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20020305 毒物劇物

 毒物及び劇物についての取り締まりは明治時代初期から法律で規定されている。現在は「毒物及び劇物取締法$${^{*1}}$$」と言う法律によって毒劇物の扱いが規定されている。

 一番最初は「毒薬劇薬取締方」という布達$${^{*2}}$$だった。この布達に記載されている毒薬の名前を見ていると如何にも毒薬という名前が付けられているので面白い。

 沃汞。「ようこう」と読む。沃はヨード$${^{*3}}$$、汞は水銀$${^{*4}}$$。ヨウ化水銀$${^{*5}}$$のことである。沃は「妖」の親戚みたいな字なので如何にも怪しい。汞は見るからに飲んではいけないような水である。

 莞菁。「かんせい」と読むのだろうか。莞はにっこりと笑う。菁は草が青く茂る様。これはどうもマメハンミョウ$${^{*6}}$$のことらしい。「莞菁」で検索すると中国語のサイトばかりが出てくる。適当にサイトを覗いてみるとやはりマメハンミョウ$${^{*7}}$$が出てくる。カンタリジン$${^{*8}}$$という毒薬$${^{*9}}$$を出すらしい。毒なのに「にっこり笑う」が不気味である。

 吐酒石。酒石酸アンチモニルカリウム$${^{*10}}$$のことらしい。酒を吐かせる石。

 番木鼈。「ばんもくべつ」と読むらしい。クラーレ$${^{*11}}$$と言う猛毒を含む草の名前のようだ。何故、鼈(すっぽん)なのだろう。

 曼陀羅華。「まんだらげ$${^{*12}}$$」と読む。チョウセンアサガオ$${^{*13}}$$の別名。

生々乳。何と読むか不明。何なのかも不明。一体どんな毒薬なのだろう(※2002年の執筆当時は分からなかったが、今は判明している。「せいせいにゅう$${^{*14}}$$」と読む。成分$${^{*15}}$$はヒ素を含んだ昇汞[塩化水銀]$${^{*16}}$$らしい)。

*1 毒物及び劇物取締法
*2 布達(ふたつ)の意味や使い方 Weblio辞書
*3 ヨウ素
*4 原子番号80番 水銀 Hg
*5 沃化第二水銀
*6 虫を食べるはなし 第14回 (毒薬「はんみょうの粉」の正体) -- 公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会 --
*7 生態攝影《豆莞菁》
*8 マメハンミョウ
*9 cantharidin
*10 酒石酸アンチモニルカリウム
*11 クラーレ
*12 Welcome to MANDARAKE ! JAPANIES MANGA&ANIME SHOP
*13 チョウセンアサガオの特徴
*14 生々乳製法秘録 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
*15 日本医史学雑誌第46巻第4号(2000)
*16 昇汞とは - コトバンク

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