『007/慰めの報酬』 イタリアで展開されるタフなアクション。女々しい性格のボンドも悪くない。
評価 ☆☆
あらすじ
イタリア、シエナ。ジェームズ・ボンドの運転するアストン・マーチンは、アルファロメオに追われていた。マシンガンで攻撃され、地元警察のパトカーも加わるカーチェイスとなる。この戦いを振り切ったボンドは、MI6の隠れ家に到着。後部トランクを開けるとミスター・ホワイトが入れられていた。
ポール・グリーングラス監督の『ボーン・スプレマシー』は、アクションというジャンルにおいてマイルストーン的な作品だった。彼の影響は絶大である。以降の作品で「アクションとはどのようなものか?」を問われることがある。もっと平たく言えば「それ。『ボーン・スプレマシー』より面白いの?」ってことです。
カビの生えていたと言っても過言ではない007シリーズも再生を果たす。アクションの再構築によって『007/カジノロワイヤル』という傑作を生み出した。ジェームズ・ボンドはかっこいいではなく、タフである。ダニエル・クレイグの演じるボンドはどう考えてもスタイリッシュではないけれど、シュワルツェネッガー的なタフさがにじみ出ている。
『007/慰めの報酬』は『007/カジノロワイヤル』の続編というかたちで作られている。公開は2009年。監督はマーク・フォースター。出演はダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコなど。
しかし、そのテイストは異なる。今回の監督であるマーク・フォスターは明らかにグリーングラスを意識しているし、その影響を大きく受けている。呪縛と言っていいかもしれない。グリーングラスのオリジナルには到底勝てないけれど、同じような匂いがする。
前作のマーティン・キャンベル監督の方がグリーングラス監督に対する影響は少なかったように思う。今回は、ボーンシリーズを強く意識したようなカットが非常に多い、前半は非常にテンポも良い。しかし、後半になると一転して、どんどん悪くなる。
脚本にポール・ハギスの名前が登場していた。『クラッシュ』『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本で社会派として知られている。彼が007シリーズに必要な名前なのかどうかもわからないけど。
前半が面白かっただけに後半のつまらなさが目立つ。もちろん、水準以上の出来になっているし、新生ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイブの魅力を決定づけた作品でもある。
それにしても、タフなアクションと女々しい性格のボンドがここまで成立できるとは、ちょっと驚き。007も昔と違うんですね。
初出 「西参道シネマブログ」 2010-08-13
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