1Q84【ネタバレ感想】

今更ながら1Q84を読んだ。大流行してから10年くらい経ったと思う。
動機は大したことなくて、「ラノベみたいだっていうし、あんなに流行ったんだからサクッと読めるだろう」と踏んでいたからだ。

そんな何気ないきっかけは、私にnoteを新規登録させ、こんなに長い長い感想を書くまでに至らせた。

とにかく、消化しておきたい部分がたくさんあって、一度したためておきたかった。そのくらいインパクトのある作品だった。

先に言っておくが、1Q84や村上春樹のファンには痛烈な批判に見えるかもしれない。そこは個人の感想だ。見たくないなら、できれば自衛していただきたい。

あと考察や解説でもない。あくまで感想。

では始めよう。

言いたいことはたくさんあるがまずは結論から

まず、一言で感想をまとめよう。
(といっても一言でまとめられないくらい言いたいことがあるからこうして長々と書こうとしているのだが)

無理矢理にでもまとめると、「ものすごく紆余曲折してるけど、それらを削ぎ落とせばとても面白い物語」だ。

これからもの申したい点と、面白かった点をまとめていく。議題はこうだ。

もの申したい点
・必要かどうかもわからない寄り道が多すぎる
・登場人物が全員作り物感があり、誰にも共感できない
・誰でもない第三者目線ではなく、誰かの目線で書かれている

面白かった点
・それでも読みすすめたくなる不思議

それではひとつひとつ感想を述べていこう。

大きな大きな皿にちんまりと乗ったパスタのよう

この作品を無理矢理にまとめると、「紆余曲折は多いがそれらを削ぎ落とせば面白い」と言った。
つまりもっとフランクに言えば「無駄だと思える部分が多い」ということだ。

まるで大きな大きな皿にちんまりと乗ったパスタのようだ。

結婚式とかでしかお目にかかれないような、ヘリのデカすぎる皿に、お上品に鎮座するパスタ。
味は申し分ない。皿が大きいせいか、とっても少なく見えるがいざ食べ終わると予想以上に満足するアレ。

アレと似たような感覚だと思う。
食べ終わってからなんであんなに皿をデカくする必要があったのかと首をかしげる。

なんであんなに登場人物たちの容姿の詳細や、性的な描写が多いのかと首をかしげる。

詳細に詳細を重ね、くどいくらいに説明がある。私はたぶん一生分の勃起、射精、陰毛、睾丸、乳首という言葉を見た。

ふかえりと天悟が交わるシーンは正直なところ気分が悪くなったほどだ。
生々しすぎる上に描写が多い。

忘れた頃にヌルッとそういう描写が差し込まれる。
先が気になって曲がり道を曲がったらいきなりセクハラされたような感覚だ。

そんなふうに、青豆のコンプレックスや、天悟の過去の記憶や、ふかえりの胸の大きさや、青豆が顔をしかめる話が繰り返されるとさすがに疲弊してくる。そんなものが皿のヘリを大きくしているのではないかと思うのだ。

牛河パートも探偵としての立ち回りが素晴らしいことはわかったけれど、彼の推理は一直線だ。かつ内容もBOOK1とBOOK2を読んでいる私達にとってはわかりきっている。

ぶっちゃけ言えばこれらがなければ前編後編くらいにスッキリ収まったのではないかと思う。
本を読む時間が惜しいわけではない。本筋はハッキリ見えているのに、道草ばかりで結論を遅らせているような、上手くない焦らしが気になってしまった。

精巧なフィギュアで人形遊びをしているよう

二つ目は、登場人物たちの作り物感がすごいということだ。
これは小説だからと言われればそれまでなのだが。

そして見事なまでに誰一人として共感できない。周りにいてほしいとも思わない。

人間性が希薄というか、物語を進めるために都合よく立ち回れる性格をくっつけただけというか。

ここが異世界だと気づいて、受け入れるシーンなんか特に「君ら察しよすぎない?」と拍子抜けした。

主人公たちは特に気味が悪かった。とにかくインモラルにインモラルを畳み掛ける主人公たち。

天悟はいつまでも周りで起きていることに対して他人事ととらえている。自分のことまで他人事。ドライなのではなくただ流されているだけ。

ドライなキャラはちゃんと自分の考えを確立させている。
けれど天悟はそうじゃない。物語の都合に流されているだけで、キャラにこれといった味がない。筋もない。そんな感じ。

青豆は「男が考える理想のエッチな女」という感じがした。もっと口の悪い言い方をするなら「女の面をした性欲」だ。
ここで男と断言してしまうのはナンセンス極まりないが、上手い言葉が見つからなかった。

あたかもすべての女がセックスに飢えていてオヤジ狩りをしている、みたいな書かれ方だった。やってることは不倫なんだからもうちょっと悪びれてほしい。

それに何十年も前のクラスメイトのことがずっと好きで、あわよくばセックスしたいという思考だった。あわよくばセックスってなんなんだ。まずは再開の喜びを分かち合って、セックス以外の2人でしたいことを考えていてほしかった。

リアリティを求めているわけではないが、こんな風にイヤに性欲が絡んだキャラだったからすごく鼻についた。

あとここからは本当に個人の感想だが、青豆はちょっとわがまますぎやしないだろうか。自分のことしか考えてない。
図書館で唸ったり、妊娠しているのにセックスするような非常識さはモラルの一線どころか三線は超えていると思う。人生の1/3を無欲で生きた反動だろうか。

とにかく性欲の部分以外は、都合よく話をすすめるためにキャラ付けしただけのような人たちだった。

まるで作者が精巧なフィギュアで人形遊びをしているようだ。
自分好みの女と、自分の分身のフィギュア。

2体のフィギュアを題材にして、気取った言い回しと、ちょっぴりハードボイルドなテイストをスパイスにエッチなシーンを書く。

本当はエッチなシーンだけ書きたいけれど、そうはいかない。だから書きたいシーンが書けたら、思い出したようにストーリーを進める。まるで作者の自己満足だけで書かれた作品だ。

辛辣かもしれないが、こういうふうにも感じてしまった。

語り部は誰でもない神じゃない

この小説は第三者の視点で書かれていく。一般的な小説では誰でもない神の視点だ。

けれどこの本の語り部は誰でもない神じゃない。

作者、あるいは名前は出てきていないが、語り部のキャラがいるかもしれない。はたまたリトル・ピープル。

誰だっていいが、私はその人の視点を通して物語を見ている感じがした。

読み始めた頃は、語り部の下心が風に煽られて見え隠れするような感覚があった。本当に語りたいことが物語の下でネッチョリとのさばっている、なんて思った。

何度も言うが、性描写は本当にキツかった。
女性キャラの描写はじろじろとなめ回すようになされている。
チンコの描写はめちゃくちゃ細かく書かれている。

1つ目の話にも関わってくるが、読み手がもう見なくていいよと思うくらいに見ては述べる。読み手の意思はそっちのけで見るし語る。嬉しそうに。

読んでいる方はだんだんうんざりしてくる。

最後の方は同じことがずっと出てくるばかりで、ななめ読みしてしまった。ラストも出会えた喜びより、やっと終わった!という感覚が強かった。

こんなに「誰か」の視点に介入した第三者目線は初めてだった。性的な部分にしか目を向けてくれないから苦行だった。

読み手にページをめくる意地を張らせる

これまでほぼ文句と言ってもいいような感想を述べてきた。正直苦行だったが、なんだかんだで全部読んでしまった。

これが1Q84の魅力のひとつなんじゃないだろうか。

「なんだかよくわからない。でも気になる。知りたい、知りたい…」で全部読んでしまう。

本筋は見えているのに道草が多くて焦らされていると書いたが、それが読み手にページをめくる意地を張らせるのかもしれない。読んでいればいつかどこかで着地するかも、という好奇心と意地。

だけど、困ったことに語り部は大事なことを決して語らない。

勢いに任せて一気に読んだが、リトル・ピープルも、ふかえりの正体も、マザもドウタも、青豆が宿した者の正体も、なんにも分からなかった。

おそらく川奈家に居候したふかえりはドウタだし、青豆が宿しているのは牛河の生まれ変わりなんじゃないだろうか。そして陰毛こすりつけ女は天悟の母親の生まれ変わり。

ほのめかされていたものはこのくらいで、根本はわからないまま終わってしまった。そして実は何も解決していない。

でもまあ、そこは別にいい。終わりがスッキリしない物語は嫌いではない。そういう場合は自分が納得いく解釈が答えだから。

まとめ

1Q84はどちらかといえば悪い意味でインパクトがあって、消化しておかないとモヤモヤしそうだったから感想として書き連ねておきたかった。

だいぶ口が悪かったり辛辣だったりする部分もあるので、本当に個人の感想として見てもらえればと思う。それで共感が得られるなら私も嬉しいが。

いろんな意味で難解な小説なのだろう。ある意味では面白く、ある意味では不快だった。

物議を醸す小説は感想も色々あるから、他の人の意見も見て、時間をかけて落とし込んでいくのが一番いいかもしれない。
1Q84はこのくらいにしておこうと思う。読んでくださってありがとうございました。

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