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『ジャングルの夜』第二話

 十五時ちょうどぐらいにホテルへ帰り着いた千多は、あてたばかりのパーマが取れないように体だけシャワーを浴び、眠りについた。ほんとうならここから六時間は眠りたいところだが、夕飯の時間を考えると一時間半で起きなければならない。横になると、到底むりに思えるほど体は重く、深い眠りに引き込まれた。

 それでも、日頃勤勉な労働者としての生活をすり込まれた体は、キッチリとアラームの音に反応して目覚めた。
 千多がインスタントのコーヒーを入れ、一服している間も、同室の二人はいびきをかいて、まったく起きる素振りを見せなかった。
 集合場所で、寝ている同室の人間を、「置いてきた」と言うわけにもいかないので、千多は、 「起きろー」と大きな声をだした。その声に反応して、千多よりはいくらか年下だが三十は過ぎた男が起きて、一瞬状況を思案したような間をおいた後、隣のベッドでまだいびきをかいている二十歳そこそこの人間の太ももを"パチン"と叩いた。
 二人が準備をしている間に、千多はもう一本タバコを吸い、残ったコーヒーを飲みきった。

 みんなに合流すると、似合っていたので笑われることもなく、副社長だけが、「どれぐらい時間かかった?」と千多のパーマに興味を示し、自分もあてにいこうかと思案した。
 夕飯では数名がハメを外しひどく酔っ払った。同室の二十代の男が泥酔し席でゲロを吐いた。お開きになるまで隅の方で寝かしていたが、そのまま捨てて帰るわけにもいかず、同じ部屋の年長者ということでなんとなく千多がホテルまで連れて帰る雰囲気になった。

 ビニール袋を片手に、タクシーで酔っ払いをホテルまで連れて帰ると、千多はこのあとどうするか少し迷った。まだ二十時をいくらか過ぎたところだった。自分とこの酔っ払い以外はみな二次会へ行っている。そこへ合流するべきか、すこし離れてはいるが沖縄市の方まで行けば、旧知の人間がいる。それに会いに行くにも遅すぎるという時間ではなかった。ひとりで自由に沖縄の街を探索したっていい。

 問題は、十時間の労働後に長距離の移動を経て、気持ち程度の仮眠をとっただけの肉体は積極的になにかをしようというには疲れすぎていた。もう若くないことは分かっていたが、このまま寝てしまうのはもったいないと思うぐらいには、まだ若い時の感覚が残っていた。

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