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20000314 体温計

 耳式体温計$${^{*1}}$$がかなり普及している。
 従来の水銀体温計$${^{*2}}$$やデジタル体温計$${^{*3}}$$とは体温測定の仕組みが違う。

 水銀体温計は体温によって温められたガラス製の水銀溜めの中の水銀が熱膨張する度合いで温度を測定する。
 デジタル体温計は電子体温計ともいう。デジタルとは測定体温の表示形式を指して「デジタル」と言っているだけなので本質的な言い方は電子体温計だろう。水銀体温計の水銀溜めに当たる部分に温度で電気的特性が変化するサーミスター$${^{*4}}$$などの電子部品が使われている。デジタル式ではこの部品が温められることによって、例えば電気抵抗が変化するので、その変化を温度に換算してデジタル表示をしている。電子部品の特性変化の仕方は予め分かっているので、水銀温度計のように完全に体温計の温度と体温が同じにならなくても、体温を予測して表示することが出来る。これで検温時間が水銀式よりも短くなった。

 耳式体温計はこれらの体温計とは少し違った方法で体温を測定する。水銀式も電子式も皮膚に体温計を接触させて体温計の温度測定部分を温めていた。つまり接触による熱伝導を利用している。

 ところが耳式は温度を測定するのに接触する必要はない。

 例えば白熱電球に手をかざすと暖かく感じる。これは電球から赤外線が出ていて、これを手のひらで熱として感じるためである。ひなたぼっこも同じである。太陽からの赤外線を肌で感じているのである。赤外線は電磁波の一種なので空気や水など何もなくても空間を伝わってくる。だから白熱球を触らなくても暖かく感じるし、太陽は地球から1.5億kmも離れているにもかかわらずひなたぼっこをすると暖かい。

 温度のあるものはその温度が高かろうが低かろうが、全て赤外線を放出$${^{*5}}$$している。よく遠赤外線$${^{*6}}$$を発する特殊物質で云々という広告$${^{*7}}$$を見かけるが、それは赤外線を発するという点では特殊な物質と言うわけではない。どんな物質でも絶対温度零度$${^{*8}}$$より高い温度ならば、つまりこの宇宙に存在する全ての物質からは赤外線が放出されているからである。赤外線は物体の温度と表面状態$${^{*9}}$$が同じであれば、その物体の材質が違ってもそれぞれ同量の赤外線が放出される。

 耳式体温計はこの赤外線の量を測定することで体温を測定している。赤外線を測るので温度を測る相手に接触する必要がない。耳の穴の壁や鼓膜から放出される赤外線を赤外線センサー$${^{*10}}$$で検知して温度に換算して体温を表示する様になっている。体温は白熱球や太陽のように温度が何千度になっていないので赤外線の量は非常に少ない。手で感じることの出来ないぐらいの少ない量の赤外線をセンサーは感じとっている。

 この耳式体温計で体温を測ると水銀式やデジタル式に比べて体温が高く測定されるらしい。脇の下で体温を測ると汗や空気のせいで本来の体温よりも水銀式やデジタル式の方が低く測定されるらしい。
 しかし水銀式を元に一般の人の平熱を36度としているので、今更、耳式で測った体温の方が今までよりも少しばかり高くて37度ぐらいが本当の平熱だ、とはなかなか言えない。仕方なく表示を少し低めに設定しているそうである。

*1 家庭用耳式体温計
*2 体温計(水銀)
*3 一般用体温計
*4 PTC Thermistor Characterisitics
*5 黒体放射の式とグラフ
*6 遠赤外線協会
*7 バイオヘルスブレスレットポロ
*8 OPTEX.CO.LTD. オプテックスの非接触温度計 Q&A
*9 HORIBA
*10 赤外線センサー

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