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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【8月21日㈬~8月27日㈫】

先週の当通信は、“ホアキン・コシーニャ監督来日特集”という趣きだったので、触れませんでしたが、先々週から先週にかけて、弊社と縁のある映画人が相次いで亡くなりました。

8月14日に亡くなったジーナ・ローランズさんは、言わずと知れたジョン・カサヴェテス監督のミューズであり、生涯のパートナー。2012年に“ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ“を開催した際には、パブリシティにも協力して下さり、カリフォルニアでの現地インタビュー、日本からの電話インタビューに応じて頂きました。それぞれのインタビューのことを、今回の訃報に際してyahooニュースでL.A.在住の映画ジャーナリスト 猿渡由紀さんが、ご自身のXで門間雄介さんが回顧して下さっています。ぜひお読み下さい。

1995年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門にテレンス・デイヴィス監督作品『ネオン・バイブル』が出品された際、主演女優としてローランズさんも参加されていていて、会期中多くの関係者が滞在し、レセプションの会場にもなったりする老舗ホテルの一つ、Le Gray d'Albionの前で偶然遭遇したことがあります。慌てて撮った写真があるはずなのですが(当時は携帯もなく、カバンの底に忍ばせた“写ルンです”を取り出して撮影したのだと思います)、今日の更新までに見つかりませんでした。出待ち入待ちをしている映画ファンの間を堂々と歩いてエントランスに向かう姿が、たまらなくカッコ良かった記憶があります。写真見つかったら、後からでも上げますね。

私は“見た“だけなのですが、2012年のレトロスペクティヴ開催時、当時ザジで宣伝を担当していたY君は、インタビュー取材にあたってご本人と何度か電話で事前のやり取りをしています。当初ロス市内のホテルが取材場所に指定されていたのですが、「本当は私の地元まで来てもらえると有難いのだけれど…」と直接、あのジーナ・ローランズから言われ、受話器を手で押さえて「どうしましょうか?」と冷静に対処するY君を見て、「相手がジーナ・ローランズって分かってる?」と、その度胸の良さに感心したのも思い出しました。そんな経緯があって、前述の現地インタビューが、ロス郊外のいわゆるパームスプリングス、インディアン・ウェルズという街のカントリークラブのクラブハウスになったのでした。ロスからは車で2時間ぐらい。猿渡さん、その節は急な変更にも関わらず、どうもありがとうございました。

ローランズさんには、その時に日本のお客様向けにメッセージも頂きました。2012年のレトロスペクティヴではパンフレットを作らなかったので、そのメッセージはメディア向けに配布するプレスへの掲載と、一部を予告編に引用させて頂いたのみだったのですが、去年の“ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ リプリーズ“開催時に制作したパンフレットに、12年を経てやっと全文を掲載しました。読みにくくてすみませんが、こんな感じです。

「未知なる感情を目覚めさせ、広い視野を与えてくれる映画が
 この世にあって本当によかったと私は思います」

インターネットムービーデータベースによれば、最後の出演作は2017年の短編『Unfortunate Circumstances』。それ以降は出演作が途絶えていたので、「もう引退されたのかなぁ」と、気になっていたところです。今年の6月で94歳になられていたので大往生と言えるのかもしれませんが、やっぱり寂しい…。でも、これから何十年先も、ローランズさんの演技は世界中の映画ファンの間で語り継がれていくのは間違いないですよね。現在、ザジでは『こわれゆく女』、『フェイシズ』、『オープニング・ナイト』、『ラヴ・ストリームス』の4作品の追悼上映を企画中。東京では年内中にスクリーンでご覧頂けるよう劇場の方とお話を進めています。また、その前に『こわれゆく女』を35㎜プリントで上映するイベントが、9月7日と8日の2日間、東京・秋葉原UDXシアターで開催されることが決定しています。題して「FILM座」。こちらもぜひご来場下さい。

そしてもう1人、8月18日にアラン・ドロンさんがお亡くなりになりました。まさに巨星落つ、という感じ。ドロンさんも前から病気を患っていて、既に引退状態ではありましたが、遂にその日が来てしまいました。映画ファンじゃない、今どきの若い方も、名前ぐらいは聞いたことのあるであろう“映画スターの代名詞”ともいうべき方。ザジでは、90年代半ばから過去の出演作品のテレビ放送権やビデオ化権を扱ってきましたが、さすがにドロンさんと遭遇したことは無かったなぁ…と思ってたら、訃報がもたらされた日に思わぬ人物からLINEが入ってきました。それは中学時代の同級生からでした。「中学の修学旅行の時に、奈良公園でアラン・ドロン見たよね?」。覚えていない…。見てたとしたら深く記憶に刻まれそうですが、私には記憶がない…。たぶん私はLINEをくれたその友人とは、別の班(班別に見学ルートが違っていたはず。笑)だったのだと思います。しかし1976年の秋、アラン・ドロンさんが奈良公園にいたのは事実と思われます。

現在発売中『若者のすべて』ブルーレイのジャケット。

現在劇場権を保有している主演作はルキノ・ヴィスコンティ監督『若者のすべて』と、ロベール・アンリコ監督『冒険者たち』の2作品。既にいくつかの劇場さんから追悼上映のオファーを頂いておりますので、日程が決まり次第公式Xなどでお知らせします。私も実は観ていない作品が多いので、DVDやブルーレイで過去作を少しずつ観て、ドロンさんを偲びたいと思います。

texte de daisuke SHIMURA





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