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『市民ケーン』 モデルとなった新聞王から干されたオーソン・ウェルズ。金持ちの嫉妬は怖い。

評価 ☆☆



あらすじ
アメリカのフロリダにある“ザナドゥ”と呼ばれる世界最大級の個人邸宅があった。1941年。そこに住んでいた元新聞王チャールス・F・ケーンが病床で息絶えた。彼は死の直前、「バラの蕾」と謎の言葉をつぶやいた。孤独な死だった。



世の中には一見しただけでは、誰が監督したのか、誰が撮影したのか、誰が脚本を書いたのかわからない映画がいっぱいある。そんな中、強烈なオリジナリティを誇っているのが『市民ケーン』。1941年に公開されたオーソン・ウェルズの初監督作。出演はオーソン・ウェルズ、ジョゼフ・コットン、ドロシー・カミンゴアなど。



映画はある老人の死から始まる。謎の言葉“ローズバッド(ばらのつぼみ)”をめぐり、彼の一生が回顧される。ニュース映像を織り交ぜて、パンフォーカスを前面に出した映像構成で綴られるひとりの男の半生は、新聞王となったケーンの実像を描いていく。



多くのオリジナル溢れる映画がそうであるように、つまらないと思った観客にはこれほどつまらない映画はない。それでも、一度は観ておくべき映画だろう。アメリカでは大絶賛されているけれど、期待していると意外と調子はずれになるかもしれない。ただし、かなり興味深い。



『市民ケーン』を作り上げたオーソン・ウェルズは、25歳でこの映画を作り、ハリウッドの寵児となった。俳優として『第三の男』などに出演、リタ・ヘイワーズと結婚した。他にもいっぱいいろんな映画を作り上げているが、この映画以上の評価はなかった。まぁ、リタ・ヘイワーズと結婚できただけでもすごい。



オーソン・ウェルズは『市民ケーン』を越える評価を得られなかった。天才ともてはやされた彼の才能は年を追うごとに枯渇した、とも言われている。また、この映画はアメリカの新聞王だったウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしていることから、ハーストが激怒し、オーソン・ウェルズを干したことが原因とも言われている。かなり妨害工作があったのは事実らしい。金持ちの嫉妬ほど怖いものはない。



また、この映画をフランスの哲学者であるサルトルが批判したのも有名だ。しかし、サルトルって本当に映画の本質がわかってない。結果的にその後、『市民ケーン』は世界中の映画ファンから評価された。



ところで『市民ケーン』にはスノードームと呼ばれる置物が効果的に登場する。あれってかわいいんだけど、部屋のどこに置けばいいかと考えてると買うのを迷ってしまう。結局買わないままである。



初出 「西参道シネマブログ」 2006-01-06



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