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【考察キッチン】1巻総扉絵と嘘予告【吸血鬼すぐ死ぬ】

先日マシュマロにて、吸血鬼すぐ死ぬの嘘予告についての話題がありました。本編と嘘予告の関係に関する仮説です。この記事は、そのお返事になります。

※引用によるネタバレ:~17巻

まずはマシュマロ本文

”ざらめさんこんにちは!いつも素敵なロド考察などたくさん見させていただいてます。
アニメから単行本を買い最近本誌勢になった新参者なのですが、1巻の総扉からロナドラの波動を感じてしまいました。
*説明のために、作品タイトル→吸死 ドラルクの諢名→“吸血鬼すぐ死ぬ”としてます
というのも、1巻総扉絵は「吸血鬼すぐ死ぬ」と書かれた扉を開けて帽子片手のロナがその先へと進むカットです。私はこれを見て吸死の主人公はドラルクなのにどうしてロナだけ(しかも背中)のカットなのだろうと初めは不思議に思っていました。
このイラストを更に注視すると、ロナルドが入る扉の向きは右綴じの単行本のページ方向と同じで、ロナルドが進む向きと読者が漫画をめくる向きが一致していることがわかります。つまりロナルドも読者もこの「吸血鬼すぐ死ぬ」の扉をくぐっている事を意味しているのでは?と考えました。
ここで吸死世界における吸血鬼達の行動パターンを思いかえすと、彼らは基本「我が名は吸血鬼〇〇!」と自身の特徴を名乗り、その名乗りの範囲内で強大な力を発揮します。もちろん必須ではないのでしょうが、名乗りによる能力の説明はメタ的にも重要です。
扉の名前が名乗りと同じ効力であると見なせば、あの扉をくぐることは“吸血鬼すぐ死ぬ”の能力下に入るということ、つまりドラルクの力が発揮される世界に入ることと同義です。つまりロナルドは一話が始まるその前からもうドラルクの力の影響下に入っていたと言えます。
アカジャで反転ドラルクが没られていたのも、すぐ死ななさそうな反ドラは“吸血鬼すぐ死ぬ”の影響下から外れてしまう(=ドラドラコンプライアンス違反)からだと思われます。
結論として。全部勝手な想像ですが、ロナルドが“吸血鬼すぐ死ぬ”の影響下に入った世界線が本編で、そうならなかった(=ロナルドがドラルクの城に行かなかった)世界線が嘘予告なのかな?と考えています。1巻総扉で帽子のストラップが見えていないのも、両方の世界線の狭間にいる暗示とか…?
吸死という作品自体がドラルクの能力そのもので、ドラの能力の中に初めて踏み込んだのがロナだと考えると、この二人の出会いに途轍もない運命を感じています。とてもロナドラです。
長くなりましたが、よろしければぜひざらめさんのご解釈をお聞かせいただければ…と思います。失礼致しました。”

時間遡行と記憶喪失を伴ってはいませんかね

 なんか思ったんですけど、その場合ドラルクって時間を遡ってるし記憶を失ってませんかね? いや、これはマシュ主さんの仮説に全身全霊でノリに行った場合の話なんですが……


吸血鬼の能力発動の要件

 まずですね、吸血鬼の能力ってプランちゃん回(207死)やへんなの能力が問題になる各回(8死/43死/123死/159死/201死/216死)がわかりやすいんですけども。術者のイメージの具体性と、術者の能動的な欲(望み)の組み合わせが必要ぽいんですよね。

変身するときは対象を強く明確にイメージすることが肝心です

『吸血鬼すぐ死ぬ』17巻207死

左様 エッチなこと考えたリビドーで… 
このように変化も保持も自由自在となるのです

『吸血鬼すぐ死ぬ』13巻159死

(なぜ私はこのような台詞を引用しているのだ……?)
へんな親子のHTPは多分一例で、要は「必要な内容」「心からの興味関心」を繋げることで、自分の適正を超えて能力の範囲を拡大できるってことかな、と。つまりは、意欲というか、能動的な意思です。

能力の素養があったとして「こうなって欲しい」というドラルクの意思と、具体的なイメージ。動機とビジョン。これが存在しないと始まらないってわけです。
マシュ主さんの仮説では嘘予告が「能力の影響がない状態」ですから……嘘予告の流れをドラルクは望まず、故に本編の状態が生じたことになります。

嘘予告と本編の最も大きく主たる違いは、『人間と吸血鬼の対立具合と勢力図』自体です。
対立が鎮静化していなければ、ドラルクが日本でジョンと暮らし始めることもなかったでしょうし、となればロナルドも退治にやってくることができません。それ以前から変化していることになる……規模の大きい能力ですね。

嘘予告ドラルクの行動

そしてもう一つ、嘘予告世界のシチュエーションです。

退治人ロナルドの前に現れた奇妙な吸血鬼

『吸血鬼すぐ死ぬ 公式ファンブック 週刊バンパイアハンター特別増刊号』14p

という説明書きがあるように、嘘予告のドラルクはどうも”何らかの目的”があって自らロナルドに接触したようなのです。(前述したように、ドラルクが日本に拠点を持たないと考えると、ロナルドと出会う為にはドラルク側から来なければならないのはわかるんですが……それはあくまでもメタ視点であり、ドラルク視点では「能動的に接触した理由」が存在することになります)

本編での法則から、そのように吸血鬼が能動的な望みを持つ場合には、その望み(目的)が能力として周囲に影響を与えるということは有り得る……と言えるのですが。

「目的のために”人間との協力”を手段として選ぶ」という嘘ドラルクの行動……。ここなんですよね。

これが、「人間との協力関係」とは別の何かに「目的」を置いている印象があるんです。

手段と目的

 電車に乗る人にとって、電車は手段であって目的地じゃない、みたいな話です。元々電車大好きloveな人を除いて、電車は大体「手段」として乗られますね。手段として選ばれたものは、大抵が「目的そのもの」ではない

故に、嘘予告ドラルクが「人間との協調」を手段としている以上、「人間との関係」は目的そのものではない。

とすると……。
ロナルドと出会う前の段階で、本編世界のような……

「比較的人間が優勢な社会システムに落ち着き、対立が沈静化した世界」

嘘予告ドラルクの能力(イメージと欲求)から生じた、というのはなんとなくスッキリしません。
嘘予告と比べると、本編では吸血鬼が畏怖されてないのも気になりますね。畏怖欲は本能のようなものらしいので、本能より「対立解消」が優先されたってことになりますし……。

出会った後なのでは?

出会う前では不自然、ということはですよ。

ロナルドと出会って行動を共にし始めた後に、突如”目覚めた”ということならいいんじゃなかろうか。

そもそも、ドラルク自身が「嘘予告世界を本編世界のように変える」ような、人間と吸血鬼の対立の在り方自体を変えるような規模の大きい能力を持っているのなら……。その自覚があるのなら、ロナルドに協力を求める必要もありません。つまり1巻嘘予告時点でドラルクにそのような能力(もしくはその自覚)はない。

ドラルクに大層(大規模)な能力がないからこそ嘘予告の出会いが成立します。
けれども、出会った後ならばそのあたりの辻褄は崩れません。
 「何らかの目的」のためにロナルドと行動する中で、突如”目覚めた”ということならば、話が通る。

 新たな刺激によって出てきた新たな望みが素養とマッチすれば、能力が発現してもおかしくないわけです。やったぜ。

そうして能力が発現した時点から本編の世界に踏み込んだと考えると、ロナルドとドラルクが出会ったしばらく後から、過去に戻ったことになりますね。

その経緯を前提として本編を読みますと、妙なのが本編ドラルクの無垢さです。

<ドラルク>
死ぬってそんなに怖いかねぇ?
<ヨモツザカ>
よみがえれる貴様に分かるものか
死の恐怖とは喪失だ

『吸血鬼すぐ死ぬ』12巻137死

 余りに「死の喪失」という概念に実感がないですよね。嘘予告は物騒な世界観ですし、不思議と登場しない人物がいたりして不穏な上、ロナルドに至っては「死」が確定する煽り文まで入っています。

ロナルドの死、そして衝撃のリブート!!!
激闘の氷笑卿編クライマックス!!!

『吸血鬼すぐ死ぬ』12巻

そしてドラルクは心臓を預ける(一体化する)ことでロナルドを蘇らせている。自分の身を賭して死の喪失に抵抗したわけです。こんな記憶を持ったまま過去に戻っていたら、本編ほど「死の重さ」に無垢でいられる筈がありません

この矛盾を同居させる為には、記憶を失っている、と考える方が良さそうなんですよね。

むしろそれも能力の一部という見方もできます。嘘予告ドラルクが、「死の喪失を忘れたい」と求めたのかもしれません。

もしロナルドの死がトリガーになり、ドラルクが世界の在り方を変え、記憶まで失ったのだとしたら、それは……いや、それは……???え……?ドラマティックどころの話ではないですが……?

そういう目でみると、12巻の嘘予告で服装が変化したロナルドくんが、13巻の嘘予告ではそれ以前のものに戻っていて、時制が繋がってないようにも見えますね……?🤔


と、いうことで『吸死がドラルクの能力で生じた世界線だった場合』のパターン1でした!


どのように考えを「進める」か?

まあ、嘘予告は本当にいろんな捉え方ができるので、可能性だけを語るのでしたら他にも考え方は無限にあります。
そういう、「どうとでも捉えられる」と感じてしまうときに……ひらめきや気づきに対し「本当らしい納得感」を得ながら考え進める為には、「考察材料にしている要素が、作中でどのように扱われているか?」をよく咀嚼するのがおすすめです。

今回のマシュ主さんの場合は、「ドラルクの能力」、つまり「吸血鬼の能力」ですね。

本編上ではドラルクはしょぼい変身と再生以外何もできませんし、自分の能力がコントロールできていない分、それについて解説するのもあまりできません。
ですが、へんな動物やその父、マイクロビキニやゼンラニウムなど、能力の使い方は置いておいて、自分の能力について解説できるほどにはコントロールできるタイプもいるわけです。

そういう彼らの言葉であるとか、能力を使う時の描写に注目することで、「ドラルクの能力なのでは?」という仮説に「だったらどういうことになるんだ?」という発展性を持たせることができます。

そして「吸血鬼の能力」についての考察を進めると、それは派生世界全般に通ずるものですから、嘘予告の世界の考察を進める助けにもなるわけです。

今回はロナルドとドラルクの間にあるエモに注目している話題でしたし、「解釈を聞かせてください」というリクエストでしたので、「そういう視点で見る場合、私だったらこう仮説を発展させるかな〜」というパターンをお見せするつもりで文章を書いてみました。

もし、マシュ主さんの意図に反する回答でしたら申し訳ないのですが、楽しんで頂けたら、また、ご自分の考察を練る際の参考にして頂けたら幸いです。

一巻総扉絵

とにもかくにも、話のタネである一巻総扉絵の話をしましょうか(おそい)。とりあえず見た通りの要素を確認していきます。
構図は「あおり」「逆光」「背中から」のアングルと、迫力のある要素が組み合わさっています。格好良く、これから何かが起こるというドラマティックな雰囲気です。そして、

・扉に嵌め込みガラス・看板の端が見られること
・扉の開く向き

↑から考えて、これは「事務所の中から外へ出発する姿」として読み取れます。さらに暗がり、入り口の枠の上の壁に「The Vampire dies in no time」と文字がある。ロナルドくんが扉を潜ったその向こう側に、ドラルクの存在を想像させる絵作りです。
事務所の外にドラルクがいる、ということは、これは「ドラルクと出会う前のロナルド」ですかね。
故にロナルドは1人だし、事務所側も留守にする関係上「暗い」のでしょう。2死で勝手に電気をつけて、明るい事務所で「おかえり!」と出迎えていたドラルクを思うと、暗い事務所、というのは象徴的です。
 イラストの空間の明暗は、以前のロナルドの日常を正しく描写していると同時に、彼がこれから出会う「明るい世界」を思わせるようです。

……?正直この時点で感動的扉絵では……???
夜の住人であるドラルクとの出会いは、ロナルドくんにとってはこんなにも眩しく明るいもの……参ったね…。

ただ、「留守にした事務所」の電気消すのは当然のことなんで、それが特別「暗い」とか「足りない」とか、そういう認識はなかったかもな、という印象も同時に有ります。
暗がりに紛れた「The Vampire dies in no time」の字のごとく、ロナルドくんは、気付かぬ内に「考えてもみなかった明るさ」に足を踏み入れたのかもしれません。

ドラルクにとってロナルドとの出会いが「留守にした事務所」のごとく暗いか?て言われると違う気がしますし、本当にこの扉絵はロナルド視点というか……「事務所視点」?という感じがします。事務所がロナルドを見送っている。そして2巻の総扉絵では、明るい事務所でドラルクとジョンとロナルドがゲームしている様子が描かれるんですよね。しかも、天井の構図から。

やっぱりこれ事務所視点じゃないですか?
いや、今思いついたんですけど。

解釈のバランス

マシュ主さんのご指摘に主人公はドラルクで……という部分がありましたが、その点に関してだけ……ひとつ。盆ノ木先生は、ロナルドを主人公として扱っていらっしゃいます。(ドラルクもです)

なのですが、「コンビ同居ギャグである吸死の1巻総扉絵がロナルド一人の構図」というのは、やはり注目すべき点だと私も思います。

ロナルドがいるなら、ドラルクも概念的にそこにいるように解釈したくなる。

例えば1死。「ロナルドがドラルクの城まで行って2人が出会うこと」が要旨でした。「すぐ死んでしまう吸血鬼ドラルク」というインパクト含め、読者は概ねロナルド視点で物語を読むことになっています。そして2死では逆に、ドラルクがロナルドの事務所までやってくる。

そういう双方の行動が吸死ではバランスが取られているのですよね。

一方のロナルド、一方のドラルクという風に。

1死での「地元民が町おこしに使っているのを否定できないドラルク」と、2死での「マスコミの期待を否定できずコンビ宣言してしまうロナルド」という対比もあります。

そんな似ている部分が描かれることもあれば、似たシチュエーションで真逆の思考や行動をとることもあります。

ドラルクがギルドに連れていかれることになった回と、ロナルドが新年会に連れていかれた回も対比になっていると踏んでいます。
ドラルクは「歓迎されるつもり」で、逆に自分が余興の景品扱いをされたりしましたよね。

ウアアーーッ
私の運命が余興に!!!

『吸血鬼すぐ死ぬ』1巻9死

新年会では逆に、ロナルドは歓迎されない前提で話したりもしました。そして会場でも自分から話かけることはせず、壁際に立ってやりすごそうとした。ドラルクとは行動が逆です。
加えてまた、「余興の景品」に運命を握られることになります。(またもロナ戦関連)

あらすじ
スゴロクに勝ってロナ戦(景品)を回収しないと一族に城爆破がバレて詰む

『吸血鬼すぐ死ぬ』3巻25死

そして最終的にロナルドは、思いのほかの大歓迎を受けます。(やっぱりドと逆)

他にも色々ですが、吸死はロナルドが何かやったら、ドラルクも似た状況に見舞われたりして、2人の違いや類似点が見えたり……そういう流れが結構あって、均衡が保たれているんですよね。

だから解釈でもバランスを取りたいな、と常に思っています。

ドラルクが能力をもってロナルドの取り巻く世界をごっそり変えたのだとしたら、ロナルド側もドラルクに同じくらいガツンとした影響を与えているといいなぁ〜 と。そういうバランスを保った解釈が個人的に理想です。

そんな感じです。
現場からは以上です!!🎥👓

#読書感想文 #吸血鬼すぐ死ぬ #考察

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