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20020106 郡

 年賀状などの住所を見ていると郵便番号7桁化で、町名や字(あざ)名まで略している人が少しずつではあるが増えてきた。これは住所を簡略化しても配達されるからそうしているのである。そうではなく、自分の住所が気に入らないから、ある部分を省略するという人がいた。

 そのある部分とは「郡」である。本来の住所は「○○県△△郡○○町○○」なのだが、「郡」が付くと田舎臭くなるので、自分の住所は「○○県○○町○○」だと言っていた人がいた。郵便番号が7桁になる以前から「郡」を省略しても郵便物は届いた。

 「一郡一町」または「一郡一村」という言い方がある。郡の中に町や村が一つしかない状態をいう。もともと町や村は郡の中に含まれているのでそれをわざわざ「一郡」というのはいささか$${^{*1}}$$妙な言い方であるが、そう表現しているところが多い。愛知県では葉栗郡木曽川町$${^{*2}}$$が郡内に一町しかない状態である。

 幼少の頃、実家の隣の町が市になった。△△郡○○町から○○市になったのである。これを知った時、何か釈然としなかった。日本という国の中には都道府県というものがある。都道府県の中には市や郡がある。市や郡の中には町や村がある。ならば町の上の階級は「郡」ではないか、昇格するなら「△△郡○○町から○○市」ではなく「○○郡」ではないのか、と思った。

 現在「郡」は行政区画という機能は持っていない。地方公共団体$${^{*3}}$$は都道府県、市、町、村などで、郡は地方公共団体でもない。法律的$${^{*4}}$$に「郡」が機能している条文があるらしいが、「郡」の言葉はあってもなくてもどちらでもいいような条文である。

 郡というのはもともと大化改新で国郡制$${^{*5}}$$が制定された時にできたもので、地方行政区画の最大単位として設定された。明治11年、郡区町村制で行政単位として郡制ができあがった。因みにこの時の「区」は現在の政令指定都市の「区」$${^{*6}}$$や特別地方公共団体の「区」$${^{*3}}$$ではなく市制が出来る前の行政区画$${^{*7}}$$である。

 大正10年(施行は12年)に郡制が廃止されて$${^{*8}}$$も選挙区などでの一単位を構成したりしていた。

 郡区町村制と市制は別々に出来たので、市は郡に包括されない。従って町が市になると住所から郡がなくなるが、村が町になっても郡は住所から消えない。町が次々と合併をして市になるとその郡の領域が小さくなり最後には「一郡一町」または「一郡一村」の状態になり、最後にこの町村が市になれば郡は消滅する。

 従って郡は地理的な区分にもなり得ていないし、単一で行政区画にもなっていない不思議な存在である。

 もしかしたら電話番号の市内局番の領域には消滅した郡の名残があるかも知れない。これも一つの遺構$${^{*9}}$$である。

*1 キャスト紹介
*2 木曽川町ホームページ
*3 20000225 都庁所在地
*4 群制度って必要?
*5 20000724 廃藩置県
*6 政令指定都市と中核市との相違
*7 近代史レポート
*8 自治と分権の学校
*9 遺構探訪

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