【短編小説風】吊革を掴んだ後、手を繋ぐのはやめて
「電車の吊革を掴んだ後で、手を繋ぐのはやめて」
初めて彼女にそう言われた時、意味がわからなくて戸惑ったのを覚えている。
色んな人が掴んだ電車の吊革は、侑希にとってはとても汚いものらしい。
彼女は、僕から見ると潔癖症だった。
けど、本人からするとそれは当たり前の価値観で。
その差を埋めることが難しいのは分かっていた。
それでも、僕は彼女が好きだった。
僕より2つ歳下。まだ23歳なのに、細かいことに気がつくしっかりした彼女が。
「靴下のままでベッドに上がらないで」
そう