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『突然炎のごとく』 映画史の中で記念碑的存在。三角関係はドラマ構造上安定しているようだ。

評価 ☆



あらすじ
1912年、オーストリア出身の青年ジュールは、フランス人の同世代のジムと知り合った。お互いの言語を教え合いながら、友情を育んでいった。ただ、女性から人気の高いジムに対して、ジュールは女性から人気がない。恋人相手もなかなか見つからなかった。



先に言っておくと、モノクロで綴られた『突然炎のごとく』は単なる三角関係を題材にした恋愛映画ではない。1962年公開された、フランソワ・トリュフォー監督の長編三作目で、出演はジャンヌ・モロー、 オスカー・ウェルナー、アンリ・セールなどだ。



当時、ジャンヌ・モローは、この映画によって世界の女性たちから、特にフェミニズムを支持するひとたちから称賛された。女性の人権あるいは生き方を喚起した、映画史的に重要な位置にある映画である。



この映画に限らないのだが、いろんな映画を観続けていると、Aという映画の画面はBという映画を参考にし、Bの画面はさらにCという映画のワンシーンをモチーフにしているというふうに、どんどん過去にさかのぼることができる。しかし、この過去への旅にはどこでピリオドをつけるかが難しい。



時々、逆になったりもする。タルコフスキーが黒澤明を参考にし、黒澤明がジョン=フォードの映画を参考にしたからといって、タルコフスキーがジョン=フォードを参考にしたことにはならない。しかも、黒澤明はタルコフスキーのある場面を参考にして撮影したという逸話もある。



今回の映画『突然炎のごとく』は、『勝手にしやがれ』のゴダールと共にヌーヴェルバーグを代表する監督フランソワ・トリュフォーの代表作である。彼の特徴はドキュメンタリーのようにリアルでみずみずしい映像にある。『突然炎のごとく』は彼の初期の集大成と呼ばれている。



ふたりの男性ジュールとジムが憧れるカトリーヌという女性だ。このジャンヌ・モロー演じるカトリーヌが可愛くて美しい。3人の明るい関係も切ない。



男2対女1という図式は、映画の代名詞みたいにも上げられる。発端はこの『突然炎のごとく』にあるともいわれている。本当かどうかはわからないけれど。そのくらい、ここに描かれるジャンヌ・モローという女性は魅力的なのだ。それにしても、自由奔放な女の子の言動に振り回される男たちは、いつの時代でもいる。現実には、翻弄されるのが男ふたりじゃなくて、何人もいたりもするけどね。経験談として。



逆に言うと、男2対女1という関係性は、映画の中でわりと安定しているらしい。そういえば、藤田敏八監督が描く映画には必ずといっていいほど、自由奔放な女性、その女性に恋をする若い男性、その女性が好きな中年男性という3人が登場する。『バージンブルース』もそうだ。同じような映画は多い。



たとえが古すぎてわからない? 映画『冒険者たち』でいえば、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチェラ、ジョアンナ・シムカスを巡る二人の関係は今でも面白い。それでも分からない?



三角関係は、夏目漱石の『それから』とか『こころ』が参考になるんじゃないかな。本は読まない? 困った。



いずれにしても、フランソワ・トリュフォーの映画は、この映画を含めていろいろ観てほしい。意外と面白いですよ。



初出 「西参道シネマブログ」 2006-03-10



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