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024_ひとり海外旅行 グㇺのトイレ お金を払って用を足す
会社のトイレでまさか泣くなんて、思ってもみなかった。学校のトイレですら、排便排尿でしか利用していなかったのに。
パワハラ上司にプレゼン資料をパワーポイントで提出したとき、
「このグラフ分かりづらい」
とケチをつけられ、突っぱねられた。
しかしそのグラフはパワハラ上司(以下パワ上)自ら修正をしたものだ。
弊社のパワ上はキーボードを5本の指で打てない。両手の人さし指で、しかもかな入力で打っているのだ。
私はパワ上のキーボード打ちが珍しく、隣りに椅子を持ってきて、ニコニコしながら眺めていた。
これで5回目だぁ。
パワ上は修正というケチをつけては自分で修正をし、いったん私に返信する。しかし、そのデータをどうすればいいのか途方に暮れ、とくになにも変更していないプレゼン資料データをパワ上に返信し返す。この繰り返しだった。我ながら、意味が分からない。
やっとパワ上の修正が終わり、これで帰れると安堵したのもつかの間、パワ上は自分が修正をいれたデータを保存せず、ファイルを閉じてしまったのだ。
私は目を疑った。
パワ上はわざわざ社用メールに、変更されていないファイルを添付し、私宛にメールを送った。
これをどうしろと?
取り敢えず、パワ上の変更した箇所を記憶のある限り、再現していく。が、記憶にも限界がある。パワ上の日本語も主語と述語の関係が歪であるため、再現など到底不可能なのだ。
上司、先程の修正箇所が保存されていません。
何度も指摘しては、笑いながら謝るパワ上だったが、5回目である。いくら小学生でも、5回指摘されたら、保存ボタンを押すという行動を覚えるものだろう。
なぜ覚えない。
私は、きっとふざけているのだろうと思った。ならば、これ以上パワ上のおふざけに付き合っていられない。時刻は19時だった。
仕方なく、プレゼン資料を法務に提出した。法務リスクチェックのためである。
しかし、なにが気に入らないのか、パワ上は法務にプレゼン資料をの削除を命じた。
「なんで勝手に提出しているんだ!」
定時はとっくに過ぎている。パワ上は、帰宅したい私を捕まえて、プレゼン資料の編集を続けさせた。
具体的な指示もなければ、編集したデータを消す蛮行。私は混乱に陥った。だれか、パワ上の行動を説明してほしい。
しかし、怒鳴り散らしながら修正を(人差し指2本で)するパワ上に、声を掛けるものは誰もいない。
相変わらず保存されない(保存ボタンを押していないので当然)データを睨み、パワ上は書類を投げつけながら怒鳴り散らかした。
暴れるパワ上、怯える私、無視をする社員。
あえなく、私は会社のトイレに退散した。
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モスクワ旅行2日目、私は赤の広場からみて北東にあるグム百貨店を散策していた。日本で言うところの三越である。
噂に偽りなく、横に桁外れに広い建物のなかは豪華絢爛で、なにより来店客の少なさが気になった。赤の広場には中国人観光客がたくさんいたが、グムで買い物をする人はいなかった。
静かな店内にソ連が生んだ怪物のようなおばあさん、背筋が真っすぐで隙のないビジネスマンがちらほらいただけである。
比較できないが、日曜日の百貨店やアウトレットとは比べ物にならないほど閑散としていた。
非常に歩きやすい百貨店内は、しかしどこも似たようなもので、広い通路を挟んで個人商店が並んでいる。通路の真ん中には観葉植物やイベントを告知するオブジェがあり、国内メーカーの宝飾店もちらほらあった。
ふと、私はトイレに行きたくなった。トイレにも国の違いが出るのたろうか?海外旅行は初めてだったが、トイレは各国様々な様式があるようで、興味が湧いた。
ついでに用も足したい。
そして、先程飲んだオレンジジュースが、腸を攻撃している。
私はキリル文字に慣れた目でトイレを探した。トイレは世界共通男女のマークがあり、大変分かりやすい。このように地図上の表示マークを統一した方には、感謝の念が絶えない。
やっと見つけ出し、入ろうとした。ある注意書きが目に入った。
トイレ利用料5ルーブル
そしてトイレの前には、表情を失ったミドル女性が座っている。
そう、グムのトイレは有料なのだ。
そのためか、トイレの中は採光があり、明るかった。そしてちょっとおしゃれでもあった。グㇺから10分少々歩いたところにあるデパートの、無料のトイレにも入ってみたが、清潔感はほとんど同じだった。
5ルーブルは当時のレートで換算すると8円程度である。渋る金額でもない。が、ゆったりできる金額でもない。むしろ、金を払っているんだと威張れないため、用を済ませてスマートに退室したい。
腹痛と戦いながら、スマートさを出すには如何にと考えたのは初めての経験だったのかもしれない。
仕組みや理由が分からなければ、人は(というか私は)こんなにも簡単に混乱してしまうのだ。
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ロシア味が強いのに、観光客が誰ひとりいなかった
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