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成功企業のブランディング事例 Vol.7「IKEA」

成功企業のブランディング事例シリーズのVol.7へようこそ。
(Vol.6を見逃した方は、こちらからお読みください!)

本シリーズでは、様々な企業をピックアップし、その企業のブランディング手法や、それによって得られた効果についてご紹介します。

ニューヨークでサービスをローンチし、一年で約55,000ユーザーを獲得したZeBrandが、ブランディング初心者にもわかりやすい解説を目指します。グローバルで展開するブランディングサービスで提案している3つのステージに基づいて、体系的に企業を分析し、紹介していきます。このシリーズを読みながら、ブランディングに関する知識を蓄えていきましょう。


IKEAとは

今回取り上げる「IKEA」は北欧スウェーデン発祥の世界最大の家具メーカーです。安い価格、おしゃれなデザイン、アフターサービスの良さなどが顧客から評価され、世界中で愛されている企業の一つです。現在、日本において店舗を展開しているのはIKEA Japanです。2002年7月に設立され、現在は日本国内に12店舗展開しています。IKEAの商品の特徴としては、組み立て式の家具を販売している点や全ての商品にスウェーデン語で名前がつけられている点、各店舗に食事をするスペースがある点などが挙げられます。

IKEAのすごさ

今回IKEAを取り上げた理由は2つあります。1つ目は、海外企業でありながら日本でのローカライズ戦略を成功させ、多くの顧客を魅了している点です。2つ目は、時代の変化をいち早く読み取り、店舗の役割を、ものを売る場所からブランドを理解してもらう場所としてシフトし、運営をしている点です。以上の点に着目しつつ、IKEAについて紐解いていきましょう。

IKEAのブランディング

IKEAのビジョン

IKEAの存在意義を表すビジョンは「より快適な毎日を、より多くの方々に」です。このビジョンは、家具の販売だけにとどまらず、IKEAでの活動全てに適用されます。原材料を調達するコミュニティの構築から、IKEAの商品を購入したお客様がサステナブルな生活を送ることまで、世界中にポジティブな影響をもたらしたいと考えています。

IKEAのビジネス理念

IKEAが達成目標とするビジネス理念は「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニシング製品を幅広く取り揃え、より多くの方々に購入いただけるよう、できる限り手頃な価格で提供すること」です。確かに、IKEAに買い物に行くと、素晴らしいデザインの製品が手頃な価格で提供されていることに驚かされます。

IKEAのバリュー

毎日の業務においてIKEAの方向性の道標となっているのが、IKEAバリューです。IKEAバリューには以下の8つがあります。

「連帯感」
「環境と社会への配慮」
「コスト意識」
「簡潔さ」
「刷新して改善する」
「意味のある違うやり方」
「責任を与える、引き受ける」
「手本となる行動でリードする」

IKEAのロゴ、カラー

ブルーとイエローで構成されるIKEAのロゴは、一目でIKEAブランドだとわかるシンボルマークです。また、IKEAの独自性とスウェーデンの伝統も強調しています。IKEAのブルーは、製品に注目させ、目立たせる効果があります。IKEAのイエローは楽観的な色で、お客さまがいつでもどこでもIKEAに出会ったときに、ポジティブな印象を与えます。

IKEAのロゴに関してですが、初めのロゴは値段が安いことを表すために、赤色のロゴを使用していたそうです。何度かロゴの変更が行われ、今の形となりました。

IKEAのビジュアルアイデンティティにおいて、赤は今も大きな役割を担っています。IKEAの歴史を振り返ると、赤いIKEAの建物や赤いIKEAのトレードマークもあるそうです。


IKEAのマーケティング

IKEAはスウェーデンの企業ではありますが、2006年から日本への進出を始めました。ここからは、日本進出においてどのようなローカライズ戦略が取られてきたのかについて取り上げていきます。

日本でのブランディング

  1. 企業理念のローカライズ
    まずは、企業理念に関して、日本でどのようにIKEAを展開すべきかということについての話し合いが行われました。この話し合いは、日本のマーケティングチームが行うのではなく、IKEAでのキャリアが長い、ベテラン社員がさまざまな国から集まって、ワークショップ形式で行われたものでした。日本人でこの会議に参加したのは、一名で、日本の特徴について述べた上で、どのようにIKEAの理念を日本市場に落とし込むのかについて議論がなされたそうです。

    営業チームだけの意見ではなく、さまざまな部署の意見を取り入れることで、多角的な視点から理念を見直すことができた点がポイントです。

  2. 日本におけるネガティブ要素を攻略する
    IKEAの経営プランニングは以下のと形でなされます。

店舗商圏内の家庭を訪問

ヒアリング

ショールームで解決法を提示

日本の場合は出店予定の店舗周辺にある一軒家や団地の方にお話を聞き、日本ならではの狭い部屋でも置ける家具などを組み合わせて、ショールームで展示することで、購入のイメージが湧くようにしています。実際、店舗ごとにヒアリングを行うので、店舗によってショールームは異なるそうです。

また、日本では海外の家具は安く、質が悪いという印象が強い上に、組み立て式の家具というものが浸透していない状態であったので、IKEAの持つ「より快適な毎日を、より多くの人々に」というビジョンを浸透させる必要性を感じていました。

広告宣伝の面では、プレスツアーを行い、ターゲットに向けた宣伝を行うことに成功しました。また、神宮外苑で4畳半サイズの部屋を展示する企画展「IKEA 4.5 MUSEUM」を開催しました。企画展では、4畳半の空間に「HAVE A NICE DINNER」などの生活シーンや「BOOK LOVERS」などの趣味をテーマとした14種類のルームセッティングを、IKEA商品のみで展示しました。

結果、日本一号店をオープンする前から、広い認知を得ることができ、オープン初日から3.5万人の来店を達成したそうです。


IKEAでの店舗販売

IKEAの店舗販売は、ただ商品を販売するだけではありません。近年では出店先が郊外の超大型店舗だけではなく、都心へ進出するという流れが見られますが、それも意識の違いによるものと言えるでしょう。

IKEAの店舗に対する意識について見ていくと、IKEAは店舗を通じてブランドの価値観を顧客に伝え、未来の顧客との接点を生み出す場として捉えています。他にも、スウェーデンフードの販売など、北欧の暮らしや思想を体験できるようにもなっています。

新宿や渋谷、原宿などにあるIKEAは、IKEAの商品が遊び心と共に並べられ、店舗を回るだけで顧客をワクワクした気持ちにさせてくれます。家具のような大きな商品はオンラインでも購入できるよう、ECサイトやアプリへの導線が店舗内に用意されています。また、お店の中にカフェもあるため、家具の購入を検討していないような人々も店舗に立ち寄ることができるようになっており、店舗がライトユーザー獲得の場として、機能しているのです。


IKEAのコアワーカーに対する意識

2015年から何度かランスタッドアワードにおいて、スウェーデン・テレビやボルボ・カーズを抑え、スウェーデンで最も働きたい会社として選ばれています。従業員の意欲と満足度の高さが、高い定着率と企業成長の維持につながっています。IKEAが成長するほど、売り上げが伸び、売り上げが伸びるほど、価格の維持や値下げが可能になるのですから、IKEAではコアワーカーとの良好な関係が好循環を産んでいると言えるでしょう。

IKEAスウェーデンのリテールのタレントマネージャー、ラーシュ = エリク・フリードルフソン氏は「ただ物を売り、売上だけで成功を定義する会社にはなりたくない」「お客様の快適な住まい作りをお手伝いすることによって、日々の暮らしを豊かにできます」と話します。

採用の際には、IKEAのデモグラティックデザインという理念のもと、履歴書よりも、価値観や姿勢を大事にして選考を行っています。そのため、選考プロセスの一環として、応募者に、面接で自分のリビングルームの写真を持参してもらい、どこが気に入っているか、どのような理由でそうしたのかなどについて説明してもらうといったステップがあります。これによって、家具やインテリア用品、優れたデザインに真の熱意を持ち、お客様の暮らしを豊かにするために情熱を注いでくれる人を、いち早く見極められるそうです。


まとめ

IKEAはしっかりと定められた、ミッションやビジョンに基づいて経営を行います。海外に進出する際もIKEAのブランディングは保たれたままで、素晴らしいローカライズ戦略によって、日本への進出を成功させた点も目を見張るものがあります。現代の小売業が店舗販売からECサイトへと移りゆく中で、いち早く店舗販売の意義づけを変更させ、新戦略で戦っている点も見事です。顧客もコアワーカーも大事にするIKEAに私たちが魅了されるのも不思議ではないですね。

成功企業のブランディング事例シリーズでたくさんの事例を知ることで、ブランディングに関する知識やアイディアを蓄えることにつながります。本シリーズの他記事にも興味がある方は、こちらからご覧ください。

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