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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【5月11日㈬~5月17日㈫】

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ監督(『バッド~』公開時は、“ナタウット・プーンピリヤ”表記でしたが、今回は元々の監督の愛称“バズ”を正式にクレジット表記に用いています)の新作『プアン / 友だちと呼ばせて』が8月5日㈮から、新宿武蔵野館シネスイッチ銀座他でロードショーが決定した、というニュースが先週12日に情報解禁になりました。バズ監督の才能にほれ込んだ『花様年華』、『恋する惑星』のウォン・カーワイ監督がプロデュース。若くして亡くなった親友に捧げられた、監督の半自伝的な映画です。

撮影が始まった当初から、制作ニュースは耳にして気になってはいたものの、大御所といっても差し支えないウォン・カーワイ監督のプロダクションで、前作からはバジェットも大きくなっているであろうことも予想され、「ザジには出る幕ないね~」などと他人事のように社内で話していたら、今回配給されるギャガさんからお声がけ頂いて、宣伝のお手伝いをさせて頂くことになりました。『バッド・ジーニアス~』ヒットの実績を買ってくださり、嬉しいオファーでした。

今週は“配給を手掛けた監督の次回作”、というテーマでお送りしてみましょうか。先々週の当通信でも触れましたが、2017年にザジで配給した『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のガブリエーレ・マイネッティ監督の新作『FREAKS OUT』(原題)は、まだ情報解禁前でしょうから書けませんが、既に某社が買付け済みです。第二次大戦下、それぞれに特殊な能力を持ったサーカス団員たちが、ナチスに連れ去られた団長を取り戻そうとする話。監督がプロモーションで来日した際に直接ご本人から企画を伺い、「メチャメチャ面白そう!」と進捗を気にしていましたが、これもやはり『皆はこう呼んだ~』と桁違いのバジェットになり、ザジには手の届かない作品となりました。

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』main

実は既に映画は観ているのですが、「そりゃ制作費もハネ上がるよな」という大作な仕上がりで、エンタメの王道を行く作品でした。でも『皆はこう呼んだ~』にあった“侘しさ”が無くなってるせいか、「ザジっぽくない」とも言えるので(笑)、諦めもつきました。強がりに聞こえますね。

昨日、別件でライターの方とミーティングした際に、「ザジさん、去年東京国際映画祭で上映された『洞窟』はやらないの?」と聞かれました。2011年にうちが配給したイタリア映画『四つのいのち』のミケランジェロ・フランマルティーノ監督の10年ぶりの新作。1960年代、カラブリア地方にある世界で二番目に深いという洞窟を訪れた調査隊の話…というか、調査の工程を淡々と映すのみで、『四つのいのち』と同様セリフはほとんどなく、特にストーリーがあるワケではない映画です。でも、決してドキュメンタリーでははありません。

それなのに、退屈かというと全然退屈ではなく、カメラの名手レナート・ベルタ(ロメール『満月の夜』、シュミット『ラ・パロマ』等々)撮影による映像にウットリ。たとえば、洞窟の深さを測るために、雑誌のページを破って、その紙に火をつけて上部から投げ落とすのですが、真っ暗闇をその火がユラユラと落ちて行くシーンの美しさたるや…。でも、買付けは断念。ヒット作を連発していて余裕がある状態であれば冒険も出来ますが、今は出来ません。貧乏が憎い。

『ハッピー・オールド・イヤー』のナワポン・タムロンラタナリット監督の新作『FAST & FEEL LOVE』も余裕があればやりたかった。再び、貧乏が憎い。どなたか買い付けてください。日本語字幕付きで観たい。

話はちょっと逸れてしまいますが、現在公開中の映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』を先日観て来ました。90年代のニューヨーク、サリンジャーの出版エージェントに勤めるヒロインの成長物語です。クレジットを観て、アレ?聞き覚えのある名前…だと思ったら、ザジがニューセレクトさんとの共同配給で公開した『ぼくたちのムッシュ・ラザール』(’11)のフィリップ・ファラルドー監督の作品でした。『ぼくたちの~』と同じく、悪人の出て来ない心優しき世界。フィリップ、変わんないね~(なんてファーストネームで馴れ馴れしく呼んでみた。笑)。

メジャースタジオの作品ではないので、マーケットに売りに出ていたはずの映画ではありますが、おそらく完成前に日本に売れていたのでチェックする機会がなく、しかも予告編には《監督 『グッド・ライ いちばん優しい嘘』の~》と紹介されていたので、気づきませんでした。『ぼくたちの~』、コケたワケではありませんが、リーズ・ウィザースプーンのメジャー感に負けた!そこへ行くと、今回宣伝させて頂く『プアン / 友だちと呼ばせて』は、予告編にド~ンッ!と《『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の~》と出てくるので、ちょっと誇らしかった…、という自画自賛のオチで今日は終わります(笑)。


texte de Daisuke SHIMURA



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