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20000628 透明人間

 透明人間$${^{*1}}$$は物を見ることが本当に出来ないか。その様なことはない。見ることは出来る。しかし我々の見る世界とはかなり違うだろう。

 透明人間が物を見ることが出来ない根拠$${^{*2}}$$は、物を見るためには網膜で光を感じなければならない、感じるとは網膜細胞に対して光が物理的及び化学的に作用することだから、光を感じたらその光が変化するのでその様子が端から見えるはずである。つまり光を吸収する網膜は端から見えるので、物を見ることが出来る透明人間は目玉が透明ではない、ということである。
 従って可視光しか見えない他の普通の人間にとって完全に透明になった透明人間は物が見ることができない、ということだ。

 しかし物を見るためにはその光が必ずしも可視光線である必要はない。可視光線は全て透過してしまうが、そのほかの光は吸収する網膜があればいい。現実にそんな物があるのか。ある。大抵、透明な物質は可視光線以外の波長領域では不透明である。ガラス$${^{*3}}$$でも紫外線、赤外線の領域になると透明ではなくなる。

 世間には紫外線よりも赤外線の方が沢山溢れている$${^{*4}}$$から透明人間は赤外線を見ることになるだろう。赤外線は温度を持った物質からは必ず放射されているので太陽や電球などの光源がなくても見ることが出来る。闇夜でも透明人間は物を見ることが出来ることになる。まさに不可視の世界の存在である。

 従って透明人間の悩みは物が見えないことではなく、缶コーヒー$${^{*5}}$$など色の付いたの食物を飲んだり食べたりしたときに自分の存在がばれてしまう点である。

*1 第4回 透明人間ビーカー
*2 現実的透明人間
*3 ラミクール(遮熱合わせガラス)
*4 黒体輻射スペクトル(Blackbody)
*5 UCC Cafe Cafe

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