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奇侠よ恐竜惑星に飛べ

 その恐竜の名前はデイノニクス、羅語で「恐怖の鉤爪」を意味する。1mほどの体高の全身は分厚い筋肉で覆われ、ひょろ長い腕には鋭利な鉤爪が三本装着されている。そして目を引くのは、鎌のように湾曲した後肢の三本目の爪である。ただ臓物を掻き出し貪ることに特化したこの爪こそ、恐怖の鉤爪という名にふさわしい。

 だが、この殺戮のために生まれた獣すら、我らが奇侠の肝を冷やすことはできず、むしろ沸々と闘志が昇ってきただけである。

 東三十郎は愛用の六尺棒を風車のように舞わし、鉤爪に打突の雨を降らせる。しかし、成人男子に血反吐を吐かせるその剛撃も、全身これ鋼が如き恐竜には小石程度の苦痛である。右鉤爪が三十郎の胸を襲うが、皮一枚切り裂くに留まる。両者は動きを止めた。

 げえっと叫び、デイノニクスが突撃、必殺の鎌爪の蹴りを繰り出す。危うし!六尺棒が魔術のように宙を舞い、これを受け流し折れる。刹那、霹靂電光と繰り出される鉄拳!

(続く)

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