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20020202 命題

 命題という言葉がある。論理学などの用語で物事の判断を記述した文を言う。英語のpropotision$${^{*1}}$$の訳語としてできた言葉なのだろう。命題の「命」にはいのちという意味ではない。厳命とか任命などの「命」の意味で、「いいつける」という意味だ。「題」は課題や問題の「題」で題名の題ではない。解答を要求する問いという意味である。従って命題は「(解けと)言いつけられた問題」と考えればいいのだろうか。こう考えると変な訳語である。

 上記の意味の他に「題名を付ける」「与えられた課題」という意味がある。「命」を「いのち」と解して「一番肝心な問題」と言う意味で使う場合もあるかも知れないが、これは誤用である。

 数学では客観的な真偽の判断が下せる文を命題と呼んでいる。「1+1=2である」「三角形の内角の和は二直角に等しい」などは数学的な命題である。「AならばBである$${^{*2}}$$」というのも命題である。この命題を「BでないならばAではない」としても真偽は変化しない。後者の命題を前者の命題の対偶$${^{*3}}$$という。

 例えば「白馬ならば馬である」の対偶は「馬でないならば白馬ではない」になる。白馬は馬の白いやつ$${^{*4}}$$だから当然「白馬は馬」と普通の人は考える。だから「白馬ならば馬である」は「真」である。この命題を「真」と考えている人は馬でないなら当然白馬であるはずがないから「馬でないならば白馬ではない」も「真」になる。

 「叱られないと勉強しない」と言う命題は私にとって「真」である。その対偶の「勉強すると叱られる」はどう考えても「真」にならない。対偶では真偽の変化はないと説明した。しかしこの命題はどう考えても「真偽」が変化してしまう。この変な命題は結構有名である。一体どうやって考えればいいのだろうか。

 これを知ってから長年考えていたが、つい最近、知人達と話していてどうやって考えればいいか判ってきた。

*1 proposition. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*2 「ならば」
*3 対偶、逆、裏
*4 公孫龍 白馬は馬に非ず

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