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20060323 馬跳び

 幼少の頃、「馬跳び」という遊びを良くやった。ただ、我々がやっていたこの馬跳びという遊びは、他の地方の人がやっていたそれと全く違う$${^{*1}}$$ということを随分大きくなってから知った。

 まず地面に一本線を引く。これが起点(線)となる。じゃんけんで「馬」と「親」とを決める。それ以外は自動的に「子」になる。一番負けた者は「馬」、勝った者が「親」となる。「子」もじゃんけんで順位を決める。

 馬役は地面に引いた線に片足を揃えて馬になる。引いた地面の線の手前から一人ずつ跳ぶ。一番最初に跳ぶのは「子」の一番順位が低い者である。最後に親が跳ぶ。全員が跳ぶまで馬は交代しない。親は最後に馬を跳んだ後、自分の着地点に最初に引いた線と平行に別の線を引く。今度は新しく引いた別の線に足を揃えて先程の「馬」がまた馬になる。つまり最初の線と親の着地点の線との間隔分だけ馬の位置がずれるのだ。上手く馬が跳べなかったといった失格者が出なければ「馬」役の交代はない。この遊びでは、馬は敗者の象徴なのである。

 次に親は「△歩」と宣言する。△には数字が入る。「三歩」ならば子は最初の線から馬を跳ぶまでに三歩以下で行かなければならない。「零歩」と宣言する場合もある。この場合は最初の線から足をつかずに馬を跳ばなければ失格となる。最初の線までの助走は無制限であるが、助走も親が制限する場合がある。最初の線の上に立ってそこから始めるのである。この制限の言い方が確かあった。「立って△歩」「立ちで△歩」だったか。

 △歩以下なので親の宣言より少ない歩数でもいい。ただし順位の低い者が少ない歩数で跳んだ場合は次の順位の者はそれ以下で跳ばなければならない。また助走無しで跳んだ場合もそれ以降はそれに従わなければならない。順番が後になるに従って馬を跳ぶことが難しくなっていくので、最後に跳ぶ親は一番難しくなる。親が跳べずに失格すれば、親は「馬」にならなければならない。親は自分の実力を勘案して歩数を宣言することになる。そうしないと直ぐに親の座から引き下ろされてしまう。親は権力、跳躍力の象徴だったので、親の座を剥奪されるのは屈辱的なことであった。

 親が指定した歩数で馬に到達して跳べないと失格となり馬になり下がる。それまで馬だった者は子の最下位となる。失格者が複数いた場合は、その内の最下位の者が馬となりそれ以外の者は元の順番に従って下から順位が決まる。馬だった者は跳べた者の内の最下位になる。親が子の歩数以下で跳べなかった場合は親が無条件で馬になり、後は同様に子の順位が決まる。

 例えば「い(×:跳べなかった)ろ(○:跳べた)は(×)に(×)ほ(○)へ(×)と(○)親(○)」という結果だった場合、「い」が馬となり、順位は「は(×)に(×)へ(×)馬(ー)ろ(○)ほ(○)と(○)親(○)」となる。全滅の場合は馬だった者が親になる。

 こういったことを何度も繰り返す内に最初の線から馬の位置まで10m以上になる場合もある。そんな時も親は「十二歩」とか「十三歩」とかと宣言して時間のある限り延々と続けるのであった。

*1 馬跳び

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