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欲しいモノが欲しい

 とにかく暑くて、もうすぐ雨が降り出すなんて思わせぶりな空、エアコンの効いた店内は涼しくて嬉しいけれども、ずっと歩くのは疲れた。

 我が家の次男坊ことチビ介の後をついてずっとぐるぐると本屋の売り場を歩き回っているのだ。
 チビ介は物欲に塗れたと言うか物欲が身にパンパンに詰まっているような子で既に高校生になるくらいまでお誕生日のプレゼント予約がしてあるし、最近はにいちゃんこと、長男坊の大介がおじさんから譲って貰った自転車が羨ましくて仕方ない。自転車、乗れないけれど。

 そんなチビ介を連れて家電量販店に行ったはいいものの、そこにはオモチャという誘惑が所狭しと並んでいて引っ剥がすのに苦労した。秒で壊してしまう破壊王チビ介にオモチャは買いたくない。何なら、ガチャポンも回して欲しくない。
 ならば、本ならばいいよと家電量販店のすぐお隣にある超大型の書店へ連れて行くと絵本なんかに目もくれずにうろうろと歩き回り始めた。本好きの私は本だけはケチらずに与えようと決めているのでその辺が甘い。
 大人向けの模型が付いた雑誌からゲームのアートブック、図鑑に漫画と次から次へと「これがいい」と申請するのを却下してぐるぐると雑誌売り場と児童書のコーナーを往復しつつ周回する。
 模型の車や飛び出す絵本なんてすぐに壊すだろうし、アートブックなんかは塗り絵にされてしまう。阻止せねば。

 ずっとついて歩いていて気がついた。チビ介には、今欲しい物はない。欲しいモノを探して練り歩いている。欲しい物はないけれど、何かが欲しい。と言うか買ってもらいたい。それのみでひたすら歩いているんだ。買ってもらうトキメキを求めて歩いているんだ。
 欲しい物がないのならば、この次に買ってもらう権利をとっておこうなんて提案しても「次」がいつになるのかなんて想像出来ない、ADHD、ASDを併せ持つチビ介にとっては「今、欲しい物はない。欲しいモノが欲しい」のだ。

 結局は、初回限定で安くなっていた特撮怪獣の付録が付いた雑誌を購入。満足そうに袋を持っていた。そして、今特撮怪獣は私の棚でウーパールーパーの模型を抱いている。

 そして、今日同じような親子をリサイクルショップで見かけた。
 お父さんと多分、年長さんくらいの女の子。
「ぬいぐるみがほしいの!」と主張する彼女にお父さんは「◯◯ちゃんは、このキャラクターは好きじゃないでしょ」と却下している。女の子はぐるぐるとぬいぐるみが置かれたコーナーを周り「ぬいぐるみがほしいんだもん!」と駄々をこねる。うちとおんなじ。
 あの子も買ってもらう瞬間のトキメキが欲しいんだ。

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