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「愛の不時着」沼にまんまとハマった話

私はあまのじゃくな性格だと自認している。

その性格が顕著に現れるのは、「他人に何かを勧められた時」だ。
何らかの物にしろ楽曲にしろ、
他人から勧められたコンテンツは「一回寝かせる」癖がある。
「ふ~ん、おもしろそう!」とか口では適当なこと言っておいて、
その場ではいっさい行動しない。

あまのじゃくというか、単に腰が重いだけなのかも知れないけど。

おうち時間が浸透した関係で、需要が拡大した有料動画配信サービス。
その中でも人気を確固たるものにし、
人から人へ、視聴をお勧めされ続けている作品が、
「愛の不時着」である。

かくいう私も、
特に家にいる機会の多かった今年4月頃、
友人から「ぜったい観るべき」と勧められていた。

そんな心からのお勧めをいつものように寝かせて、半年。
仕事がひと段落したのをきっかけに、
満を持して重い腰を上げてみることにした。

韓国ドラマね…どうせ何らかの事故に遭った主人公が
運命の人に出会って、紆余曲折を経て結ばれる話でしょ…
という先入観をもって観はじめたのだが、
たしかに、おおよその展開はそんな感じ。あってる。

だけど、すごく、ハマった。
枕とか、それなりに濡らしもした。

もともと韓国ドラマに関心があったわけではなく、
そもそもドラマを観る習慣さえもあまりなくなってしまった独身男性が、
なぜここにきてハマってしまったのか。ハマれてしまったのか。

この記事を通じて振り返ってみたいと思う。

あらすじをおさらいしてみる

その前に、もう各所でさんざん書かれているとは思うが、
この作品のあらすじを記しておく。

※ここから随所にネタバレの要素が含まれますので、
気にされる方はイイネしてご退室を…

韓国の財閥令嬢として生まれ、
自身で一から立ちあげた会社で成功をおさめているバリキャリ、
ユン・セリは、
自社製品のパラグライダーの飛行テスト中、急な天候不良によって北朝鮮に不時着、
偶然とおりかかった北朝鮮の将校、リ・ジョンヒョクと運命的な出会いを果たす。
「北朝鮮を脱出する/させる」ため協同するセリとジョンヒョクは、
過去に出会った異性とその相手を重ねながら、しだいに惹かれあっていく。

…こうして書いてみると、あまり刷新感のない話である。
「なんつーご都合主義」とかいいたくなる。
社長直々にあぶねー飛行テストなんかするな、といった感じで、
のっけからつっこみどころはいくらでもあるのだ。

ハマった理由① みんな演技うますぎ

では、それでもなぜ私はまんまとハマることになったのか。
理由ひとつめは、「とにかくみんな演技がうますぎる」。

これは単なる主観かつ憶測でしかないのだが、
韓国ドラマの登場人物は、感情のアップダウンがとても激しいと思っている。
直前のシーンでキャッキャと笑っていたかと思えば、
次のシーンでは突如顔を真っ赤にして泣き出すようなことが多い。

「愛の不時着」に対してもそれは感じていて、
なんなら作中で「喜び悲しみ病」とかいう言葉で
自嘲的にイジられていたりもする。

私は演技の道はいっさい通ってきていないド素人だが、
このアップダウンは、そうとうの演技力がないと表現できないと思う。

ところが、
「愛の不時着」の俳優陣は、それを見事にやり切っている。

1話約80分(最終話にいたっては120分!)、
全16話という長丁場にもかかわらず、
いちどたりとも「アッ、ここ演技たいへんだったろうな」などの
「事情」を感じることがなかった。

笑い、泣き、怒り、喜ぶという演技が逐一、自然かつ完璧に行われていて、
俳優を俳優と思わせない、
「キャラクターそのもの」に見せる技術は見事だった。

なんなら、ちょっと強引さを感じる展開を迎えた時さえ、
俳優が1ミリも「演技感」を出さないので、
引き続き作品に没入できてしまうのである。

これはさまざまなところで見かけるレビューなのだが、
「全話観終わったあとも、○○(キャラクター名)は元気にしているかな、と考えてしまう」
というものがある。

私も同じような気持ちで、観終わったそばから
YouTubeで「○○ メイキング」とか検索しては、
は~この役者さんミュージカル出身だったのか~とか
ひとりごちてしまうくらい、
それだけ登場人物一人ひとりが生き生きとした作品だったのである。

もちろん脚本の巧さもあるのだろうが、
脚本では書ききれない、細やかな人物像を作り上げ、
それを完璧に演じ切った俳優陣の功績も大きいように思う。

ハマった理由② お金かかってんな~

もうひとつの理由は「セット&ロケすげえ」である。

あらすじでも書いたとおり、
ストーリーはヒロインのセリがパラグライダー事故に遭い、
北朝鮮に不時着することで展開する。

つまり最初からロケシーンが多く、
1話に至っては冒頭約10分後のパラグライダーシーン以降、
セリは全てロケである。(少なくとも私にはそう見えている)

パラグライダーで不時着、ジョンヒョクに出会い、
物語前半の舞台である北朝鮮の村に行き着くまでのおよそ1時間、
セリ、外に出っぱなし。

空飛ぶわ草原走るわ川は渡るわ森で迷うわ、
初回撮るのにどんだけお金かけたの?と、
視聴後に溜息をついてしまうレベルである。

また、セットもいちいち豪華で、
インテリアへのこだわりが随所に感じられる。

物語後半はセリの自宅が頻繁に登場するのだが、
奥行き、天井、どんだけ?と思うこと多々。
家具も一つひとつが洗練されている。

社長令嬢でバリキャリ、という設定を裏付けるには不可欠な要素なのだろうが、
少なくとも日本のドラマでは、
あそこまでお金をかけられないのではないだろうか。
もはや画面のクオリティが映画級なのである。

「また逢いたくなる」作品

以上2つが、私がまんまとはまった理由である。
俳優陣の演技力と映像が互いを高め合って脚本の説得力を底上げし、
視聴者が没入できる作品に昇華していたのだと思う。

もちろん、
セリの強くて脆い、複雑なキャラ背景を生みだしたのは脚本家だし、
ジョンヒョクの頼りがいがあるようでどこか抜けている、
ギャップ萌えを書ききったのも脚本家である。

ただ、それだけでは、
この作品はここまでの人気を博すことはなかったように思う。

各々のキャラクターがしっかりと立っていて、
ストーリーに違和感を与えない「背景」が
丁寧に作り上げられているからこそ、
私たちはストーリーは熟知しているにもかかわらず、
2週目、3週目とくりかえし観て、
大好きな「推し」に逢いに行ってしまうのだろう。

未視聴の方は、重い腰さっさと上げて観た方がいいですよ!!
そしてオリーブチキンに足を運んで、
パリッパリのチキンとコーラを貪りながら、ゆるく感想を語り明かしましょう!!

メモ:わが「推し」について

ここからは、作中の「推し」だった人物について、
メモ書きしておく。

「推し」とは、
「愛の不時着」もうひとりのヒロインといえる、
ソ・ダンのことである。

ダンは北朝鮮でデパート経営を行う富裕層の一人娘で、
北朝鮮のとある軍人と婚約している。

ロシアへの音楽留学から帰ってきたばかりで、
「太っている人が美しい」とされる北朝鮮の文化の中でも
ヨーロッパ水準のスレンダー体型を維持し続ける、
美意識の高い女性である。

…もうね、こんな簡潔な人物描写だけで推せる。
「かの国の富裕層」というイメージにたがわずめちゃめちゃ高飛車な性格だし、
ロシアからの帰国時(初登場時)なんて、ド派手なオレンジの花柄ワンピース着てる。
ていうかもうあの話し方が好き。
いちいち語尾が上がる感じとか、特有の間とか。

「私は美しくて優秀」という自己評価の高さと気品に溢れた振る舞い、
高い自信ゆえに素直になれない屈折した性格、
自信があったはずなのにとある男性にフられて粉々に打ち砕かれる心、
その気持ちを解きほぐす、別の男性との出会いと悲しい別れ…

ポーカーフェイスの彼女が、
感情を高ぶらせて泣き叫ぶ数少ないシーン、ことごとくたまらない。
どれだけ一緒になって枕を濡らしたか。

ああ、彼女の登場シーンが、
とりわけストーリー後半からはサブポジションにおさまっているのが
もったいない!
ぜひスピンオフを!と思う次第。

まずは初登場時と退場時、無理矢理ケース持たせるだけじゃなくて、
チェロ弾いてるシーン入れてくれ~~~
あとはパラレルワールドなエピソードで
スンジュンと欧州のどっかでキャッキャウフフする回とか…

ダンちゃんのファッション、好きだったなあ…。
特にジョンヒョクが入院した病院のシーンで来てた青いコートよかった…。

セリと同じく令嬢という設定なので、パッと目を惹く装いが多かった。
ここにも多くのお金を割いていたのだろうか。


唐突に終わります。

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