現役ゲームクリエイターから見たら、ディライトワークス(FGO運営)は無能なのか? 運営編 その2

 本記事は前回記事の続きにあたる。
 それを踏まえた文章となるので、まずは前回記事をご覧いただくことを推奨する(ダイマ)。また投稿が遅れてしまって大変申し訳ない。

 それでは、早速友人AのQ&Aの続きを見ていこう。

・オートバトルと宝具スキップを入れないのは何故?

 実はこれ、下記インタビュー記事に答えが書いてある。

マフィア梶田が切り込む「Fate/Grand Order」。奈須きのこが追求する理想と,やがて迎える終焉のカタルシス 

 バトルアクションや宝具演出は、サーヴァントの持つ最大の魅力の一つであり、キャラを成立させる大きなファクターであるため、それを削ってしまうのは生きたキャラにならない、というクリエイターとしての奈須きのこ氏の信念に基づいた措置というわけだ。

 これはある一定の理解はできる。
 バトルという要素を挟まず、全てがオート作業になってしまったらサーヴァントは「キャラ」ではなく、「自動素材収集データ」というゲーム盤の駒と同義になる。

 将棋の歩駒やチェスのポーンそのものにロマンや性愛を感じる人間は、人類としては早く生まれ過ぎた何かだろう。

 何度も繰り返すがFGOという作品はシナリオやキャラといった「テーマ」部分が重視されている作品である以上、キャラ表現を削るべきではない、という生みの親のイズムを通すのは正しいことだろう。

 また、これは私の個人的見解だが、FGOのバトル部分そのものは勿論、キャラのアクションや宝具演出を無駄と感じているユーザーは意外と少ないのではないだろうか?

 つまり、「キャラを魅せる」表現として「バトル」というコンテンツそのものに不満を抱いているユーザーはあまりいないのでは?

 と思う次第である。そうでなければ、批判の声の一つであるサーヴァント改修のペースに文句が出たりしないはずだ。

 そのため、この不満はまたしてもゲームプレイが周回しかない、という環境が遠因と思われる。

 これはFGOのアクションや宝具演出がショボいからすぐ飽きる、という話ではなく、ゲームをプレイする上でのプレイヤーの動作の話だ。

 現在の周回の主流は「敵にターンを渡さず、宝具3連射による一方的な殲滅」であり、プレイヤーに全く意思決定の余地が介在しない。

 ドラクエのメタスラ狩りすら敵が速攻逃げたり、メラを撃ってきて1ターン逃さずに攻撃できる機会が生まれる、といった僅かながら変化があるのに、FGOはスキルとカード選択ポチポチの全く同じ動作しか発生しない。

 正しく「タンポポを刺身の上に載せるバイト」と同義であり、この行為を「ゲーム」とはとても呼べないだろう。
 だからこそ、オートバトルや宝具スキップの要望が噴出するのだ。

 また実はコレ、人間の脳作用にも関係している可能性がある。
 人間は五感を複数を使う動作の反復は、比較的記憶に残りやすい。
 誰でも覚えがあるだろうが、学校の勉強は教科書を見ているだけでは覚えづらいが、自分で手を動かしてノートに記し、英単語や歴史の年号を声に出し、合わせて印象的な物事や音があったりすると、五感が複数関わるために記憶に残りやすいのだ。

 私も実体験として中学時代、竹野内豊似のイケメンで、女子からはガチでどんな生徒の誰よりもモテていた先生が、未成年の買春で逮捕される直前の授業を未だに覚えている。

 つまりは、FGOの今の主なゲームプレイである「周回」動作である、スキルボタンをポチポチしてからの宝具連射は、目で見て、手を動かして、音を聞く反復動作であるため、記憶に残りやすく、飽きが早い可能性があるわけだ。

 とはいえ、さきのインタビューでは、そもそもFGOというゲームは「周回するもの」という古いメカニクスを基準で作られており、それを破壊するのは難しい、と結論が書かれている。

 つまりは「バトル経験の楽しさ」を提供するのは、このゲームにおいてはおよそ遠い理想ということになるのかもしれない。

 まあだからしょうがないだろ、と恒常的に遊べるゲームプレイを周回以外用意していないのがDWがゴミ運営である所以だが。 

 余談になるが、コンシューマゲームから説明書文化がほぼ消え、代替としてゲーム内でのプレイチュートリアルが登場したのも、人間の脳作用を利用した仕様だ。

 人は文章の方が理解しやすい人、手を動かした方が覚えやすい人、音と一緒の方が覚えやすい人など様々な人いるため、コンシューマの現場では15年以上前から文字情報のみの説明書文化を捨て、プレイチュートリアルを用意して、プレイヤーの記憶に残りやすいよう、感覚へのユニバーサルアクセスを採用したのである。

 ちなみに私が知る限り、(おそらく)引退している方なので名前は伏せるが、これを最初に理論にまとめ上げて作ったのは日本人だ。

 実際にこの方が2001年に書いた仕様書を所持しているが、何故か五感と脳作用に関する生理学見地からチュートリアル画面の仕様を作っている。

 ちなみにこの方、引退直前にユーザーからのメールや電話に対応するサポート担当者向けに資料も残しているが、その内容が凄まじい。

 「人類全体の16%~20%は生来の能力の欠如、もしくは後天的に発生した環境による精神状態により、文意を正確に理解できる能力を持たず、それを他者に伝える能力は人類の半分が平均以下である」という社会学の研究に則って「どういった意見がゲーム開発に有用で、開発現場に回すべきか」という基準を記している。

 その中には、通信ツールの更なる普及と高機能化による表現への簡易アクセス化、それらの手段の人口膾炙によるユーザー意見の氾濫、その結果予想される害意の噴出と開発会社の心理的負担の増加が予想されており、それらに向かい合うゲーム開発会社のマインドセットまで記してあった。

 その部分だけでも要約すると、

・個々人の情報発信が容易になると、ゲーム開発側とユーザー間の距離が近付く可能性が高く、ユーザーは貴方たち(開発側)に情報の開示を始めとした歩み寄りを求める。

・だが、同じように貴方たちが『ね? 事情を話したから分かってくれるでしょう?』と歩み寄りを行なっても、ユーザー側からおそらく拒否される。

・パブリックとプライベートという、発信情報階層が異なる者同士で相互理解のコミュニケーションが成立することは稀であり、また彼らが『ユーザー様』の立場を手放すことは無いと予想される。

・そして社会学見地から、どんなにゲーム開発側が理路整然としていて、誠意を尽くした言葉・文章を作成しても、全体の1/5のユーザーは脳の構造的に理解が出来ない。

・それだけのユーザーが個々人でネガキャンをすることが可能な世界になっていたとしたら、そういった「声の大きいユーザー」と言葉で向き合うのは基本的に徒労である。

・ユーザーの声に耳を傾け、コミュニケーションを取るのはサービス向上には非常に重要だが、それを根本的な「不満点の解決手段」としてはならない。

・ユーザーからの支持はゲームそのもののクオリティで獲得するしかない。
 それが出来ないゲーム開発会社から潰れていく。

 社内資料なのか学術論文なのか予言書なのか区別が困難な資料だが、私が日々送られてくるユーザー様からの様々な貴重なご意見を、生まれた時から兄弟として育った三毛猫と柴犬の動画で昇華できるのは、この資料のマインドセットのおかげだ。

 それにしても、何でこの人はゲーム会社にいたのだろうか?

・虚無期間を作ってるのは何故?

 メインシナリオやイベントの制作が間に合っていないから。以上。
 と、これだけだと友人Aに刺されかねないので、もう少し詳細を書こう。   

 ぶっちゃけDW的には「虚無期間」を作ってるつもりは無いと思われる。

 確かに常にイベントを開催しているわけではないが、合間合間にハンティングクエストや幕間の物語など、小規模イベント系の動きは入れており、完全に運営が停止しているわけではない。

 それにFGOのイベントはシナリオボリューム自体は相当である。
 実はちょっと分析したことがあるのだが、ここ数年のシナリオは、一部を除き大体文庫本1冊くらいの分量を平気で投下している。

 イベントはシナリオが少ないと感じるユーザーも多くいるようだが、皆さんは自然と文庫本1冊をボリューム不足と感じるような、結構な読書家になっているのだ。

 ちなみにメインシナリオは、例えば現時点で最長と思われるオリュンポスに至っては丸々文庫3冊分である。前章のアトランティスも文庫2.5冊分あるので、合わせると小説シリーズを丸ごと読破しているようなものなのだ。

 これらを連発されてもユーザーもなかなかシンドいと思われるので、時々はこういった箸休めの期間が1~2週挟むのも必要だろう。

 また開発側も「文庫本1冊分」のシナリオを「テーマ型開発環境」下でゲームイベントとして再構築し、成立させるのは相当骨なので「開発人員を休ませる」意味でも、これらの期間は必要不可欠なのだろう。

 前々回の記事で語ったが、「テーマ型開発環境」は開発側のアウトプットも特定の開発スタッフ依存なのだ。

 しかも、ゲーム開発は素材や仕様により、それぞれ全く専門性の異なる技能を持つスタッフが必要なわけだが、私の経験上、全部門でそれらのスタッフが複数人用意できていた現場は非常に稀である。

 ある特定部門においては、専門性が高すぎてひとりのスタッフが全ての中枢業務を回している場合の方が多かった。DWもそうとは限らないが、可能性としてはこちらの方が高い気がする。

 FGOは肝になるライターやイラストレーターだって持ち回りで担当しており、そのクオリティには高低があるというのに、DWは常に「100%の出来」をユーザーはもとより身内から求められるわけなので、因果なものである。

 さて、今さらであるが、そもそもユーザー間で使われる「虚無期間」という単語は「何もやることが無い期間」を指すが、この単語を使うユーザーは、実は微妙に文脈の綾が違う2種類のプレイヤーがいる。

 ひとつは、「コンテンツが発生していない」特定ユーザー。
 イベントが終わってもハンティングクエストやサーヴァント強化週間、幕間の物語の一挙実装など、実際にコンテンツ追加はあるが、該当素材をすでに十分持っていたり、対象サーヴァントを持っていなかったりで、コンテンツが発生しない、いわゆる「おま環」のユーザーだ。

 いま一つは、「早期攻略組」
 こちらはまだ絶賛イベント開催中であるが、潤沢な戦力を保持するが故に早々にメインストーリーを読破し、高難易度クエストも突破してしまい、あとはもう脳死周回で足りない素材を集めるくらいしかやることが無い、という人たちだ。

 どちらのタイプも「ある程度戦力の揃った中堅以上のプレイヤー」と言い換えることもできるが、大きなイベントの合間のインターバルは、本来は直近イベントなどで手に入れたサーヴァント育成を、次のメインやイベントを見越して行なう期間、という位置付けなのだろう。

 だが、ある程度戦力の揃った大半のユーザーは育成が面倒なのでやらない。

 つまり、虚無期間への不満は、またしても育成が面倒で、ゲームプレイが脳死周回のポンコツメカニクスが原因なわけである。

 これは個人の素養としてシングルプレイヤー要素の比準の大きいRPGに向いているユーザー、つまり本来はFGOのゲームタイプにマッチした人ほど虚無期間が長くなる可能性が高くなる、という二次災害めいた現象まで引き起こしている。

 育成の過程の「結果」が乏しく、「経験」が楽しくないので、周回用戦力があらかた揃った後は、他のサーヴァントを育てることに興味が湧かない。
 同じ理由で新しいサーヴァントに食指そのものが動かない。
 新しいサーヴァントに興味が湧かないからガチャも引かない。
 サーヴァントが増えなければメインシナリオ、大型イベント以外のイベントは対象外がどんどん増えるので、「自分はやることが無い」期間がどんどん増えていく。

 全て「育成が面倒」というメカニクスからの負の連鎖である。

 DWは「育成が面倒だからこそ、毎日コツコツプレイしてくれる人が増えるはず」とでも思っているのだろうか? そういうのは脳死周回以外のゲーム体験を設置してから言うべきだ。

 繰り返しになるが、「育成」をエンドコンテンツとし、基本的なゲームプレイを「周回」としなければならないのは我慢するが、ユーザーに重いノルマを課せる以上は、せめて単純労働の報酬は相応にすべきだ。

 サーヴァントの性能にはあれほど厳密なのに、なぜユーザーには気を使わないのであろうか? 本当に不思議でならない。

・その他の質問

 友人Aの質問はまだいくつかある。
 実はそれに対しても全て回答を書いていたのだが、割愛することにする。

 というのも、どれも結論はシングルプレイヤー要素の問題である「育成がツラいのに、主なゲームプレイが脳死周回なのが悪い」に行き着いてしまうのだ。

 不動産で「床が傾いてる」だの「通気性が悪いだの」だの「デッドスペースが多い」だのの不満点の原因が、全部「そもそも設計が悪い」に収束するのと同じ理屈だ。

 同じ結論を何度見てもつまらないと思うので、さっさと次の話題に移行しようと思う。

 散々擦っておいて代替案を出さないのは流石にDWに悪いので、私自身の改善案を以下に挙げる。

 ちなみにこれは、私自身のプレイヤータイプの要素により適う形にしたもの、つまりは個人の欲望ダダ漏れ改善なので、友人Aはふざけんなテメーと思うことも多々あるかもしれない。

 おさらいであるが、FGOというゲームはシナリオやキャラといったカスタマー要素が最大の特徴であり、メカニクスのRPGというシングルプレイヤー要素の強いコンテンツは、ゲームプレイに対する「適切な報酬」と「楽しい経験」が必要不可欠、という前提で話を進めていく。

・種火&QPの獲得量アップ

 ゲームプレイの基本が「脳死周回」なのは、もうこの際諦める。
 前述の通り、奈須氏が語ったようにゲーム構造の抜本的改革など出来ないわけで、メカニクスを変えたり、新しく作るよりは環境を変えた方がはるかにコスパが良い。

 つまり、単純に労働の賃金を上げて「結果」を適正にすれば良い。
 ゲームプレイ自体の「楽しい経験」は諦める代わりに、早急にサーヴァントを育てる下地が整っていく「結果」を提供するのだ。

 これは「結果」を消費して、どんどんサーヴァントが育っていくことを「楽しい経験」として疑似認識させる目的もある。本当の「経験」の方はまた別途記述する。

 またこれは「ラストエリクサー症候群」への対策でもある。
 私の周りにも結構いるプレイヤータイプなのだが「リソースが足りない」と嘆くが、金種火や金素材を数百個単位で所持していたりする。

 これはFGOの育成がツラいものであるが故に、いつでもキャストリアのような破格の性能を持つサーヴァントを即時に戦力化するため、必要な素材を十分に確保しておかないと不安なプレイヤーたちだ。
 「未来の人権サーヴァント」のために勿体なくて使えないのだ。

 だが、あらゆる素材が容易とは言わないまでも「目標を立てて確実に入手できる」環境作りさえ行えば、宵越しの素材を持つ必要性は薄れる。

 勿論、それでも使わない人は使わないだろうが、ある程度の「割り切りが可能な環境」は、プレイ促進の一助になることだろう。

 さて、具体的な改善は、アクティブ層の平均マスターレベルを基準としたいが、そんなデータを私が持っているはずもないので、ここは仮設定する。

 まず大前提として「マスターレベル100(AP125)の人が、1週間のうち5日間プレイしてくれれば、星5サーヴァント1体を自動AP回復分だけで育て切れる下準備ができる」調整を行なう。

 なぜ5日間かというと、そもそもこれだけエンタメが溢れ、一つのコンテンツに割ける可処分時間がどんどん少なくなっている現代のユーザーたちに、それだけの価値あるコンテンツを作ってもいないのに「毎日腰を据えてプレイして欲しい」と思うのが間違いだからだ。

 1週間のうち5日間だけでも、目を向けてくれるだけでもありがたいと思うべきだ。

 AP125は24時間で超級クエスト(AP40)を7回行えるが、数が中途半端になりそうなのと、そこまで厳密なAP管理は求めない方針とする。

・AP40クエを1日6回(午前/午後で3回ずつ)
・種火は日/2回、宝物庫は日/4回の周回を5日

 このプレイ内容で「Lv.90かつ、3スキル分MAXにできるQPが貯まる」調整を行なう。

 まず種火。
 現在、星5サーヴァントはLv.90にするのに、マッチボーナスありでも星4種火が377枚(大成功・極大成功含まず)必要だ。
 超級1回で獲得できる種火は9枚だが、銀種火が混じるので50回近く回る必要がある。

 これを1日2回×5日の計10回の超級クエ報酬で1キャラ育て切れるようにする。
 嫌がらせの銀種火は当然削除だ。
 ちなみに枚数がそれだけ落ちるとかではない。そんなもん枠を圧迫するだけだ。

 星4種火の獲得経験値を約4倍化するか、必要経験値を1/4にするのだ。

 よく言われる種火のスタック化の要望は、そもそも必要枚数が少なければ必要ではなく、UIの仕事も増えないので一石二鳥だ。

 次にQP。
 星5サーヴァントはスキルをレベルMAXにするのに、1スキル5544万QP、全3スキルだと1億6632万QPも必要だ。

 宝物庫の周回は礼装バフ無しだと上振れても120万程度。つまり、必要周回数は1スキル46~50回、3スキル分だと138~150回程度。
 種火よりはるかに頭がおかしい。

 これを1日4回×5日の計20回の宝物庫・超級の周回で、3スキルMAX分まで稼げるようにする。1回の周回で8300万程度。勿論、嫌がらせの銀扉は削除。

 というか、そもそも数字がデカくて分かりにくいので、2~3ケタくらいはゼロを削るデノミネーションも検討したい。

・素材のフリクエ確定ドロップ化と用途分割

 次に素材だが、ドロップ率のアップと確定ドロップの設置は絶対だが、具体的なドロップ率の上昇パーセンテージは、ユーザーの所持数データを見ないと何とも言えない。

 しかも、随時新素材とそれを使用するサーヴァントが追加されているため、再臨用だけで全サーヴァント分で302個必要な「混沌の爪」と、14個の「悠久の実」では、同じドロップ率に設定しては、ユーザー環境にも依るが需要と供給のバランスが異なるので、不満が出るのは必至だろう。

 そこで再臨用素材とスキル強化素材はバッサリと分ける。

 つまり、再臨用素材は「ピース・モニュメント」のみとし、他の素材はスキル石と同様「スキル強化のためだけに使用するもの」とするのである。
 当然、今まで再臨に使用した素材はキャッシュバックだ。

 これには2つの目的がある。
 1つ目の理由は、前述した通り、必要な素材の合計数が著しく異なる(=ユーザーの需要が異なる)素材のドロップ率を一律化しても不満が出にくくするため。

 2つ目は「どんなキャラでもスキルが全部使えて、とりあえず戦力として活用できるLv.90キャラにできる環境」をゲームスタート直後のプレイヤーにも提供するためだ。

 リンボマンをせっかく引いたのに、5.5章のフリクエ解放まで鬼灯が稼げ無いので再臨できないとか白けるにもほどがある。

 何度も言うが、サーヴァントはFGOの肝であり、このゲームの根幹だ。その成長に待ったをかける要素など、さっさと外してしかるべきだろう。

 そもそも、キャラのポテンシャルを見せるポイントの導線を短くすることは、FGOのようなカスタマー要素が強く発露する「テーマ型RPG」においては最重要だ。

 テーマ型RPGは「キャラ愛」というカスタマー要素が、シングルプレイヤー要素の「育成」を行なうきっかけになりやすい。
 つまり「推し事」の一環としてユーザーに「ゲームをプレイしてもらえる時間」の創出に繋がる可能性があるからだ。

 その好例が、FF10の敵のバトルタイプに合わせた戦闘だろう。

 素早い敵はティーダ、空中の敵はワッカ、物理攻撃が効きにくい敵はルールー、デカ物キラーのアーロン、長期戦には回復役と限定的な特大火力を持つユウナ、攻守にサポートできるリュッカ、特に使い道の無い角無し。

 敵に合わせて仲間を使い分けることでキャラ特性を理解し、バトルで活躍させ、苦楽を共にするからこそシナリオ方面の演出が活きてくる。

 これはFGOにも当てはまる事例だ。
 そもそも「クラス相性」や「コスト上限」というシステムがある以上、FF10のようなPTメンバーの使い分けは必須であり、ある程度は複数のサーヴァントを育てねばならない。

 メインシナリオという最大のコンテンツを見せるのにバトルが必要である以上、その鍵となるサーヴァントの育成を促すために、ポテンシャルを早めに見せつけ、そこに至るまでのルートを短くするのは必要不可欠なはずだ。

 またこれは「~~システム」のような周回特化編成、言ってしまえば「脳死編成」にさえ、ある程度継続プレイを促す効果がある。

 例えば巌窟王のスカスカシステムは、巌窟王の「黄金律(NP獲得量アップ)」をスキルMAXにしないと安定しない場面がままある。

 そのため、Lv7→8に必要な「混沌の爪」やLv8→9の「竜の逆鱗」のプライオリティが必然的に上がり、それが供給されるイベントやハンティングクエスト、幕間の物語に参加する意欲に繋がる。

 システムが安定しても、今度はより汎用性を高めるために宝具威力アップのためにガチャを引きたくなるかもしれない。

 そこまで直接的に売上に繋がることは稀だろうが、成長導線が容易に引かれていれば、スキル「鋼鉄の決意(攻撃力アップ)」は上げようと思うかもしれないし、そこまでいっても更にフォウMAXや聖杯を捧げてみたくなるかもしれない。

 巌窟王では対応できない敵編成のために、他のサーヴァントを育てるきっかけになるかもしれない。

 FGOというゲームに長く触れて貰えれば、それこそたまたま告知のタイミングでアプリを開いていて、更新されたお知らせで新しいサーヴァントを目にして「あ、このサーヴァント欲しい」と思って、次回のイベントでガチャを引いてくれるかもしれない。

 FGOには他ゲームとは一線を画したシナリオとキャラ的魅力を誇るサーヴァントという存在がある。その存在に触れる時間を最大限に長くすることで、ゲーム内のダイバーシティを促進するのだ。

 逆に言えば「テーマが強いRPG」で、キャラのポテンシャルを見えにくくする今のメカニクスが、どれだけ現代のユーザーとソーシャルゲームに向いていないか、一旦精査する必要があるはずだ。

・カスタマー要素の充足に不要な要素は削除

 前述の通り、シングルプレイヤー要素の充足と「キャラを知ってもらう」カスタマー要素への導線を作ったら、後はユーザーの「推しキャラを作る」過程を妨げているものを削除していく。

 つまりは、カスタマー要素の掘り下げだ。

 まず筆頭がストーリークリア限定キャラの削除と限定ガチャキャラの大幅縮小だ。
 特にスト限はシナリオ内容が知れ渡っている現在においては、ユーザーのサーヴァント入手手段を狭めている害悪以外の何物でもない。

 シナリオが最大のコンテンツであるが故に、ネタバレ要素を極力排したいのかもしれないが、真名隠しは辞めたくせに、何故にスト限には拘っているのか理解できない。

 次に限定キャラであるが、正直多すぎる。
 それでいて最後のPUから2年以上経過するようなキャラもいるわけで、これも長すぎる。

 枠を削るか、適切なPU期間を設けるか、無記名霊基の入手手段をガチャ以外に設けるか、いずれにしても「いつかは入手できる可能性」すら提示しないのは、流石に殿様商売すぎると個人的には思っている。

次に、「コマンドコード」と「霊衣」にまつわるコストの全削除だ。
 特にコマンドコードは、個人的にはFGOで一番頭が悪いシステムと思っている二大巨頭のひとつなので、絶対に行なうだろう。

 そもそもコマンドコードは狙った場面で任意で使えるものではない。
 手札というランダム要素が絡むカードゲームと同じで、複数回実戦投入しないと使用感さえ判然とせず、そこからの試行錯誤の余地があるわけだが、そこにいちいちコストを掛けている。

 カードゲームで「カードの使用感がすぐに判明してしまうと、ユーザーの研究が早急に終わってしまうので、デッキビルド機能に回数制限を掛けましょう」と提案したヤツがいたら、多分その人は次の日から仕事が無くなるだろう。

 確かに特攻系コマンドカードなどは瞬間風速的に「強敵」として設定した敵を容易にブチのめす可能性がある。
 しかし、自分たちでランダム要素を入れておいて、ユーザーがそこで「当たり」を引くのがそんなに嫌なのだろうか? 

「だって簡単に攻略されたら悔しいじゃないですか」とでも思っているのだとしたら、そういう「簡悔」要素が一番ユーザーに嫌われるのである。

 「霊衣」は解説すら必要ないだろう。
 キャラ愛を邪魔する要素など不必要極まりない。

 「だって簡単に使用されたら悔しいじゃないですか」とでも思っているのだろうか? そういう「簡悔」要素が(以下略)

 次に、マスクデータ、及びスキル・礼装周りの曖昧な記述の削除である。
 個人的にFGOで一番頭が悪いシステムと思っている二大巨頭の今一つはコイツである。

 意図的にステータス情報を隠すという手法は確かに存在する。
 例えば、ファイアーエムブレム風花雪月のキャラ好感度やCivのNPCの難易度ブースト倍率がそれにあたるが、これはマスクされていても「バトルでのキャラ性能」や「ゲーム進行」に直接的に関わらず、大きな影響を与えない管理項目であるため、「研究」という遊びが成立するのだ。

 FGOのようにバトルでの最終的なダメージ量やキャラ性能そのものに関わる項目にマスクを掛けるのは単純に不便なだけである。
 ベルウィック・サーガの馬にHPを表示をしない仕様がすこぶる評判が悪いのと同じ理屈である。

 勿論、キュケオーンの「豚化」やブリュンヒルデの「愛する者」特攻など、キャラ個性に準じたものは残しても問題ないが、少なくとも天・地・人・星のステータスの明記とクラスごとのダメージ倍率の変化は削除すべきと思っている。

 表記に関しては「~属性のサーヴァントを〇〇体倒せ」などの、いわゆる「課題式イベント」やマスターミッションのクリア条件に記載されることも多く、プレイヤー自身の管理項目であると運営自ら提示しているからだ。

 それを隠しているのは「研究要素」ではなく、ただの嫌がらせである。

 クラスごとダメージ倍率変化は言うまでも無いだろう。端的にATK詐欺である。

 またマスクはしていないデータであるが、スキル効果や概念礼装の効果がFGOはひどく記述が曖昧であり、これも要改善項目である思っている。

 例えば、FGOは「超強力な単体攻撃」という同じ記述でも、キャラによって宝具攻撃力の倍率が異なる。

 実はこれ、コンプラ的に大丈夫なのかと心配している箇所でもある。

 同条件のサーヴァントと同じ記述の宝具なので、当然同程度のダメージが出ると思ったのでガチャを引いたのに、このキャラのダメージは明らかに低い。つまりDWの記述詐欺である、なので返金してくれ、という訴えがまかり通る可能性すらある。

 そういった火種を消すためにも、攻撃力100の全体宝具、攻撃力150の単体宝具、など数字で表すことにするのがベターであろうと思われる。

 これはユーザーにも分かりやすい数値を提示することで、ユーザー間でゲーム上の共通言語・規格が生まれることで情報交換がしやすくなるし、強化クエに対しても反応がしやすい。

 カードゲームやMMORPGの性能調整が話題として盛り上がるのは、分かりやすい指標が数字なりで提示されるからだ。
 「強化クエで宝具攻撃力UP!」の文字だけで何を盛り上がれというのか。

 また記述の改善に関しては、これはスキルの倍率や礼装、コマンドコードなどゲーム上効果を発揮するあらゆる要素に同様に行なうべきだろう。

 特にスキルの効果倍率表記は、レベルを上げる毎に効果の変化が一目で分かるので、「楽しい経験」に昇華する可能性が高く、またカスタマー要素の充足にもなる。

 あと本当に個人的な感想だが、高速真言スキルの「自身のNPをものすごく増やす」などといった、小学生の観察日記レベルの幼稚な表現が非常に気になる。

 私はシナリオの巧拙に口出しできるような立場の人間では無いが、ゲーム内文言のライティングはある程度経験があり、ゲームテキストのような「説明文」を作成・監修する時は、少なくとも「ビジネス文章として違和感がない」を基準としている。

 これは例えシステム的なゲームテキストであっても、世界観を形作るファクターの一つと考えているからだ。
 ダークソウルで「ハベルの指輪」に「装備重量をものすごく増やす」と書いてあったら色々台無しである。

・高難易度クエストの常設

 さて、ここまでで「適切な報酬」「カスタマー要素の掘り下げ」の提示を行なってきた。

 そして、ここからがいよいよ問題の「ゲームプレイの経験」に関するものだが、実はコレ、前述した2点のような「ある程度正しい方向性」というものが存在しない。
 というか、そんなものがあればクソゲ―などはそうそう生まれはしないだろう。

 ぶっちゃけ、個人的には「色んなキャラを育てることが出来て、さくさくとシナリオ進行が可能になることが、FGOというゲームの楽しみの全て」の気がしている。

 が、メインシナリオがご覧の有様なので、敢えてコンテンツを作るとすれば「育てたキャラで強力な敵に挑む」しかないであろう。

 つまりは、今まで実装された「超高難易度クエスト」と「メモリアルクエスト」の常設化である。

 「超高難易度」は一応イベント扱いだが、付属シナリオは導入とEDくらいだから、奈須氏の語る「一期一会を大切にする」方針にもギリギリ引っかからないのではないだろうか?

 勿論、これは「ゲームプレイに対する報酬が適正化」され、色々なサーヴァントが育てやすくなった上での話だが、超高難易度クエストはどれも「ガチで難しい」ので、シングルプレイヤー要素の強いユーザーにとっては、格好の研究材料になるだろう。

 その情報交換でユーザー間の交流や盛り上がりも期待できる。
 ユニークな攻略を思いついたプレイヤーが話題になったりもするかもしれない。

 いずれにせよ情報が巡り、ユーザー間の研究が促進されれば、以前の超高難易度イベントのように、プレイヤーの大部分が某氏と同じ表情で「なんだろう・・・アルジュナ・オルタ前提の編成やめてもらっていいですか?」と真顔になる場面も減るかもしれない。

 メモリアルクエストは簡易的な「強くてニューゲーム」体験用だ。
 実装当時は猛威を振るった第1部6章のバスターゴリラを、ハートの弓でしばく現在のエウリュアレの雄姿に、ジェネリックアステリオス化したプレイヤーたちは多かった。

 そうでなくともシナリオボスの類は、シナリオの最先端にいるプレイヤーは、当時実装されていなかったサーヴァントで戦うことができないので、SEKIROのボスモードのようなシステムを入れるのは一つのコンテンツとしてありだと思う。
 「パイセンと行く人理修復の旅」をやりたいユーザーだっているのだ。

・終わりに

 さて、またもや14000字も使ってツラツラと、しかもアホみたいな改善案まで書いてしまったが、個人的にはメカニクスの改善にはあまり期待していないし、そこまで望んでいない。

 何故なら私自身は「FGOプレイヤー」ではなく「TYPE-MOONファン」であり、奈須きのこ氏をはじめとしたライター陣のシナリオとFateワールドの広がりを定期的に読めればそれで満足だからだ。

 開発者であるがゆえに、ユーザーのゲームプレイに対して真摯ではないRPG部分はやる気が起きないのだ。 

 勿論、ユーザーの声を取り入れれば必ず良いゲームになるとは限らない。
 数多の対戦格闘ゲームやカードゲームがそうであるように、ノイジーマイノリティの声を取り入れ過ぎて、ダメになってしまったゲームというのも当然存在する。

 そして逆に、開発者の信念を突き通して大成功を収めたゲームというものも存在する。

 実際「ゲームに物語の力を取り戻す」という信念で作られたFGOは成功し、世間の話題性も凄まじいなものがあったが、ソーシャルゲーム業界の全ての開発現場に与えた衝撃は、もしかしたらそれ以上かもしれない。

「テーマを主体とするゲームならば、かくあるべし」という新しい『基準』まで作り上げてしまったほどのゲームだなのだ。

 だが、それは何度も言うようにFateの「テーマ」の力だ。
 「奈須きのこ」という天才が生み出した、文字通りの「特異点」だ。

 その一世を風靡したコンテンツの成立に「メカニクス」はほぼ関与していない事実を、DWは今一度確認する必要があるだろう。

 勘違いしないでもらいたいが、これは別に「お前らは無能だと自覚しろ」という話ではない。メカニクスを変えるチャンスだという話だ。

 これはゲーム業界に限った話では無いので、私以外にも経験がある人が多いと思うが「成功している者/事には、正論すら通じない」ことが多々ある。

 今は時流に乗ってるからプラス評価がマイナスを覆い隠してるけど、ここは直さないと不味いですよ、と現場がいくら言っても、偉い人たちが聞いてくれないのである。

 ましてやFGOの開発現場は、原作者が開発そのものに関わり、おまけにパブリッシャーまでいる。しかもそのパブリッシャーたるアニプレは、トップの岩上敦宏氏からして「空の境界」を始めとしたTYPE-MOON関連作品のヒットで成り上がり、社長にまで昇り詰めた「TYPE-MOON」至上主義者だ。   

 我の強い原作クリエイター集団、そこと会社のトップから懇ろな関係のパブリッシャー。そして、世界規模で売れたコンテンツの実績。
 そんな状況の中のディベロッパー、つまりDWの意見などこれまで鼻くそ扱いであったことは想像に難くない。

 が、昨今の評判や売上ランキング推移を見るに、FGOはコンテンツとして明らかに下降線だ。

 原神やウマ娘といった、非常に高品質なビジュアルというテーマを持ち、「キャラ愛を注ぎやすい」カスタマー要素に優れたメカニクス(「ゲームとしてのメカニクス」は脇に置くが)を持つゲームの登場により、FGOにおいても最大の特徴であったカスタマー要素部分に惹かれていたユーザーを食いちぎられたからだ。

 今更キャラが3Dになるわけもないし、ライターだって金を入れてスイッチを押せばシナリオが出てくる自販機ではないので、カスタマー要素の新追加はもう限界だろう。
 ならば、メカニクスの方である程度カバーするしかない。

 いち型月ファンとしてもいち開発者としても、FGOというコンテンツがこのままフェードアウトしていくのは寂しいので、「貴方たちの今までのやり方はもう通じなくなったんで、ちょっとDW(メカニクス)の意見聞いてくれませんか?」と提案できる人間がDWにいることを願ってやまない。

・蛇足と次回予告

 実は次回の記事で、Game-iという虚偽情報サイト(詐欺サイト呼ばわりはあまりにも無礼、と友人Aに怒られたので形容を変更)について書くつもりだった。

 だが、よくよく考えたらその証拠が「いや、私は実際の売上知ってるし」しかなく、かといってそれを明示するわけにもいかないわけで、それではただの言いがかりになってしまう。根拠の無い誹謗中傷でしかない。

 そこで大変申し訳ないのだが「明確な証拠が出せないので没」ということにさせていただきたい。これも全て私の浅慮のせいである。
 重ねてお詫び申し上げます。

 さて次回であるが、実はちょっと引っ越しの予定があるのでいつになるか分からない。

 内容はおそらく文系プランナーとしての仕事紹介として「ボイス編」を書くと思われるが、FGOについて書き足りたないことがあれば、そっちにするかもしれない。とにかく何も決まっていない。

 ちなみに引っ越しの原因は、GW前に風呂の排水管が壊れたのは書いたと思うが、その明確な要因になった住人に、何故か私が原因だと言いがかりで絡まれて、逃げるが勝ちを決め込む次第である。

 超大音量の「うっせぇわ」や「踊」が流れてくる部屋だったので嫌な予感はしていたが、本当に日本語が通じないヤバい人だった。

 おそらく例の資料にある「言葉が理解できる脳の機能がない16~20%」側の人間だろうが、こういう人間が存在する、と知識で知っていると行動も早くなるものである。

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