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詩・ショートショート

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2022年10月の記事一覧

発明好きな時計屋【約2000字のお話】

うちの近所には、小さな時計屋がある 住宅の1階が店になっていて 老舗感満載の個人店だ しかし前から、営業時間に疑問を抱いている ドアに書いてあるのは 【10:00~19:00 月曜定休】 なのに11時でもシャッターが閉まっていたり 月曜日でも開いていたりするのだ いくら自営業とはいえ、自由すぎでは…… そんなある日、腕時計が壊れた これを機会に、行ってみることにした ******* その日は仕事が長引き、到着したのは19時半 しかし、店の明かりはついたままだ 「すみ

スタンプラリー 【約1000字のお話】

この前、歴史資料館に行ったんです 小さい頃に何度か行ったことがあって 急に懐かしくなったというか……まあ、暇だったんですね その資料館は、町のはずれにあります 古いし、その日が平日なのもあって 僕が行ったとき、車は1台も無かった そういうもんだよな、と気にはとめませんでした ***** 扉を開けてすぐ右側にある受付で、入館料を払います そのとき、きれいな黒髪のお姉さんからこう言われたんです 「スタンプラリーやってるんですけど、どうですか?」 鈴のような、きれいな声で

黒猫の紅茶 【約1000字のお話】

ハロウィンの10日前 友人から手紙が届いた 一緒にティーバッグの10個入パックも入っていて パッケージには音符を抱きしめる猫が描かれている ”紅茶好きの かなちゃんも唸る味……かはわかんないけど笑 きっと、喜んでくれるはず!” 弾んだ文字を見ながら、心も弾んでいくのを感じた ***** 早速袋を開けると、タグが普通と違うことに気づく 黒のジャケットに黒の蝶ネクタイを着こなす黒猫が 背筋を伸ばして立っているのだ こういう商品があることは知っていたけど 実際に手に取る

コンビニ 【約1000字のお話】

◯月△日、天気は曇と晴れの中間 私は友人との待ち合わせ場所に来ていた しかし、本来の時間は30分後 つまり、早く来すぎたのである さすがにスマホで潰せる時間でもないし 近くのコンビニで飲み物でも買うことにした ***** この辺は馴染みがなかったが 比較的中心部だから、コンビニはすぐに見つかる そうなると、1軒目では時間の潰しようがない ということで、少し足を伸ばして3軒目に入ることにした やや小さく、他よりも若干古い角地のドアを 何の気もなしに押したのだった *

お惣菜コーナーにて 【約1000字のお話】

ああ、今日は仕事が立て込みすぎた。 昼食もままならず、縮んで干からびた胃を抱え、夜道を歩く。 晩御飯はどうしようか。卵と冷やご飯はあるからオムライスはできるけど…… うん、面倒。スーパーでお惣菜を買って帰ろう。 ***** 閑散としたスーパーの中を、お惣菜コーナー目指して歩く こういう日はガッツリしたものが食べたい カツ丼、天丼、カツカレー 豪華な弁当とか、残ってるかもしれないな ちょうど値引きもされてるだろうし ビールと一緒に……ゴクリ ***** お惣菜コー

ネジ 【詩】

ネジがはずれない 寸分の狂いもなく 収まっているから というわけもなく 中がひん曲がって がんじがらめだと 土塊が言っていた ポンと抜けたまま 無くなるよりマシ そう続けてたけど 錆びついてるのを 保持していたとて 何になるとでも? 土塊は口を閉ざし ネジは動かぬまま