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中年エンジニアの破天荒冒険記:米国MBA留学/就職への挑戦 #200

渡航前の事務手続き

今回は海外留学する方のほとんどが発狂する渡航前の事務手続きの話です。個別の手続きに関する情報はネット上に沢山ありますが、全体を俯瞰した情報が少ないので改めてまとめてみました。日本国における制度設計は海外在住者を考慮していない(または優先順位が低い)ため、ひとつ選択を誤ると完全に詰んでしまう(または多大な時間と体力を浪費する)ことがあります。また運用上のグレーゾーンも結構あるため、そこを利用したハックもあるようですが、近年のマイナンバーの連携によるやや前のめりなDX化推進により厳格化が進んでいます。個人的には法律の罰則規定有/無に関わらず法令遵守することをお勧めします。最新情報は以下のYouTubeチャネルが大変参考になります。
週末海外ノマド「ダイスケ」


事務手続き一覧

海外留学する際に必要な主な事務手続きとしては以下があります。

  • 海外転出届

  • 年金(国民年金、厚生年金、確定拠出年金)

  • 健康保険(国民健康保険、組合健康保険)

  • 住民税

  • 国内銀行口座

  • 国内証券口座 (iDeCo、新NISA等)

  • 公共料金 (水道、電気、ガス、電話、テレビ等)

各手続きとの関係を図示すると以下のようになります。

私の選択

参考までに以下に私が選択(一部予定)した内容を示します。

<前提条件>
・留学期間:1年以上
・国内民間企業退職
・配偶者あり(国内民間企業勤務)
・単身渡米

<選択内容>
・海外転出届:あり
・年金:配偶者の扶養(第3号被保険者)
・健康保険:配偶者の扶養(第3号被保険者)
・住民税:なし
・国内銀行口座:地方銀行口座解約(予定)、三井住友銀行、SMBC信託プレスティア、ソニー銀行口座開設
・国内証券口座:なし
・公共料金:口座振替は地方銀行→三井住友銀行へ変更
・企業型確定拠出年金:iDeCoに資産移管(予定)
https://faq.dcplan.co.jp/faq/show/94?category_id=130&site_domain=user

海外転出届

一番初めに決めるべき事は海外転出届有/無の判断です。これによって必要な手続きが大きく異なります。海外転出届は海外に1年以上滞在する場合に必要な手続きで、渡航の14日前から当日までの間に市区町村役所へ提出します。海外転出届を出すと、現住所での住民票は"除票"となり、非居住者として扱われます。海外転出届の有無による関連手続きの違いは以下のとおりです。

<海外転出届有>

  • 国民年金、国民健康保険、住民税(*1):支払い義務なし(任意で支払い可)

  • 国内銀行/証券口座:解約または非居住者口座への変更手続きが必要

(*1)2024年9月に海外転出の場合、2024年度の住民税は支払う必要がある。

<海外転出届無>

  • 国民年金、国民健康保険、住民税:支払い義務あり

  • 国内銀行/証券口座:非居住者に該当しない場合(*2)は変更なし

(*2) 日本の居住者判定は日本の国内法による区分と租税条約による区分とがあり複雑です。以下のブログが参考になります。
「183日海外にいれば日本の非居住者になる」は本当か - (aoyama.ac)また、留学後に予定が変更になった場合の判定は、以下が参考になります。
業務の都合により1年未満で帰国したり、海外勤務が1年以上となった場合の居住者・非居住者の判定|国税庁 (nta.go.jp)

年金

私の場合は民間企業を退職したため、対象は国民年金となります。国民年金制度は厚生労働省が管轄し、日本年金機構が業務運営を実施しています。国民年金の被保険者は以下3つの種別があります。私の場合は2つの選択肢(第1号被保険者 or 第3号被保険者)がありました。

  • 第1号被保険者:自営業者、農業や漁業の従事者などや学生で、国民年金の保険料を自分で直接納める人たち

  • 第2号被保険者:会社員や公務員など職場の厚生年金や共済組合に加入している人たちで、保険料は事業主と折半で給料から天引きされて納付しています

  • 第3号被保険者:厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満、かつ配偶者の年収の1/2未満)

(参考) 日本国外・国内へ出入国する方の国民年金の手続き(pdfファイル)

健康保険

国民健康保険制度は厚生労働省が管轄しています。国民健康保険の被保険者は以下3つの種別があります。

  • 第1号被保険者:自営業者や農業者とその家族、学生、無職の方などが対象

  • 第2号被保険者:民間会社員や公務員など厚生年金、共済組合の加入者が対象

  • 第3号被保険者:国民年金の加入者のうち、厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の主婦や主夫が対象

私の場合は3つの選択肢がありました。

  • 国民健康保険(第1号被保険者 or 第3号被保険者)

  • 退職した会社の健康保険の任意継続(継続期間は最長2年間)

国民健康保険と旧所属会社の健康保険として保険料を比較し、安い方を選択するとよいと思います。

参考までに仮に、
国民健康保険(千葉市)、所得金額:1000万円、加入者1名、年齢:40-65の場合、保険料の試算は93万円 (月額7.75万円)です。https://www.city.chiba.jp/other/kenkouhoken/feecalc.html

一方、旧所属会社の健康保険は、退職前は所得金額に対して個人負担率が2.95%で会社負担率が3.95%でしたが、退職後は個人負担分と会社負担分の6.9%となるため、保険料の試算は69万円 (月額5.75万円)となり国民健康保険に比べて月額2万円お得です。

国内銀行口座

# クレジットカードの話もごちゃ混ぜになっていますがご容赦下さい
結論から言うと、最低1つはメガバンクの口座を持つことをお勧めします。
日本に家族を残す身としては国内銀行口座の維持は必須です。ではどの銀行口座を残すべきか?私が考える国内銀行口座の選択基準は以下です。

  1. 海外でも使用できる(ATM、デビットカード、クレジットカード)

  2. 海外通貨が使用できる(マルチカレンシー)

  3. 非居住者でも使用できる

  4. 種々のサービスで使用できる

  5. 手数料が安い

2024年4月の渡米前の段階では、上記基準からSMBC信託プレスティア(以降プレスティアと呼ぶ)+プレスティアゴールドクレカ(付帯の海外旅行保険目的)のみで乗り切れると考えていました。一応盗難時の備えとしてソニー銀行も用意して行きました。アメリカではプレスティアの利用可能アプリサイトが少ない問題に遭遇し、ソニー銀行で代替しました。
https://www.smbctb.co.jp/product/globalpass/mobile_payment/

国内では公共料金の口座振替には某地銀を使用してましたが、非居住者口座には対応しているものの口座番号が変更になってしまい、自動的に引き継ぎができないようでした。そこでプレスティアかソニー銀行に変更しようとしましたが、ここでもアメリカと同じ利用可能サイトが少ない問題に遭遇しました。結局、非居住者対応があり、公共料金で指定可能なのはメガバンクのみという結論になり、プレスティアとの連携や送金手数料等も考慮し、三井住友銀行を選択しました。

公共料金

マイナーな銀行だとほぼWeb申請不可です。出国数月前の時点で以下のリストの明細書を保存しておくと変更手続がスムーズに進められるのでお勧めです。

住所喪失問題

海外転出届の提出によって生じる日本の住所喪失の問題点は、海外に居ながら日本における手続きが困難になることです。例えば、日本の不動産売却、遺産相続、郵便物の受取(クレジットカード更新時)などが考えられます。
海外転出届を提出すると住民票が除票となるため、住民票で日本の住所を証明することができなくなります。しかし、2024年5月27日から海外転出届時にマイナンバーカードを返納する必要がなくなり国外でも利用できるようになったため、マイナンバーカードで住所を証明することができます。

この他の住所証明手段としては以下のとおりです。

  • 国際運転免許証

  • パスポートの住所記入欄(2020年から廃止)

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