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第五話:小商いの可能性(茹だる残暑の京都街歩き)

前回の記事はこちらから。

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新風館(④)とSUINA室町(⑤)と建物の中を突き抜けて、次に向かうのは、とある長屋(⑧)だ。実はこの長屋が今回の帰省の目的で、note記事を書くきっかけでもあるので、今回はその話をしていきたい。(と思ったけど前置きが長くなったので、途中までです。)

四条通から碁盤の目の中を抜けて、直接長屋まで向かっても良かったのだが、途中でSequence kyoto GOJO(⑥)を見ておきたかったのもあって、少し遠回りをして目的地へ向かうことにする。

下の写真がSequence kyoto GOJOのロビー。MIYASHITA PARKの立地のような気持ちよさやワクワクするライブ感はなく、よくあるオシャレなロビーという感じ… 人が少なかったのもあるけど、なんかもったいない。

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そして、五条通まで南下して、ようやく左折する。五条通は空襲の時の延焼を防ぐための建物疎開(取壊し)を行った通りのため、道路幅がめちゃくちゃ広く、北側歩道は影がなく、とにかく暑い。意識朦朧としながら、東へ進むと、五条通から細い道へ入る交差点でとある建物が目に留まった(⑦)。

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すごく薄っぺらい建物で、1階は大喜書店という小さな本屋さんのようだ。外からは建築の本がたくさん並んでいる様子が見える。店内は狭くて長居はできなそうだけど、少し涼みたい気持ちもあったので、この本屋さんに入ることにした。

レジ打ちのお姉さんが図面らしきものを広げて作業をしていたので、お店のことを聞いてみたところ、この本屋さんは、2階がスペースクリップという設計事務所となっているそうだ。設計事務所の所長さんのご実家が元々本屋でそれを継いでるとのこと。だから、並んでいるものは建築関係の本を中心に画集やスケッチ付きのエッセイなど少しアート寄りの選書となっている。

「設計事務所をやりながら、小さな本屋さんを営む」というスタイルはなかなか斬新だが、確かに本屋さんは、場所代や選書、レジ・発送とコストはかかるものの在庫を抱えることにそこまでリスクはないし、そんなに来店するお客さんがいないから、店番をしながら図面のチェックもできる。家業も継ぐこともできているし、本の仕入れと合わせて、建築の情報も仕入れることができるし、仕組みとしていろいろしっくりくることに気付く。

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」の話ではないが、京都には一見すると商売が成り立ってるのかな?と思うようなお店がたくさんあるように思う。そして、ふたを開けてみると、この本屋さん兼設計事務所のように、いくつかの「小商い」を組み合わせて、うまく商売をしている人が多い気がする。(まあ、実家が地主さんとか、そういうパターンも多いけど)

そんな「小商いの可能性」について考えながら、店を出て、目的地の長屋へ向かった。

少し唐突だが、そもそも、五条通以北の河原町通以西のこのあたりの地域は「有隣学区」というエリアにあたる。京都は明治の遷都のすぐ後、学校令が発令されるより前に、地域の人たちが廃れてしまった街を盛り上げるために、自分たちのお金で地域ごとに小学校を建てた。この小学校の校区=元学区が今でも地域自治やコミュニティの観点からは重要な役割を果たしている。

なんでこんな話をいきなりし始めたかというと、私の大学院の研究のテーマが、学区や町内のコミュニティの話であり、そのフィールドがまさにこの「有隣学区」だったからだ。

4.1. 調査対象3元学区の位置

有隣学区は、道幅の狭い通りが多く、路地も多い。また京都駅と四条河原町という繁華街の間に位置する立地の良さから、一時期にはマンションがドンドンと建った地域でもある。そんな街の生い立ちから、古くから住んでいる町家や長屋の住人と、新築されたマンションの住人の間でコミュニティの関わり方に差があり、町内会等の課題が多い地域でもある。そんな中でも地蔵盆というお祭りをがコミュニティ参加のきっかけになっているのでは? という話が私の研究テーマだった。(これでも工学修士なの意味わからん)

そんな思い入れのある地域であるが、私が大学を出た後もいろんなテーマで関わりが続いており(そもそも私が研究室に入る前から研究室として関わりのある地域だった)、私が当時大学にいた時の助教(とカナダからの留学生は、この地域の長屋のリノベに関わったことをきっかけに、大学を離れた今も、実際にこの地域に住んで、生活の拠点にしている。

当時の助教は今は別の大学で准教授をされている。カナダからの留学生は修了後、某IT系会社に入社し、そして昨年独立起業した。この有隣学区の長屋を再生し、Garden Lab KYOTO(⑧)という施設を立ち上げたというので、一度お邪魔してみようというのが、今回の主目的だ。

ようやく長い前置きが終わったので、次回本編です。

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