理系の学習法②:なぜ数学が苦手か、徹底的に分析する

本記事は、「受験勉強のルートについて軽くメモ④」の予定でしたが、あまりに膨大になってしまったために単独記事にしました。

お世話になります。ドリームラーナーズの石原です。鳥取県倉吉市で進路指導と学習法指導の塾を運営しています。学習指導は中学生・高校生・大人、英語の指導は小学生から対応しています。LINEなどを活用して、遠隔地でも進路指導・学習指導に対応しています。

理系にいくなら必要な数学の勉強法の話をします。理系の学習法と言いつつ、実はどの科目にも共通する要素がふんだんに含まれていますので、文系の人でも数学苦手ならそれをきっかけに読んで欲しいと思います。以下は過去記事です。

注)本記事では、学習障害(LD)や識字障害(ディスレクシア)の方も想定していませんのでご了承ください。やるべきこと、達成すべきことは同じで、勉強するツールの違いにすぎないのかもしれませんが、それを紹介するのは私の得意分野ではありません。

数学は、できないパターンが典型的すぎる科目

できない人のほとんどは、数学を、単なる計算や記号のパターン暗記だと思っているんです(大雑把な結論)けど、ある程度はそうです。確かに、数字や文字や記号を使って説明するので、どのようにそれぞれの記号が使われているのかは覚えなければいけませんし、数字や文字や記号による説明を(模範答案などを通して)理解しなくてはいけません

しかし、苦手な人のほぼ全ては、説明を理解しようとしていません。もうちょっと掘り下げて指摘すると、以下の点に集約できます。

一つ一つの記号が「何を」表しているのかがわからないし、書いてあるのにそれを読もうとしないし覚えようとしない。記号や式っぽいものを発見して字面だけ覚えるのが数学の勉強と勘違いしている。
したがって、公式なり、教科書の説明なり、答案見本(解答例)の意味がわからない。あるいは計算式の見た目だけを追っかけながら、確かにそのような計算になるが、どうしてこのような計算になるのかわからない。このため中学レベルの問題でも、問題文に対して何をどのように適用するのか説明できない、解けない。
それらがわからないまま、3年間が過ぎて、共通テストで平均が30点行かないような集団になる(地方公立高校、超進学校でもない限りこうじゃないですか?)。要するに自分ができるようにしなければいけないことについて、一切の理解や説明を放棄してまる覚えしようとする。
概念理解が不十分でも、訳がわからないなりに計算が少しでもできればいいのだが、計算練習もしておらず、ただただわからないとぼやくだけで終わる。だからいつまでも、問題が解けるのが楽しい、という算数数学にありがちな達成感も得られない。計算遅すぎ負のスパイラルの発生。

スライド42

これって英語で言う、単語や英文法がわからないのと構造的には同じです。向こうは何かしら意味のある言葉だと単純に認識してしまうので、読んだ気分になってしまうのでしょうが数学はそうはいかないようです。

どうも数とか記号そのものに(不勉強ゆえに)意味を感じないと、クソどうでもいい掛け算順序議論とかのように、無意味であっても物語性を付与したほうがわかりやすくなると盲信してしまいたくなるぐらい、人間というのは意味のない、ストーリー性のないものが嫌い・苦手なようです

私の認識では、数学を学習する目的は、英語や国語と扱う道具が違うだけで、そこに書かれた論理展開を把握し、また自分も同じ道具を使って論理展開を書けるようにしていくことです。英語と国語と同じでしょ。

ですから、一つ一つの記号や公式が「何を」意味しているのか、1つ1つ丁寧に理解していかなくてはいけないのです。記号や数字をいじくり回せば済むような話ではありませんね?

ここで私が「何を」と言った場合に、おそらく皆さんは「何か具体的な物」を想像するのでしょうが、大学受験までの数学に置いて、数学の文字や記号や公式が、具体物と結びついていることはほぼありません。ここでもやはり具体的なイメージやストーリー・物語がないことが理解を妨げる要因になっているようです。

スライド43

確かに、応用先としてはもちろん現実的な具体物はたくさんありますが、高校レベルではほとんどそんなものには行き着きません。そこが見えるまで勉強したいのなら、大学に行ったり、高校のうちから自ら求めて高度な内容を追求していくしかありません。

高校レベルでも、データの分析が現実の解析に一番使いますかね。分析を少し勉強すれば最小二乗法など基本的な関数の話も持って来れます。

文字や記号やそれらを組み合わせた項や式と言うのは、それぞれに意味があり、単に外面字面だけを覚えたところで、意味がわかっていなければ数学の問題は解けませんし、数学の教科書の説明すらまともに理解していないでしょう。いつも新鮮な気持ちで教科書を読めると言うのは羨ましい限りです。

ただそれが逆に、数学って何をどうすればできるようになるのか?

【誰でも考えつく答え】

①基本的な算数(小学レベル)、計算・代数・幾何的発想(中学レベルまで)を丁寧に復習して、記号や幾何的意味を暗記(問題を見て反応できればOK)する。

②高校レベルで問われる公式などの分野ごとの説明について、用語1つ1つを丁寧に理解しながら、教科書の例題・練習問題レベルを(自力で、問題文だけから)解いて練習していく。

③入試で問われる問題を解けるようにしていく

がわかりづらくなる原因でもあります。とりあえず問題解いておけばいいだろ的な短絡的な結論に飛び付きがちですし、学校の課題を見るとそういうメッセージが暗に含まれているのではないか、と思ってしまうほど、ただただ大量に課されがちです。慣れるのに量が必要なことはわかっていますが、繰り返しになってない(あるいは生徒がそう自覚していない)時点で解法を丁寧に理解させる気がないな、となってしまいます。

しかし、社会や理科も含めて、どんな科目でも同じです。まずは使われている道具(計算とか公式)や用語(論理を説明するための言葉・記号)についてよく知りましょう。

数学苦手な人、毎日の計算からやり直そう

数学苦手なやつ、計算遅すぎるので計算ドリルからはじめてください。これは慣れるまでで良いです。大体毎日やれば2〜3週間ぐらいで十分でしょう。

特に、数学苦手な人が苦手とする計算が、分数とか小数の計算です。2〜3ケタ以上になってくると途端に遅くなります。小4レベルのドリルを一通りやるのがよく、中学受験の問題集だと、実は高校レベルでも使うような計算を練習していたりするので得です(しつこいようですが地方公立高校の生徒を想定しています)。

中学受験用のおすすめは以下のドリルです。

苦手なやつそもそも数学に全然時間かけてないか、頭使ってないのどちらかまたは両方

そして、数学苦手な人のほとんどは、

①そもそも数学に時間をかけてない
→いや学校の課題はいっぱいやってるんですけど!みたいなウンコ反論はいらないです。その課題は君ができないところから振り返れるレベル・範囲なんですかね?目的に叶わない勉強してて伸びるはずがないですよ。

この「目的に叶わない勉強」は、勉強が苦手な人ほど何も考えずに取り組んでいます。目的に叶わない勉強を、どのように目的に叶う勉強にしていくか、という話はいずれやりたいと思います。

②数学=計算と思っていて、意味を考えてない
→計算の形ばかり覚えてしまって、どうしてそうなるのかを考えない。
→特徴として、記述答案でも答案に日本語が極端に少なく、式で終わらせようとする短絡さが観測される。

これのより短絡的なものとして「計算のやり方」を覚えない、というレベルも存在しますね。例えば小学レベルの分数の加減乗除とか面積体積計算で顕著です。

③公式や解法はある程度覚えてはいるが、初見の問題で運用できない
→試行錯誤の練習不足、書いて間違うのを極度に恐れている、など

これには、答えは同じでも全く異なる段階があり、そこそこできる人の場合

問題文で要求されていることがわからない(解説を見れば何をやっていいかわかるし、答案で必要になる考え方自体は元々知っていた、わかっていた)

です。この場合は、単に勉強時間が少ないということはなく、おそらく演習時の頭の働かせ方だったり、復習の仕方に問題があることが多いです。

しかし、そもそも全然勉強してない人は

解説を見ても何をやっているのかさっぱりわからない

です。こっち側になってしまうほとんどの場合、理解して暗記しなければいけないことを全く覚えていないことが原因です。なぜ覚えておかずに問題が解けると錯覚しているのだ? 甘えるな、という話になります。

注)そもそも問題を解く、という行為についてほとんど関心がない、という場合もあります。この場合は、勉強ができるようになりたい!という気持ちすら湧かないと思いますので、本記事では想定しません。

まとめると、数学が苦手だ、という人は、このどれかあるいは複数に該当しています。それぞれのカバーしている分野が違いますので複数個当てはまる人もいると思います。

①そもそも数学に時間をかけてない
②数学=計算と思っていて、意味を考えてない
③公式や解法はある程度覚えてはいるが、初見の問題で運用できない

なので、まずは、数学にかける時間を増やして、1つ1つの言葉の意味、公式の意味を丁寧に復習することから始めていくのが第一歩です。いきなり問題を解くんじゃありません。理解できているか確かめるために解くのです。みなさん順序が逆ですよ。

苦手=点数が取れない、という場合の対応

試験で点数が取れない、と言う部分ではもう一個別の視点が必要です。これについては、「実際に試験本番で解くことを想定してない」ことが全ての元凶であり、それが数学ではこのような形で現れる、と言うだけなのですが、みなさん一度やってできただけで終わりにしてるから、試験中できないだけです。

こちら側の原因は、心構えというよりも、やり方の問題がほとんどなので「技術編」としてこれまでの議論とは区別します。

スライド43

でも、素早くできるようになるまでやるとか、面倒だから、できないのがしんどいから、やりたくないでしょう。ただ、できるようになりたかったら、しんどい思いをするしかないです。今の自分のレベルで、自分の行きたい大学や高校が受け入れてくれると思いますか? そんなことはありませんよ。

数学苦手なやつほど、クソ真面目(皮肉)に答案書きすぎ

最初にお断りですが、答案書くことについては必ずやって欲しいです。答案を書かずに読み込めばいいんだ!みたいなのは要りません。必ず自力で書けるようにしてください。

特に、勉強の初期段階と、入試問題を解く段階では必ず書いてください。なぜなら、最初に書いたように、

数学を学習する目的は、英語や国語と扱う道具が違うだけで、そこに書かれた論理展開を把握し、また自分も同じ道具を使って論理展開を書けるようにしていくことです。

だからです。ほとんどの高校生、数学は問題が解ければいいじゃん!と思うと思うんですよ、でもこの記事を頼りにしてきた人は、問題を解くことすらできないのはどうしてかな?と考えてみてくださいよ。自分が扱ってる道具の意味目的すら理解してないから解けないんじゃないですか?

小論文と同じぐらい、何をどう説明したら理解してもらえるか、伝わるか、文字や記号の意味定義を明らかにしながら、丁寧に答案を書いてください。

ただし、特にやりがちなのが「何も考えずに丸写し」です。それはほとんど意味がないです。

間違えた!と思って、赤ペンを持って作業だ!となる前に、

どうしてそのように解けるのか、まず1行1行理屈をつけて読解してください。1行ずつ書きながら、どうしてそのように書けるのか、理解できないなら一旦立ち止まって考えて、理解してから進んでください。

解法は理解して暗記するべし

解法暗記、という言葉があります。私も基本的には解法暗記を推奨しています。ただ、解法をただ丸呑みするだけのことは解法暗記とは言いません。自分で、なぜ、問題文の要求に対して、そのように答案が書けるのかを理解した上で、書き方まで含めて暗記することが解法暗記です。

「解法暗記」言葉から受ける印象がよくないので別の言葉が欲しいです…。

スライド19

こうした意味での解法暗記は、私も実際にやっています。結果として答案まる覚えになることはほぼなく、自分の言葉で説明の手順を言い換えられています。こうしないと、一問をやったところで、その問題をやって身につけて欲しいことの半分も身につかないんですよ。

私、群論とか苦手で、この人生で何度も、群論の基礎の本とかを読んでいるのですが、数学の説明って、日常言語とは大きく違うので、どこからどこまでが説明対象で、述語部分もどこが区切りなのかが見づらいです。なので私は、マーカーで色分けしながら、主語述語及びそれらの切れ目が明らかになるように読んでいるんですよね…。その辺りもどこかでお話しできればと思います。

基本的な問題(簡単な問題、と言う意味ではなく、典型的な問題)に対して答案をかけるぐらい理解し、自分の頭から素早く出せるようになっていないと、緊張する試験中にできるわけがない、と言うのは当たり前ですよね。

アウトプットの場面に応じて、解答の書き方は変えるべし

ではなぜ、「まじめに答案書きすぎ」なんて言うのか。

それは、ほとんどの数学が苦手と自称する生徒は

①「公式・定理」
②「論理を示すのに必要な計算過程や図表」
③「言葉での説明」
を、
「覚えておかなくてはいけないこと」
「実際には省略できる、したほうが良いこと」
「答えを出せば良いだけの場合には考えなくてもいいこと」
など、「アウトプット形式の違いで求められることの差」を考えずに、答案見本とそっくりそのまま書こうとしている
からです。

記述ではこれぐらい書かなきゃいけないけど、マークだと誌面の都合もあるからこれぐらいで納めておかないと時間的にも足りなくなる、といった、アウトプット形式による答案の書き分けも必要でしょうが、数学で点数の取れない人は、何も考えずにどちらの場合も同じように答案を作っていきます。

スライド45

マーク形式の問題を解くのに、わざわざ全部丁寧に記述答案じみた解答をノートにやってる人、地方進学校の文系にめちゃくちゃ多いですね。マークの問題でそれをやるのは本当に非効率ですよ!

できる人はそこを乗り越えます。

①問題文から手がかりを探すという行為
②手がかりを見つけた後どのように記述するのか計算するのか

という部分を切り分けています。大半の人は、②しかやってませんし、説明した通り、記述解答向けの練習しかしてません。何も訓練せずにこれがやれてしまう人がいますが、これはスキルなので訓練すれば誰でもできるようになります。

スライド42

具体的な練習方法。一周終わった問題集で、①を練習してみましょう。答案をまる覚えして一問一答のように暗記してしまうだけでは、①はできません。

どのように記述・解答するのかは理解している問題の「問題文だけ」から、どうしてその発想が出てくるのか、また、計算を進めていって、ワンステップ必要な部分をどう乗り越えるのか、問題文だけから、どこまで見抜けるのか、見抜いた上で、さらに壁があるのかどうか、そうした「思考」の練習をしましょう。

実際、やって見ればわかりますよ。君たちのほとんどは、「同じ問題」をもう一度解くことすらできないのです。昨日答案を書き写しただけの問題が、今日の試験本番で書けるようになっている保証なんかどこにもないんです。

解法を丁寧に理解して暗記する、それを問題文から見つけ出した手がかりを元に作成する、2段階に分けた練習をしましょう。

字面通りの解法暗記では個人の認知能力による限界が訪れる

もう少しレベルが高い人を想定してお話ししましょう。問題集だと解けるのに、本番だとできない、という自分の実力の発揮されなさを嘆く人です。

問題集だと解けるしわかるのに、模試で取れない。あるいは大問の(3)が毎回手を出せない。考察してすらない、というか試験中に考察するのをどのようにやるのかわからない。つまり自分の頭で考えられない、人工無能状態になってしまう。

こうした、少し優秀な自覚のある無能は、ただただ、何の理屈も伴わずに、答案を覚えているだけの人に多いです。進学校にかなり多いです。偏差値はそこそこ出てしまうものの、トップクラスになれないという生徒は大半がこの枠に入ってしまっています。

毎回問題文を読んでそれに対応した解き方をしなくてはいけないのに、なぜか自分の知っていること覚えていることだけは解ける。いやそう言うレベルでも合格する大学は中堅レベルでもゴロゴロあるのでそこまで到達しただけでも大したものですが。

これについては、地方公立高校で特に超進学校の場合、数学の定期試験が青チャートやフォーカスゴールドから入試問題レベルのがズラっと並べられるような、数学大好きな先生が作る雑なテストです。そう言うところだと、数学が多少苦手でもこの解答暗記で何とかなってしまったりします。解法暗記がある程度できるからです。

ただ最難関を目指そうとするとこんな雑な覚え方では太刀打ちできませんし、入試本番において、数学でリードする、と言うことは無理でしょう。

もちろん、超進学校ですから、数学がそこそこできていれば、他の科目で稼ぐ、という手段が取れるだけ、そうした状況の人はマシだと言えますが、理系で数学重点の生徒がその有様だと悲惨です。

そして、そこまでの進学校ではない場合は、他の科目もあまり強いとは言えないことが多く、特に理系や、文系でも3科目必須の上位大学を目指す場合には頭を抱えてしまいます。

こうした状況でも、志望大学のレベルに応じた最終段階の問題で、上で述べたような「手がかりを探す練習」を中心に据えると、おそらく時間はかかると思いますが、3ヶ月程度でずいぶんアプローチの仕方が変わってくると思います。自分一人で不安な中で点数を取っていくためには、勘と経験だけではなく、根拠探しの技術が必要です。練習しましょう。

本記事のまとめ

①数学が不得意なことには様々な要因がある

言葉・用語の意味がわからないので公式のまる覚えで乗り切ろうとしてきた
中学レベルの問題での適用練習不足
説明を理解しようとしてない
計算練習不足

②数学の問題が解けない(得点力)がないことは、問題文の読解練習不足

①問題文から手がかりを探すという行為
②手がかりを見つけた後どのように記述するのか計算するのか
大半の人は②(解法暗記らしきこと)しかやっていない。どちらもやろう。

まとめてしまうとたったこれだけのことを説明するために、7000文字程度を執筆しました。読んでいただきありがとうございました。


サポートをいただいたら、大学受験用の参考書・問題集の購入に使います。解説してほしい問題などありましたらリクエストしてください。