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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【10月27日㈬~11月1日㈫】

東京国際映画祭が11月2日に閉幕します。「あれは観ておいたほうが良いよ」、「あれは観なくても…(むにゃむにゃ)」などと同業の友人たちと情報交換しながら、結局私が観れたのは5本だけ。勝率は1勝2敗2引き分け、という感じでしょうか?でも、その“1勝”の映画。めちゃめちゃ面白かったけど、私には興行を成立させられる自信がありません…。どこか買うかな?

一方、東京フィルメックスも11月2日から開幕しました。アンプラグドさん配給が決まっていますが、東京国際映画祭の試写の後、ちょうど時間が合ったのでオープニングのジャファール・パナヒ監督作『ノー・ベアーズ』を観ました。ビジュアルから勝手に軽めの風刺映画だと思っていたのですが、ズッシリと来ました。本公開はいつ頃になるのでしょうか?どうぞ頑張ってください!

東京フィルメックス会場の朝日ホール

さて。本業のほうですが(笑)、アニエス・ヴァルダ監督の代表作の1本『冬の旅』がいよいよ今週土曜日、11月5日から渋谷シアター・イメージフォーラムで再公開されます。1985年の第42回ヴェネチア国際映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞、フランスでの公開時は100万人以上を動員する大ヒットを記録、生前ヴァルダ監督自身も「私のフィルモグラフィーの中で、評価的にも興行的にも最も成功した作品」と語っています。

日本での公開は、1991年11月にフランス映画社さんによって実現しました。ヴァルダ監督の知名度、ヴェネチアの受賞歴を以てしても、作品の発表から6年の歳月を要したのは、その題材の地味さからだったのでしょうか?残念ながら興行的にもヒットには至りませんでした。

ザジフィルムズがヴァルダ作品を手掛けるようになったのは、『幸福』『5時から7時までのクレオ』等の旧作からであることは前にも何度か書いてきましたが、この『冬の旅』も劇場公開後、ビデオ化されないままフランス映画社さんの権利が切れた後、90年代後半に新たにビデオ化権を取得してビデオメーカーさんにVHSをリリースして頂きました(当時、メーカーさんのご判断で「さすらう女」というタイトルに改題されました)。が、そのビデオも売れたとは言えず“知る人ぞ知る”存在に留まり、その後ザジがテレビ、劇場など他の権利を取得することもなく…。

そしてまた『冬の旅』のタイトルが社内で上がってくるようになったのは、2020年夏に岩波ホールで『落穂拾い』の権利を再取得してヴァルダ特集を開催したタイミング。少なくない数の方からの「『冬の旅』もやって欲しかった」という声が上がったので、私の中で『冬の旅』の存在が再浮上したのでありました。2019年7月と2020年11月の2度、新文芸坐シネマテークでの上映はありましたが、その後どちらかの会社が権利を取得した、という話は聞こえてきません。そこに来てアンスティチュ・フランセさんからの、「国立映画アーカイブでフランス女性監督の特集をやるのですが、ザジさん『冬の旅』の上映権をお持ちでしょうか?」というお問い合わせ。「持ってないけど、買うつもりだよ~ん」。思わずそう答えてしまった私です。もちろん「だよ~ん」とは言ってません(笑)。

ちょうどその頃、保有する一部のヴァルダ+ドゥミ作品の契約延長の時期が迫っていました。今回はお声のかかりずらい『ジャック・ドゥミの少年期』『天使の入江』の延長は泣く泣く諦めて、『幸福』『5時から7時までのクレオ』『ローラ』に、新たに『冬の旅』を加えた格好で契約しました(“アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画”『落穂拾い』も引き続き契約中です)。劇場、テレビの編成担当の皆様、これらの作品は弊社で扱っていますので、ぜひお声がけください(こんなところで営業!)。

今回チラシのコメントで映画ジャーナリスト林瑞絵さんが、『冬の旅』を、クロエ・ジャオ監督の『ノマド・ランド』(’20)や、今年劇場初公開されて話題を呼んだバーバラ・ローデン監督『WANDA / ワンダ』('70)や、シャンタル・アケルマン監督の諸作に連なる““漂流する女性”映画の金字塔的作品、と評して下さっています。この間、2年前に実際に起こったホームレス女性殺害事件をモチーフにした高橋伴明監督の新作『夜明けまでバス停で』を観てきたのですが、あの作品もその系譜でしょう。ぜひこれらの作品が響いた方には観て頂きたい『冬の旅』です。

パンフレットも無事完成。寄稿者は前述の林瑞絵さんを始め、こちらも前述の通りの経緯で、権利取得に向けて結果的に背中を押して下さった形になったアンスティチュ・フランセ坂本安美さん、ライター・編集者の小柳帝さん。ぜひチェックしてみてください。

シアター・イメージフォーラムで、初日から販売します!(28P 全カラー 定価600円)

尚、公開初日の5日(土)は11:25の回上映後、斉藤綾子さん(映画研究者/明治学院大学教授)、6日(日)13:50の回上映後は山崎まどかさん(コラムニスト)をお迎えしてトークショーも開催されます。ぜひご来場ください!

texte de Daisuke SHIMURA




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