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ただの糸と思うなよ、漉き簀の糸は超特殊~素晴らしき撚糸の光景~【前編】


紙漉き道具の「簀(す)」は竹ひごを絹糸で編んでいる。
※今回は絹糸にフォーカス


この絹糸は一見普通の糸に見えるが、実は超特殊な糸なのだ。
絹糸だけ切りとり考えた時、水に濡れ、揺すられ摩擦が生じる紙漉きは、絹糸にとっては最悪な使用状況だ。
髪の毛に例えて考えてみると、わかりやすいと思う。
ザックリ言えば絹糸も髪もタンパク質でできている。
髪も濡れた時や摩擦がウィークポイントだ。

糸的に過酷な紙漉きに耐える絹糸と普通の絹糸の大きな違いはズバリ撚りである。
糸を良く観察するとネジネジしている。
これが撚りだ。
※まだ撚りについて勉強中のため、追追紹介していきたい。

この撚りをかけるのは至難の技だ。
熟練の技術が必要になる。
今回はこの撚りがけをする日本で数台しか稼働していない張り撚り式八丁撚糸機と、それを操る希少な職人、森博さんを紹介したい。


張り撚り式八丁撚糸機

糸工房「森」のご主人、森博さん

東京都あきる野市にある糸工房「森」は、昭和17年に創業した糸屋さんだ。
はじめは手術用絹縫合糸でスタートしたが、ご主人の森博さんは(3代目)、手術用絹縫合糸(現在は人用ではなく、獣医さんが使用する糸をつくっている)の他に、甲冑の組み紐の再現(はじめて知ったが、時代によって糸の撚りが違うらしい…凄く面白い)、遷宮の糸など、アグレッシブに様々な糸を手掛けている。

森さんは糸作りだけでなく、一度消えてしまった「黒八丈」(五日市染)を復活させた方でもあり、多才なスペシャリストだ。

そんなスペシャリスト森さんが操るのは張り撚り式八丁撚糸機。
糸を張りながら撚るので「張り撚り式」だ。


糸工房「森」森博さん

工房内の奥行きは約40㍍、一番奥の窓を開けると秋川が見える。
糸作りには最適な立地だ。

工房内の風景

壁の下半分が茶色く塗られている。
これは白い生糸が良く見えるように、という工夫だという。
天井からは数㍍置きにフックが取り付けられている。
こちらも作業中に糸に異変があったとき、対処できるようにという工夫である。
工房内には、このような工夫があちらこちらに散りばめられている。


続きは中編へ。


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