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20030107 水に浮かばない土星

 土星$${^{*1}}$$は水に浮くか。土星の平均比重は約0.7と考えられている。水は比重が1なので水よりも軽いことになる。もし土星を水に入れれば浮いてしまう$${^{*2}}$$だろう、とよく書かれている。本当だろうか。

 「地球より大きな土星を浮かべる池はどこにある」とか「表面が液体$${^{*3}}$$だから水に入れると表面が溶けてしまうのではないか」とか「水に入れると輪っか$${^{*4}}$$が外れるだろうから、それでも土星というのか」といった疑問ではない。

 土星が剛体$${^{*5}}$$であるとして、その比重が0.7とする。直径が1m程度の球であればプールに入れれば水に浮かぶかどうかは簡単に実験できる。しかし土星は直径が10万km以上ある。これを浮かべるためには相当大きなプールが必要だ。果たしてそんな大きなプールが用意できるのだろうか。

 水に物が浮く$${^{*6}}$$というのは重力がある$${^{*7}}$$からである。重力が無ければ物が浮くとか沈むとかは言えない。従って宇宙空間に巨大なプールを作るだけでは土星が浮くかどうかは実験できない。何か重力を生み出すような天体の上にプールを作らなければならないだろう。

 その天体の大きさはどれくらい必要だろう。プールの深さは10万km以上ないと土星が浮いているか沈んでいるかを確認出来るかどうか心配である。プールの広さはどれくらい必要だろう。一辺が15万kmあれば十分だろう。そんなプールを作ることが出来る天体の大きさは少なくとも直径30万kmぐらいないと駄目であろう。

 そうなると木星の直径$${^{*8}}$$の2倍ぐらいの天体を探してこなければならない。褐色矮星$${^{*9}}$$という恒星と太陽系の惑星型の天体との中間的な質量を持つ天体$${^{*10}}$$があるらしい。これにプールを作らなければならない。

 褐色矮星$${^{*11}}$$は木星や土星のようなガスで出来た天体であるらしい。地球のように表面が硬ければコンクリートを流し込んでプールを作ること出来るかも知れないが、土台が液体か気体ではプールを作るのは不可能だろう。

 それでは水だけで出来た天体を用意すればいいだろう。天体の表面から中心まで全て水で出来た巨大な水の球である。無重力のであれば水は球になる$${^{*12}}$$ので、水だけの天体を作るのは可能だろう。重力はどうするか。水自体の質量によって重力が発生しているはずなので、宇宙空間でとにかく水だけを集めればいいだろう。

 直径30万kmの水だけの天体を作ろうと思い、せっせと水を集めていると自分の重力による圧縮で中心部の温度がどんどん上昇していく。木星の内部では水素が2万度ぐらい$${^{*13}}$$になっているらしいから、恐らくこの「水の星」の中心温度はかなり高くなるだろう。どれくらいの温度になるのか。計算は相当難しそうな気がする。木星の倍の大きさの水の球だから結構高い温度ではないだろうか。

 水は2500度以上では水素と酸素に分解してしまう$${^{*14}}$$。そうなると既に中心部においては「水」でなくなっている。

 更に水でなくなった中心部分の周りでも相当温度が上がっているので、とても水は液体の状態を保てない$${^{*15}}$$だろう。一方、「水の星」の最表面は常に宇宙空間に熱を放出しているので温度が下がってしまい氷になっているだろう。これは太陽の近くにこの星を置いておけば解決できる問題かも知れない。

 こう考えていくと少なくとも土星を浮かべることができる深さ15万kmの液体状態の水の層を持った「水の星」をつくることは不可能であることが判る。

 従って「土星は水に浮かばない」ということになる。

*1 土星
*2 Google 検索: 土星 水に浮く
*3 太陽系・土星
*4 土星探査
*5 goo [国語辞典]: 剛体
*6 浮力
*7 引力、重力はなぜあるの | 自然 | 科学なぜなぜ110番 | 科学 | 学研キッズネット
*8 木星
*9 褐色矮星の意外な正体
*10 連星
*11 星と星雲
*12 宇宙の不思議 うそ、ほんと -宇宙でくらす/つくる (2)-
*13 日本惑星協会 惑星を知ろう...[ 木 星 ]
*14 超高温に加熱すると
*15 超臨界水とはなんぞや?

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