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スペツィア戦で露呈したミランの課題【セリエA】

昇格組のスペツィアに完敗を喫したミラン。一番の敗因はスペツィアのハイプレスに対応できず、ビルドアップが手詰まりになったことにありました。

ビルドアップが上手くいかない

イブラへのロングボールが増える

セカンドボールを回収される or つながっても単発な攻撃に終わる

押し込まれる
といった展開が続いたのです。

今回はスペツィア戦で見られたミランのビルドアップのパターンをいくつか紹介しながら、その問題点を解説していきます。

パターン1:ダブルボランチが縦に並ぶ

シーズン序盤はダブルボランチが横に並ぶ形でビルドアップを行っていたミランですが、12月の終わりくらいからダブルボランチが縦に並ぶようになってきました。

ダブルボランチが縦に並ぶ狙いとしては、ベナセルが受けた時にすぐ縦のケシエに付けてボールを前進させる、もしくは

CBがSBにパスを送った際に、SBの前のスペースに走り込んで縦パスを受けることにあると思います。

しかし、スペツィア戦では、CBからのパスを受けたSBはすぐに相手のプレスに遭って前を向けず、縦に走り込んだケシエにパスを送ることはできませんでした。また、横パスを送ろうとしても、ボランチのベナセルはピッチの中央にポジションを取っているため、SBとの距離は遠くなっています。距離が遠くなるとパスをカットされる危険が高くなりますから、SBは横パスを送る選択もできず、CBにパスを戻すしかなくなります。こうしてビルドアップが手詰まりになったのです。

もしダブルボランチが横並びならば、この問題は解決できます。SBがCBからパスを受けた時に、ボランチの片方(図ではベナセル)はSBから近い距離にポジションを取れるため、カットされる恐れなくSBからの横パスを受けられます。そして、ボランチは前を向いた状態で横パスを受けるので、前線の選手に縦パスを送ることができるのです。縦を塞がれても、もう一人のボランチに横パスを送る選択もできます。

このように、横並びのダブルボランチはSBの横パスを近い距離で受けられる、言い換えればすぐにSBをサポートできることが大きなメリットです。しかし、最近のミランはダブルボランチが縦並びになっているため、その利点を生かせず、ビルドアップが手詰まりになっているのです。

パターン2:ボランチの一角がサイドに流れてくる

パターン1ではCBからSBへのパスが通った前提で話をしましたが、スペツィア戦ではそのパスすらあまり通りませんでした。その理由は、SBのポジション取りが高く、CBとSBの距離が遠かったからです。そのため、ボランチの一角がサイドに流れてCBからのパスを受け、SBに縦パスを送るといった形が多く見られました。

しかし、この場合もパターン1と同様の問題が発生します。CBからSBまではスムーズにパスが通るのですが、SBは相手のプレスを受けて前を向けません。横パスを選択しようにも、ダブルボランチの一角はサイドに流れているので、もう一枚のボランチ(図ではケシエ)までの距離が遠く、横パスを選択することはできません。結局SBは後方にパスを戻すしかなく、ビルドアップが手詰まりになるのです。

パターン3:ボランチの一角がCBの間に落ちる

パターン1とあまり変わりませんが、縦並びのボランチの一角がCBの間に下りたパターンです。スペツィア戦ではベナセルがCBの間に下りて3バックを形成する場面が多く見られました。

この場合もパターン1.2と同様の問題が発生します。3バックになることによってCBからSBの距離は近くなりましたが、ボランチはケシエ一枚となり、SBとボランチの距離は遠くなっています。またしても手詰まりです。

この問題はトップ下のチャルハノールが下りてケシエとダブルボランチになることによって解決できます。この形はスペツィア戦でも数回見られました。

まとめ

ピオーリが取り組んでいる縦並びのダブルボランチは、縦パスのコースを増やすといった本来の目的とはかけ離れ、逆にビルドアップを難しくしています。結果としてスペツィア戦やアタランタ戦のように、ハイプレスを受けるとイブラへのロングボール頼みになり、リズムを失ってしまうのが最大の課題と言えます。この敗戦を機にビルドアップが修正されるのを願うばかりです。

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