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20010411 LOCOS

 モノリシックIC製造工程$${^{*1}}$$の専門用語にLOCOSというものがある。LOCal Oxidation of Siliconの略で選択的にICの基板となるシリコン単結晶の表面にその熱酸化膜を形成する技術である$${^{*2}}$$。

 モノリシックICやLSI$${^{*3}}$$はシリコンの単結晶の表面に何百万個というトランジスタが作り込まれている。このトランジスタが十数ミリ角のシリコンの単結晶のチップに納められているわけだ。これらのトランジスタが全体で電子回路として機能するためにはそれぞれが電気的に分離されていなければならない。トランジスタが分離されていると言うことは、隣同士のトランジスタが電気的に影響し合わないことである。隣のトランジスタに電流が漏れて流れないようにしなければならない。

 そのためにトランジスタとトランジスタとの間に仕切が設けてある$${^{*4}}$$。基板の単結晶シリコンを熱で酸化して作った膜であり、その膜はトランジスタ一つ一つの部分以外のシリコン単結晶の表面を覆っている。表面に膜を置くだけで電気的な仕切ができるのは、シリコン結晶中を流れる電流はその表面近くだけを流れるので、電流が流れない酸化膜が表面にあれば仕切として機能する。ただしこの仕切が通用するのはMOS型トランジスタ$${^{*5}}$$と呼ばれる電流がシリコン単結晶の表面近くだけ流れる方式のものだけである。他の方式のトランジスタ$${^{*6}}$$では仕切にならない。

 この「LOCOS」は何故「LOCOS」と略されたのだろう。「部分的にシリコン単結晶を酸化させる」という意味の中で「部分的に」の「LOCal」で3文字も略語の中に組み込まれている。普通、「Local Oxidation of Silicon」であればそれぞれの頭文字で「LOS」のような気がする。

 それに「of Silicon」とあるが、モノリシックICやLSI製造工程で「酸化する」と言えば「シリコン」しかないのである。なのにわざわざ「シリコンの」と付けている。

 もしかしたらLogos(理性)の洒落にしたかったのかもしれない。そのためにわざわざ「LOCal」の3文字と「of Silicon」の「S」を付けたのだろうか。それともLOCOSを開発した技術者は機関車好きでlocomotiveの略語の複数形locosを当てたかったかもしれない。しかしわざわざ「s」を付けて複数形にする理由がない。重連$${^{*7}}$$が好きだったのだろうか。

*1 1. 半導体製造工程 :半導体の部屋:日立ハイテク
*2 Lecture 4 - Small Channel MOS
*3 LSIの世界
*4 Cyberfab.net - Accelerator for microelectronics and semiconductor innovation - Training - 0.35 Process flow - LOCOS text
*5 第10回 MOSトランジスタの構造と基本動作
*6 トランジスタの構造と基本特性(1)=バイポーラトランジスタ= | 音声付き電気技術解説講座 | 公益社団法人 日本電気技術者協会
*7 重連 C1266+C11325

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