なるべく動物園(毎週ショートショートnote)
「名前、言ってみて、ねぇ」
【#n-AI汚染型】の檻に向かって懸命に話しかけている老婆を研究棟の窓から見ていると、同僚がやってきた。
「母親かな、あそこまで汚染が酷いともう無理でしょ」
檻の中の人間は、ただぼーっと座っているだけだ。
判断基準を全てAIに任せた生活を続けた結果、AIがなければ最低限の生命維持活動さえ出来ない人間が激増した。つまり、喉が乾いたら水を飲む、みたいなことが出来なくなったのだ。
慌てた政府は過度のAI使用を禁止した。汚染の軽い者はリハビリで元に戻ったが、酷い者はどうにもならず、この【なるべく動物園】で引き取ることになった。
なるべくして成った動物(人間)園だ。
一方、研究棟の裏山は【#g-非AI型】の自然保護区だ。こちらはAI汚染を恐れるあまり全ての文明機器を拒絶し、原始の生活に還っていった者たちを保護している。
「何でも程々が良いんだよ」
「でも、程々の線引きが難しいよね」
「そこはAIに任せようか」
(409字)
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