ペット探偵富岡の事件簿:戯け者の不始末
ギリギリまで短くなった煙草を燻らせながら、泥水のようなコーヒーを啜る……なんて往年の私立探偵はまだなんとか様になる。俺の場合は、度重なる税金値上げで煙草なんぞ夢のまた夢、余り物の素麺を始末するべく、泥水のような素麺ツユ(賞味期限切れ)と奮戦している。
そんな秋の日に、俺の事務所のドアが切迫した勢いでノックされた。
焦りに焦った男は、挨拶もそこそこに開口一番、
「僕の恋人を探してほしいんです!」
「……アンタ、うちの事務所の看板は見たのか?俺はペット専門探偵だぞ」
流石の仕事日照りの俺も突っ込まずにはいられなかった。
「いいんです、これが写真です」
「ん?」
男が差し出した写真には、男を引き付ける蠱惑的な顔をした非常に美しい女性が映っていた。ただし、その美しい顔は犬の身体に繋がっている。人面犬だ。……おい、俺はオカルト探偵でもないんだが。
「彼女は僕の子を妊娠しているんです、どうか見つけ出してください」
(続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?