最後の秘境へ

2019年末、初めての海外貧乏旅行を決行した。
当初はそこそこの予算を組んでいたのだが、仕事を辞めて経済的に困窮していたのもあって予算が1/3にまで減り、やむなく貧乏旅行となった。

そんな経済状況で遊びに行こうなんて馬鹿の極みだが、コロナ渦でおそらく年単位で海外渡航できなくなった現状を思うと後悔はしていない。むしろ行けるうちに行っておいてよかったと思っている。

海外旅行はこれが二度目で、前回はオーストラリアのクイーンズランド州に行った。

豊かな自然と綺麗な海に感動し、飯の不味さに驚愕、そして物価の高さに泣いたものだった。
次に海外へ行くなら
・綺麗な海がある
・飯がうまい
・物価が安い

これらの要件を満たした場所が良いと思っていた。
ワガママを言うなら、
・綺麗な星空を拝める
これもあれば尚良しだった。

物価の安さを求めると必然的に東南アジアに絞られる。
東南アジア諸国のガイドブックを読むなどして数ヶ月も悩んだ。以下の国々がその時の候補である。

・タイ
仏教の国…だが寺院の写真など見るとヒンドゥーっぽい華やかさがある。
海外旅行初心者向けの国で貧乏旅行の定番中定番。飯が辛くてうまいらしい。
エロ夜遊びも有名。
クメール時代や歴代王朝の遺跡がそこら辺にいっぱいある。
仏教もエロも遺跡も興味ないので候補としては最下位。

・マレーシア
知人から激推しされた国。物価が安くて飯がうまい。
マレー半島とボルネオ島の一部がマレーシア。ボルネオ島は自然豊かでザ・南の島感あり。
動物奇⚫天外の視聴者プレゼントでお馴染みだったランカウイ島があるのがマレーシア。クアラルンプールから安く行ける。
タイより素朴な印象、だがそれが良い。かつてテレビで見たランカウイに興味があるので第一候補。

・フィリピン
物価が安く、綺麗な海がある。だけどなんとなく飯がまずそう。
それに年末は旅行のベストシーズンではないらしいのであまり積極的に情報を集めなかった。

・インドネシア
年末は雨季になるので候補にならず。
昔から憧れていた南の島絶景スローライフを楽しめそうなので、シーズンが合えば第一候補になった。
3月頃にバリ島ではニュピという正月があり、現地人、観光客問わず皆が電気の使用と外出を禁止される。
電気を使えないのだから夜はパねえ星空を拝める。
綺麗な星空を拝みたいというワガママもインドネシアなら叶えられるのだ。

・カンボジア
ビザが必要になるのでできるだけ費用を抑えたい私には微妙な国。
人生観が変わると評判のアンコール・ワットで初日の出を拝むのには興味があった。遺跡自体は別に好きじゃない。
昔は飯がまずくて有名だったが、実際は結構洗練されているとの噂。
幼女買春できると評判で、これまで何人かのロリコン外人が投獄されている。
私もロリコンだが、くそ暑い国の刑務所に入れられるリスクを考慮すれば買春なんて行為はする気にならない。

・ベトナム
酒が安いのだが私は酒が飲めない。
飯がうまいことで有名だが、そそられる料理があまりない。ライスペーパーってまずそう(偏見)。
東南アジアで特に物価が安いらしいが、通貨のインフレっぷりが凄まじく
100円がおよそ22000ドンという凄まじいレート。初見では絶対金銭感覚が掴めないのでボラれる確率大。

他にはラオスやミャンマーなども候補にあったが、
悩んだ末、タイに決定した。
結局定番の国にしたのか、という声が聞こえてきそうだが、決め手はネットで見たとあるゲイライターさんのブログの写真だった。
その絶景に惹かれ、一瞬でタイ行きを決めたのだ。まったく興味がなかったはずのタイに。


写真にあったのは、パラダイスとしか形容できない南の島。
本当に存在するのか疑わしい、透き通ったエメラルドグリーンの海…
島を覆うヤシの木の数々…
ロマンチックな夕陽と夜空……
憧れていた南の島絶景スローライフがそこにあった。


美しい物を表現する時、語彙力が試される。国語の成績が2だった私ではこれが限界だ。
そのブログでは「脳内にしか存在しない南の島」と表現されていた。非常に的確である。
写真を見た瞬間「ここに行けるなら死んでもいい!」と思った。

その理想郷こそがクート島である。クッド島、クット島とも呼ばれる。
カンボジアとの国境近くに浮かぶ島。地理的には南というより東に位置する。

↓参考↓

クット島 | 【公式】タイ国政府観光庁 https://www.thailandtravel.or.jp/ko-kut/

タイの南の島といえばプーケットに代表するアンダマン海に浮かぶ島々が有名だが、多数の旅行者でビーチがごった煮状態になってるという噂を聞いてたので候補にはならなかった。
ネットでプーケットの写真を見てみると、屋根にまで人が乗ってるインドの超満員列車のビーチ版といった感じである。
そんな人で溢れるプーケットのビーチでビキニ姿の旅行者のねーちゃんたちと押しくらまんじゅうを楽しむのも悪くないが、スローライフとほど遠い環境はちょっと遠慮したい。私は陰キャなので賑やかよりは静かな環境を好む。

クート島は元はタイ人に人気の観光地で、経済的に豊かな人が訪れるリゾート地だったが、近年はバックパッカー向けの安宿が生まれて私のような貧乏な外人にも楽しめるようになっていた。
しかしまだまだ観光客の数は少なく、のんびり南の島スローライフを経験したい人にとって「穴場」といえる場所だ。最後の秘境とまで呼ばれるほどである。
最後の秘境と呼ばれるスポットは世界中に存在するが、最後の秘境系で一番安く到達できるのはおそらくクート島である。

ただし、島に行くのが大変で、首都バンコクから片道7時間はかかる。バスで5時間、フェリーに2時間揺られてようやく到達する距離。
乗り物酔いしやすい人にとっては地獄の道程だ。
私は乗り物酔いに強いタイプで、しかも長時間のバス旅行に慣れている北海道民(札幌-函館間は5時間以上かかる)なので、特にハードルの高さは感じない。クート島旅行に最適な体質である。

日本を発つ2日前にスケジュールを完成させ、私はタイへ飛んだ。
飛行機の中でパスポートを紛失するというバカをやりつつも、無事にタイの首都、バンコクに到着したのだった。


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