目指すは「睡眠に最も効果のあるサウナの入り方」サウナが睡眠に与える効果とは。(ZAKONE PROJECT NOTES #2 前編)
こんにちは。私たちZAKONE(ザコネ)は、睡眠業界を盛り上げるために生まれた、企業や個人を繋ぐコミュニティです。
このnoteでは、ZAKONEを通して立ち上がった共創プロジェクトを前後編に分けて紹介していく「ZAKONE PROJECT NOTES」をはじめ、今後様々なプロジェクトやサービス、プロダクト、活動の内容などを発信していきます。
今回は、「サウナ×睡眠」をテーマに共創された日本サウナ学会×共立メンテナス×NTT東日本×ブレインスリープのプロジェクトを、NTT東日本の尾形がご紹介します。
サウナから睡眠改善を促すサービスプロジェクト、始動!
2021年11月25日-26日の二日間、日本サウナ学会主催で「第1回 日本サウナ学会学術総会」にて、マニアックでサウナ愛あふれる研究結果が複数発表されました。
「人気サウナ施設のランキング」といったわかりやすいものから、学術大賞に選ばれた「骨構成細胞における温度感受性遺伝子群の発現」といった非常に難しそうなものまで。
是非興味のある方はこちらからご覧ください。
そんな日本サウナ学会の代表理事を務めるのが今回のプロジェクトのキーマンである加藤容崇さん。
「予防医療っていうけど、健康な人が予防活動をすることは難しいし、そもそも予防する取組みって楽しくないですよね。楽しむことで結果として未病につながるのが理想。サウナはそれができている。」
この「サウナ×睡眠」のプロジェクト構想をお話したとき、加藤さんからは「すぐにやりましょう」と返事をいただき、早速動き出しました。
サウナがもたらす睡眠への効果、深い睡眠を作るサウナの入り方
「サウナを通して、睡眠の課題を解決する、ということが予防医療の観点でも非常に興味深いし、実際に結果が気になる。」
意外にもサウナと睡眠に関わる論文は世に出ていなかったこともあり、
まずは「サウナ浴が睡眠に与える影響」を検証することとなりました。
内容はシンプルで、サウナ浴をした場合としない場合で睡眠の状態の差分を計測、分析するものです。
検証期間は2週間、被験者10名を5名ずつ、AとBの2つのグループに分け、サウナ浴あり・なしの場合において、睡眠状態を評価するもの。
もちろんサウナの入浴方法について加藤さんから直々にレクチャーを受けるなど、プロジェクトを進める中で、1つ課題が浮かび上がってきました。それが、検証環境でした。
説得力あるエビデンスを生み出すための検証には、同一環境で被験者に検証してもらう必要があり、さらに。
「せっかくならインパクトのある企業と実施したかった。」
といった加藤さんの一声で、サウナに力を入れている、共立メンテナンス(ドーミーインホテル)で実施することが決まりました。
検証を行ったのは、NTT東日本とブレインスリープの合同チーム。
そして加藤さん監修のもと、検証におけるプロトコル策定、実施を行なっていきました。
定量的な評価を行うために検証デバイスは以下3つを用いて、睡眠状態を計測しました。
脳波計
活動量計
心電計←加藤さんがフィンランドから輸入したサウナ内でも耐えうるデバイス
検証中はこんなイメージ。
しっかり睡眠データを取ろうとすると大変です・・・
サウナは「入眠潜時」と「離起潜時」を早め、熟眠度を高める!?
気になる検証結果は下記の通りでした。
ー睡眠潜時が早まったー
睡眠潜時とはベッドに入ってから眠りに入るまでの所要時間のことを言います。
つまり眠るまでの時間が短くなったということ。
ベッドに入ってからなかなか眠れない方にとってはサウナは一定の効果があるという結果になりました。
ー離床潜時が早まったー
もう一点わかったことは離床潜時が短くなったということ。
離床潜時とは覚醒してからベッドをでるまでの時間のことで、つまりサウナに入るとシャキッと起きることができるのです。
朝なかなか起きられない方にとって、サウナは非常に有効であるという結果になりました。
ー睡眠の第1周期(黄金の90分)の質が向上?!ー
サウナに入ることで睡眠第1周期における熟睡時間や熟睡度が向上する可能性が確認できました。
まず大前提として、Fig.2にある通り、人の眠りには一定のリズムがあり、「ノンレム睡眠=深い眠り」と「レム睡眠=浅い眠り」が約90分周期で交互に現れます。この睡眠周期を一晩に4〜5回繰り返すと目覚めに近づくのです。
赤枠で囲った一番最初の睡眠周期が最も深く、睡眠の質に特に左右するといわれており、「黄金の90分」などとも呼ばれます。
入眠してから最初にグッと深いステージ(ノンレムステージ3=S3)まで落ちるのが睡眠周期の特徴ですが、Fig.3の左側のグラフはそのステージ3の時間が伸びたということを示します。これで熟眠時間が向上したと言えます。
また熟眠度については睡眠中の脳波にデルタ波がどれだけ出ているかで判定できますが、Fig.3の右側のグラフの通りサウナに入った時の方が多く出現していることがわかります。
デルタ波については下記。
これによりサウナに入ることにより、質の高い睡眠が取れるということ。通常よりも疲労回復を早めたり、免疫を高める効果があると言えるでしょう!
1点補足すると、最初に記載した睡眠潜時や離床潜時が統計上有意なレベルでの改善が確認されたのに対して、「ステージ3の時間」や「デルタパワー」はまだ改善する傾向が見られただけとなっています。
今回は被験者数9名のみと小規模なため、もう少し被験者を増やすなどしたら、今後統計学上の有意差も確認できるかもしれません。
サウナ×睡眠の可能性
結果を振り返り、加藤さんはこう語っていました。
「体感としてサウナ後はぐっすり眠れる気がしていたが、数字として証明できた。睡眠に悩みを抱えている人は是非サウナ浴を試していただき、睡眠への効果を体感してほしい。」
睡眠に悩みを抱えている方は非常に多い。
サウナにこれまで入っていない方で、睡眠に少しでも悩みがあるのであれば是非試してみてください。
また今回の検証は第1弾であり、これから第2弾としては睡眠に最も効果のあるサウナ浴のアルゴリズムを予定しています。
人によって、またその日の体調によって、「ととのい方」に違うがあるはず。
「ととのう値を計測できるアルゴリズムはすでにできている。それをあとは実装させるだけ。」
第2弾の検証の楽しみである。
執筆 ZAKONE編集部 尾形哲平