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番外編① 地域ブランディング成功事例 熊本県PR「くまモン」

ZeBrandでは、全ての人がブランディングを身近に感じられ、自分らしさを自由に表現し、お互いを認め合える世界を作ることを目指しています。ZeBrandは、成功企業のブランディング事例についていくつか取りあげてきましたが、ブランディングが力を発揮する場所は、企業だけにとどまりません。

「地域ブランディング」「まちづくり」といった言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?昨今では一昔前より「地域」のブランド化が進んでいます。例えば熊本県といえば「くまモン」、愛知県今治市といえば「今治タオル」というように、多くの人にその地域を連想させるものがあるということは、地域ブランディングが成功していると言えるのではないでしょうか。

一方で、すべてのプロジェクトがうまくいっているわけではなく、様々な失敗談があるのも事実です。本記事では、地域ブランディングの成功事例をご紹介し、その成功の理由を探っていきます。

本記事で着目する、地域ブランディング第一回は熊本県の「くまモン」です。くまモンとは、2011年の九州新幹線全線開業をきっかけに制作された、熊本県のPRマスコットキャラクターです。そのため、ただのゆるキャラではなく、「熊本県の営業部長兼しあわせ部長」として働き、公務員として熊本県庁に在籍しているそうです。くまモンの人気は全国、世界的なもので、「ゆるキャラ」の人気を競う「ゆるキャラグランプリ」では、2011年王者に輝いています。


くまモンの市場規模 - 何がすごい!?

くまモンの利用商品年間売り上げは2020年で1,698億円までのぼります。前年に比べても50億円近く売り上げが向上しており、9年連続で売上高を更新し続けています。この売り上げ規模はゆるキャラの中でも突出しており、くまモンがゆるキャラとして不動の地位を築き上げているということを数字で明らかにしています。

参考:https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/129499.pdf

くまモン市場規模拡大の理由

1. キャラ設定

くまモンの特徴はキャラクター設定としてのこだわりが強い点と言えます。くまモンは、ただの着ぐるみキャラクターではなく、1人の人間のように扱われています。くまモンに対して一切「着ぐるみ」という言葉を使うことはなく、「くまモンの控室」という言葉を使うことはあっても、「着替え場所」といった言葉ももちろん使うことはないのです。さらに、「くまモン」は世界で1人だけになっています。瞬間移動ができるという設定はあるものの、絶対に2体が同時刻にあられることはないそうです。

また、くまモンのプロフィールからはくまモンの汎用性の高さが見られます。

くまモンのプロフィール

このプロフィールを見ると、くまモンの設定は、曖昧になっている部分が多いからこそ、幅広い人々に愛され、色々なところに呼んでもらうことができるのです。


2. 利用のしやすさ

くまモンは多くの場面に起用してもらうことで人気を広げました。実は、先ほどのプロフィールにくまモンの起用しやすさが隠されています。

例えば、好きなものを詳細に定めてしまうと、それ以外のイベントに呼んでもらえなくなる可能性があります。「野球好き」という情報があると、野球のイベントには呼んでもらえても、サッカーのイベントには呼んでもらえない可能性が出てくるということです。また、熊本の特産品や製品などの「何か」をモチーフにしていないキャラクターであるゆえに、どんなものを宣伝する際にも適します。

くまモンの衣装コレクション、通称「モンコレ」

また、くまモンをイラストで見た時のデザインにも着目してみましょう。他のキャラクターとの圧倒的な違いが一つあります。それは、輪郭がないという点です。キャラクターものは、描く人によって輪郭が太すぎたり細すぎたりしてバランスが悪くなるということがありますが、輪郭がないため、誰が扱ってもデザインのバランスを保つことを可能にします。さらにシンプルな色構成だけで成り立っており、黒を基調としながら、使用カラーはたったの3色です。そのためどのようなパッケージやデザインに落とし込まれても、うまく溶け込むとともに、目立ちやすくもなっているのです。

さらに、くまモンは他のマスコットと異なり、版権がフリーである点が革新的でした。くまモンは熊本県の人はもちろん、熊本県外の人でも無料で使用することができます。それによって、ストラップやぬいぐるみといった単純なおみやげグッズや地元の野菜のパッケージシールにくまモンを利用したりと、さまざまなくまモングッズが全国へと広がっていきました。

その一方で、くまモンはデザイン使用規定を設けることで、デザインの品質管理もきちんとしています。利用者は、以下の利用の手引きを読み、それに沿ってデザインをしたのち熊本県のくまモンの担当者に申請の許可をもらうことが必要になります。

申請に関する資料:
https://kumamon-official.jp/kiji0031655/3_1655_2003_up_qp6vcb5q.pdf


このくまモンの使用規定には、「性格や年齢など、プロフィールから想定できない利用方法をしない。」「『くま』はひらがな『モン』はカタカナで表記する。」「特定の商品/企業の『おすすめ』をしない。」といったことが記されています。このようにキャラクター使用に関する管理がされていることで、くまモンの品質が保たれているのです。残念ながら、使用許可の降りていないところで勝手にくまモンを使ったグッズが販売されていることもあるようで、ファンの方がお店やネットを巡回してそれを見つけた際には報告してくれることもあるそうです。実際に、熊本市がそれをもとに対応することもあるようです。


3. 実際のプロモーション活動

くまモンは「くまもとブランド推進課」というプロジェクト部隊によってプロモーションがされていました。この部隊によってくまモンが管理されていたのですが、彼らがフェーズごとにターゲットを規定したことで、効果的な認知や人気の獲得につながりました。

まず、彼らの最初のターゲットとなったのが、関西に住む人でした。関西における熊本の認知度向上に向けて、関西に住む人にとにかく面白がってもらえる様にするための戦略が立てられました。これによって、2010~2011年のくまモンの活動は一貫して外に向けられるものとなります。大阪で1万枚の名刺の配布を行なったり、その途中で失踪したり、なんばグランド花月で吉本新喜劇の舞台に出演したりと、普通のゆるキャラがしないような、面白い活動をしていた点が特徴的です。

並行して県内での認知の向上も目指し、県内ではターゲットを子供に絞って、活動を展開していきました。熊本県内の保育園や幼稚園など、子供が集まる施設に毎日訪れてPRをしていきました。

関西での露出が高まるにつれて、地元、熊本でも比例して人気が高まっていき、これらの活動の結果として、くまモンは「地元以外でも愛されるキャラクター」となりました。また、関西での人気を獲得した後は、またターゲットを設定し直し、さらなる展開を見せていきました。

また、くまモンには行動指針があったため、キャラクターとしての一貫した動きを取ることができたと分析することもできます。くまモンの行動指針は、「くまもとサプライズ」という企画からでたキャラクターであり、以下の「3つのS」を推進しているそうです。

「サプライズ(SURPRISE)」...常にフロンティアを広げ、新しいことにチャレンジ
「ストーリー(STORY)」...ストーリー性のある仕掛け。その場しのぎの目立つ行動ではなく、なぜそうなるのかの物語性を重視
「シェア(SHARE)」...三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)。県と企業の2社間だけでなく、県民やファンの皆様にいいねをいってもらえる。

3つのSの行動指針があるため、くまモン専属部隊は、自ら営業を行い、結果として、何十社もの企業とのコラボを実現させていきました。ガリガリくんとのコラボや、映画のポスター出演、アニメ化プロジェクトなどさまざまな企画が行われました。

くまモンコラボ / くまモンランド

まとめ

今回は熊本県のゆるキャラ「くまモン」が高い認知度を誇る理由を探りました。くまモンが人気キャラクターになった要因には、水野学氏による、計算されたくまモンのデザインと、そのシンプルなキャラクター設定、そしてくまモンを利用して熊本を盛り上げていこうとする熊本県職員の熱い想いが裏にあるということがわかりました。くまモンは他のゆるキャラにはない成功を収めるためのさまざまな仕掛けが用意されていたのだと知ると、自身の手がけるブランド戦略にもまだまだできることがあるかもしれないと思いませんか?

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