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『ウォール街』 GREED IS GOOD.は名言に。金融市場という名の戦場での理性とは?

評価 ☆☆



あらすじ
1980年代、パド・フォックスという若者がニューヨークの証券会社で株のトレーダーをしていた。彼の夢は天才的投資家として知られるゴードン・ゲッコーのようになりたいというもの。バドは数ヶ月かけてやっとゴードンとの面会の予約の取れるが交渉がうまくいかない。



『ウォール・ストリート』という映画をコマーシャルで知って愕然としている。1987年公開の『ウォール街』の続編のようだ。監督は同じオリバー・ストーン。『ウォール街』はチャーリー・シーン、マイケル・ダグラスらが出演している。



『ウォール・ストリート』には前回同様マイケル・ダグラスが登場する。正確に言うならば『ウォール街』での主役はチャーリー・シーン演じる若き投資家であり、マイケル・ダグラス演じるゲッコーはサブとして登場するカリスマ的バイヤーだった。



僕が前作で興味を持ったのは、戦争は別に戦場だけではなく、市場でも行われているのだ、というオリバー・ストーンの考えが興味深かったからだ。僕も若かった。インサイダー取引が何なのかもわからなかったままに、マーケットの面白さに興味を抱いた。



いずれにしても、戦争のスリリングさ、さきな臭さ、人間性の欠如は、一見平和な世界の根底にある金融市場で再現されているのでは? というオリバー・ストーンの主張に強い関心を持った。



この映画は、若い人たちの希望と挫折、悪への誘いと良心というテーマを併せ持っている。オリバー・ストーンという監督がさほど好きではないのは、この日本の私小説に近い匂いによるものだ。



僕としてはもっと洗練されたリアリティの方が好きだ。しかし、彼の表現する現実さの持つ重みは無視できない。その意味で『ウォール街』は面白く観ることができた。



最近、柄谷行人の『世界史の構造』を読んで「資本主義社会の検証を行わないといけないな」と思っていたところだ。金融市場のデイトレードで得た資本主義の神はいったい何を得たのか? 金によってすべてが買える世界が善だとしたら、なぜ、アメリカはこれほどまでに世界から非難を浴びているのか?



資本主義社会は社会主義社会のことを笑えるのか? 資本主義的な政策を行った竹中=小泉政権を我々は手放しで評価できないのか? マーケット至上主義を象徴しているのが『ウォール街』であるとしたら、いま、続編が制作されたことは非常に意味のあることかもしれない。再び、マーケットが戦場として世界を巻き込むのだろうか。つまり、嵐の時代が再び始まるのだろうか?



真剣に考えるべき時期に来てるのだろう。



追記



時は経ち、中国は社会主義にも関わらず、マーケットを取り込み、次第に力をつけてきた。経済戦争は拡大の一途をたどっている。Greed is good. つまり「強欲は良いことである」というゲッコーのセリフは、すでに名言となっている。欲望こそがこの世界の動かす原動力である。確かに一理ある。だが本当にそれだけなのか?



初出 「西参道シネマブログ」 2010-02-02



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