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20010421 電圧倍増計画

 新聞$${^{*1}}$$を読んでいたら、こんなことが書いてあった。電力業界と電機メーカとが家庭用電圧を現在の100Vから200V以上に引き上げるのを提言しているそうである。その理由として情報技術(IT)の進展で情報機器が増えて、電力需要の増大が予想されるため、送電損失を押さえる目論見があるらしい。

 本当にそうか。現在の送電電圧$${^{*2}}$$は、変電所から電柱の変圧器までは6600Vで、電柱の変圧器で100Vまで電圧を下げて家に入れる。それを変電所から電柱の変圧器まで22000Vで送電して電柱で200~400Vに落として各家庭に送るようにしようとするのである。

 電気を送る時、電線の抵抗と電流によって熱が発生するので電力が損失する。電気を送る距離が長くなればなるほど電線の抵抗が増えるので電流はあまり流したくない。そこで電力は「電圧」×「電流」なので電圧を高くしてやれば、同じ電力を送るのであれば「電流」を少なくすることが出来る。電流が少なければ熱の発生が少なくなる。電力が熱にならないので損失が減ることになる。これが送電線の電圧を出来るだけ上げたい理由である。

 送電電圧$${^{*3}}$$を上げることは送電損失を減らすことにつながるが、使用電圧を上げることは特に送電損失の低減にはつながらないような気がする。電柱から各家庭までの十数メートルの距離を今までの2倍の電圧で送電すればその間の電流は半分で済んで、その間の電線で発生する熱は電流の自乗に比例するので1/4になる。効果が全くないわけではないが、十数キロの送電線の電圧を6600Vから3.33倍の22000Vにする効果の方がもの凄く効果が大きいだろう。この場合損失は1/10になる。比率で言えば大したことはないが、絶対量で言えば大きそうだ。

 家電を200Vにするのはどうも家電業界の長期的な買い替え需要の創出のためのようである。IT機器の増加とか送電損失とか言っているが、企業の都合を上手くすり替えている。電力損失を抑えるために買い替えのための新しい製品を作ったり、配電盤を切り替えるのは本当に全体としてエネルギーの浪費を少なくしていることになっているのだろうか。

 また家電業界は200Vにすると海外でも電化製品が使える、と言っているらしいが、そんなことは売る側の都合であって、使う側にとってはどうでもよいことなのである。日本で使っている機械を海外で使わなければならない理由はどこにもない。どうしても使いたいのであれば電圧変換アダプタ$${^{*4}}$$を使えばよい。

 環境の保全に最も役に立つ行動は「人間が何も活動しないことである」ことを忘れている。

*1 記事を読んだのは紙の媒体の方
*2 日本では52万5000Vが最高
*3 送電鉄塔見聞録
*4 海外プラグ変換アダプター・海外旅行用トランス・海外プラグ

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