美しい映画です。



追記



ビクトル・エリセ監督の初作品。こんな映画を最初に作り上げてしまうと、どうなるのだろうか? と調べてみた。長編は『ミツバチのささやき』『エル・スール』『マルメロの陽光』の3本。短編としてオムニバスの『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』を撮影。あといくつかの短編も。『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』は、アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラなどが監督している。どれも面白かった。



初出 「西参道シネマブログ」 2006-01-04



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