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20001121 ビュフォンの針

 円周率を求める方法で面白い方法がある。ビュフォンの針$${^{*1}}$$と呼ばれている。

 紙の上に間隔を一定にした平行線を何本か引く。この紙の上に平行線の間隔と同じ長さの針を何本か落とす。同じ長さである必要はないが、簡単にするために同じ長さとする。針の先が尖っていると紙に刺さってしまうので、紙に刺さらないように針金を切った物を用いた方がいいかもしれない。針は全て同じ長さ、同じ重さで同じ形状でないと駄目かもしれない。

 落ちた針の中で紙の上に書かれた平行線と交差した針の数を数える。これを何度も繰り返して落とした針の延べ本数を交差した針の延べ本数で割り、2倍すれば円周率になる。

 これを初めて知ったとき、どうしてこれで円周率が求めることが出来るのか不思議でならなかった。円周率は円周とその円の直径との比である。平行線を引いた紙の上に針を落とす作業のどこにも円が出てこない。それなのに円周率が算出できる。何か不思議な世界が針を落とす作業に潜んでいるような気がして何かワクワクしていた。

 この方法を知ってからかなりの年月が過ぎた。このことをすっかり忘れていたし、この方法に対する興味も全く失せてしまっていたが、ふとしたことでこの方法で円周率が求めることが出来るかを説明したものを読んだ。

 平行線を書いた紙に針を落としたとき、針と平行線とのなす角が直角の時は必ず数本引いた平行線のどれかに針は交わる。もし平行線との角度が0度の場合は絶対に交わらない。ただし、交わる針の本数を数えるとき、平行線と全く重なってしまった場合は「交わらない」とする。

 ある角度θをなして針が落ちた場合、平行線と交わる場合と交わらない場合とがある。針と平行線が交差するかどうかは針と平行線との位置関係がどうなっているか、に依る。針の中心から平行線までの距離を$${x}$$とする。距離とは針の中心から平行線に垂直に線を引いたとき、その線の長さである。

 長さLの針が平行線に対して角度$${θ}$$をなして紙の上に落ちるというこことは長さ$${Lsinθ}$$の針が平行線に対して直角になって落ちることと同じ事である。従って針の中心から平行線までの距離$${x}$$が針の長さの半分の$${L/2sinθ}$$よりも小さければ平行線に針が交差していることになる。

 針と平行線とのなす角度$${θ}$$は$${0}$$から$${2π(360°)}$$まで、距離$${x}$$の範囲は$${-L/2}$$から$${+L/2}$$まで様々な値になり得る。つまり角度$${θ}$$と距離$${x}$$の組み合わせは、横軸に角度θ、縦軸に距離$${x}$$の座標を考えると面積$${2π\times(L/2-(-L/2))=2πL}$$の長方形の内部のあらゆる点になる。

 その中で平行線と針が交差する条件を満たす角度θと距離xの組み合わせは「距離xが針の長さの半分の$${L/2sinθ}$$よりも小さい場合」なので座標上に$${x=L/2sinθ}$$のグラフを書いたとき$${θ}$$軸とそのグラフとで囲まれる領域の点となる。

これらから針が平行線に交差する確率は$${x=L/2sinθ}$$の面積$${^{*2}}$$を長方形の面積で割った値となる。$${x=L/2sinθ}$$と$${θ}$$軸で囲まれる領域の面積は$${x=L/2sinθ}$$を$${0}$$から$${π}$$まで積分して2倍すればよい。これは$${+L/2}$$の分だから$${-L/2}$$の分も必要なので、更に2倍する。その面積は$${4L}$$となる。従って交差する確率は$${4L/(2πL)=2/π}$$となり、円周率$${π}$$$${^{*3}}$$を求めることができる。

 ビュフォンの針の実験で針の本数をどんどん増やしていけば、算出される円周率は真の$${π}$$の値に近づいて行くはずである。針を落とす作業の回数と交差する針の数はともに何度やっても整数である。分母分子が整数の分数で表すことが出来れば有理数になる。上の計算では針落としを無限回数の繰り返えせば真の$${π}$$の値になることになっているが、もともと円周率は整数の比では表すことができない$${^{*4}}$$ことが知られている。そうなるとビュフォンの針から算出される円周率$${π}$$$${^{*5}}$$と無理数である円周率$${π}$$との隙間はどのように埋めればいいのだろう。

*1 Buffon's Needle
*2 【 哲学する猫の部屋 】 buffon.html
*3 20000108 πの彼方
*4 Pi -- from MathWorld
*5 πの世界記録?2061億5843万桁計算の概要

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